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世界の省エネ

4月

エコデザインとエネルギーラベルで省エネを推進する 欧州連合

  • EU

ベルリンで開かれた家電製品の世界最大の見本市「IFA」では、最新の省エネ家電が紹介されている

ベルリンで開かれた家電製品の世界最大の見本市「IFA」では、最新の省エネ家電が紹介されている

製品のライフサイクル全体をとらえる欧州の省エネ規制

日本は、省エネ家電の開発に関して先進的な取り組みを行っている国の一つですが、欧州各国においてもエネルギー効率がよく、環境に配慮した設計(エコデザイン)になっている製品を普及させる取り組みが、早い時期から行われています。

欧州連合(以下EU)において、電化製品などの環境配慮設計を義務づける規制で「EuP指令(Energy-using Products)」と呼ばれるエネルギー製品枠組み指令が公布されたのは、今から10年以上前の2005年。その後内容を拡充し、2009年に「ErP指令(Energy-related Products)」と呼ばれるエネルギー関連製品のエコデザイン指令が公布され、現在まで適用されています。ErP指令の対象となる製品は家電のみに限らず、エネルギーに関連するすべての製品に広がっています。具体的な対象品目は洗濯機、冷蔵庫などのエネルギーを使用する製品を中心に、電子機器やボイラー、コンプレッサといった、現在約30の製品群が対象となっており、これらの製品の一部は家電量販店で購入することが可能です。

ErP指令には、製品の設計から製造、梱包、輸送、使用、廃棄までの“ライフサイクル”全体を通して、資源の消費量や汚染物質の排出量を削減するという目的もあります。

EUの省エネ基準は、対象となる製品群も多く、製品が環境に及ぼす範囲を広く捉えて制定されています。加えてErP指令の目的は、環境対策のほかに、EU市場において国々の法規の違いによって生じている流通の障害を回避することもあります。製品には適合性を証明する「CEマーク」の貼付が義務づけられており、EU市場へ輸出する日本の企業も対策を行っています。

欧州の家電量販店FNACでは電子機器を主に販売。CEマークのついた商品の取り扱いも多い(flickr)

欧州の家電量販店FNACでは電子機器を主に販売。CEマークのついた商品の取り扱いも多い(flickr)

ErP指令が電力消費の無駄を減らす

EuP指令は「枠組み指令」として、基本的な考え方やプロセスを示しているだけのものです。具体的な要求事項や規制値は電気洗濯機、食洗機といった製品群ごとに決められていますが、横断的に複数の製品群に関わる規制もあります。

その一つが“スタンバイモード・オフモードの消費電力”の規制値です。これはスイッチが切れた状態でも消費されている隠れた電力消費のことで、日本では待機電力と呼ばれています。2005年に、この待機電力の年間総消費電力量がEU全体でなんと470億kWhも占めていると判明し、ErP指令により待機電力を段階的に規制しています。具体的には2010年から待機電力を1W以下に制限し、2013年に0.5W以下に、加えて“パワーマネジメント機能”の搭載が求められるようになりました。これは、利用者が一定時間その製品を使用していないと判断した場合、自動的に消費電力を落とすものです。

また、掃除機は2014年から最大出力を1,600Wに、2017年には900Wまで規制が強化されました。掃除機の出力と清掃力にはあまり相関関係がないと調査でわかったため、出力の大きすぎる掃除機を減らす目的です。

さらに、欧州では2009年のEU環境指令により、日本と同様に白熱電球の販売が禁止され、蛍光灯やLED照明への切り替えが進んでいます。禁止とはいっても、在庫があるうちは小売販売が可能ですが、EU圏外からの輸入や個人的な持ち込みも禁止されています。欧州委員会の発表によれば、EU内の白熱電球がすべて高効率の蛍光灯に換わることで、年間400億kWhの削減(1,100万軒の家庭の年間電力消費量に相当)になると報告しています。

省エネ性能の高い液晶テレビ Thomas Cloer(flickr)

省エネ性能の高い液晶テレビ Thomas Cloer (flickr)

省エネ性能を表すエネルギーラベルが普及

欧州では家電などのエコデザインを推進するとともに、それを消費者に伝えるエネルギーラベルやエコラベルの普及にも力を入れています。

EUで省エネ性能を表すエコラベルとして知られているのが、エネルギーラベル「The EU Energy Label」です。2010年にEUは「エネルギーラベリング指令」を発効し、エネルギー消費効率を製品群ごとに7段階に分けて、その製品がどこに位置するのかをわかりやすく表示しています。ラベルは一般的にエネルギー消費量、待機電力、水の消費量(洗濯機、食洗機)などを表示します。

エネルギーラベル以外にも、欧州では「EUエコラベル」、ドイツの「ブルーエンジェル(Blue Angel)」、北欧5ヶ国の「ノルディック・スワン(Nordic Swan)」といった、いくつかのエコラベルが流通しています。たとえば「EUエコラベル」は、食品、飲料、薬品を除くすべての日用品を対象にしており、製品の耐久性から材料循環、再利用しやすさといった幅広い基準をもち選定されます。シンボルマークが花の形なので、別名「EUフラワーエコラベル」とも呼ばれています。

ドイツで使用されているブルーエンジェルは、1978年に世界で初めて導入されたエコラベル制度で、その後導入された多くの環境ラベルのモデルとなりました。主にドイツで販売・流通する製品が対象で、家電製品や暖房システムだけでなく、家具・塗料・玩具・文具・洗剤なども対象になっています。エネルギー消費はもちろん、製品によっては省資源や環境に配慮した包装、有害物質の削減などきめ細かく環境への負荷を抑制します。消費者における認知度も高く、ラベルは省エネ、有害物質の回避、長寿命な製品を選ぶ指針になります。

ノルディック・スワンは北欧委員会(Nordic Council)が導入した制度で、多国間で通用する制度としては、世界で初めて導入されたものです。

販売される電球のパッケージにもエネルギーラベルが明記されている

販売される電球のパッケージにもエネルギーラベルが明記されている


省エネ性能を表す欧州のエネルギーラベル

省エネ性能を表す欧州のエネルギーラベル

2020年までに2割のエネルギー効率改善を目指す

EUはエネルギーと気候変動とを連動させて考えており、2020年に向けて法的拘束力のある目標を持っています。この目標は「20-20-20」として知られており、3つのキーとなる目標「温室効果ガスの排出量を1990年より20%減らす」「EUにおけるエネルギー消費量のうち再生可能エネルギーの割合を20%まで高める」そして、「EUにおけるエネルギー効率を20%改善する」と設定しています。この3つめの「エネルギー効率20%の改善」のための施策として、前述のエコデザインやエネルギーラベリングの普及があります。

また、目標達成を完全なものにするため、2012年にEUはそれまでに施行された指令を統合した「EED指令(Energy Efficiency Directive)」を出し、公共建築物に対するエネルギー効率改善やコージェネの推進とともに、エコデザインやエネルギーラベルを推進しています。

これによってEUは、2020年までに年間石油で換算して1億7千5百万トンのエネルギーの節減を目指しています。これはEUの2020年のエネルギー効率目標のおよそ半分に相当します。

EUの明確な目標に基づき、EU各国でも気候変動・エネルギー対策として、省エネルギー政策を強化しています。英国では、省エネの余地が大きいとみられる家庭部門において、「pay as you save(PAYS)」型スキームを実施しています。これは、家庭の省エネ設備の導入を促すために、省エネ設備の導入によって購入にかかった費用を、節約された光熱費で分割払いにするしくみです。イタリアでは、2009年に金融危機に伴う景気対策の一環として、建物の改修工事に付随して購入する省エネ家電、家具の費用を20%控除する措置を実施しました。

欧州では製品そのもののエネルギー効率の改善ももちろんですが、グラフ1で見るように暖房にかかわるエネルギー消費が大きいため、断熱改修など住宅そのもののエネルギー効率を高める施策にも力を入れています。


このように、EU全体では製品のライフサイクル全般にかかわるエコデザインとエネルギーラベルの両輪で省エネを推進するとともに、建造物の断熱改修や発電所での高効率のコージェネの推進、最終需要家の省エネ化などの取り組みを積極的に進めることによって、エネルギー効率改善を目指しています。

グラフ1 世帯あたり用途別エネルギー消費の国際比較

グラフ1 世帯あたり用途別エネルギー消費の国際比較 出典:住環境計画研究所(2014)「家庭用エネルギーハンドブック」

Text by Yayoi Minowa