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3月
地球の気温はこの100年で約0.6℃上昇したと言われていますが、日本では、これを上回る速さで温暖化が進行しています。特に大阪ではこの100年間で約2.1℃*1、東京では約3℃*2と、温暖化にヒートアイランド現象*3が加わり、大都市圏の夏の暑さは年々厳しいものになりつつあります。2014年夏は、主として熱帯地方に発生するデング熱に国内で感染した症例が報告されるなど、地球温暖化は私たちの暮らしにも、様々な影響を及ぼすようになってきました。
このような環境の変化に対応して、都心でも屋上緑化や壁面緑化など緑の力で建物の断熱性能を高め、ヒートアイランド対策や省エネにつなげようという動きが活発になってきています。大阪府や東京都でもある一定以上の面積をもつ新たな建物には緑化を義務づけています。
緑の力は、屋内の温度上昇抑制や省エネ効果だけでなく、植物の蒸散作用によって屋外の温度上昇を緩和する効果も期待できます。さらに、緑の少ない都市空間では、屋上庭園などが人々の癒しの空間として重要になりつつあります。
現在も市営住宅として使われている「フンデルトヴァッサーハウス」
さて、このような都市の緑化に30年ほど前から注目し、建造物を作り出してきたアーティストがいます。それは、オーストリアの代表的な画家、フンデルトヴァッサー*4です。フンデルトヴァッサーは、渦巻きなどを多用した独創的な絵画でも有名ですが、草屋根や壁面緑化など、緑をふんだんに用いた自然と共生する建造物を世界中に残しています。中でも、フンデルトヴァッサーが、生まれ故郷のウィーン3区に作った市営住宅「フンデルトヴァッサーハウス」は、直線部分がありません。テラスや屋上、廊下からも樹木が生い茂り、壁面にもつる性の植物が這わされ、建物そのものがまるで生き物のようです。
また、ここから近い「クンストハウス ウィーン」も、1階にカフェ、2階にフンデルトヴァッサー美術館を備え、外壁や屋上を飾る植物とカラフルなファサードによって、人気を集めています。床も波打ち、窓から木が生える独創的なスタイルは、一見奇抜に思えます。しかし、実際にその場所にいると、とても居心地がよく、楽しく、たくさんの発見があります。屋上も緑化され、緑で覆うことによって、夏は涼しく、冬は暖房効率が高まるといった省エネ効果も意識した設計となっています。
また、「直線に神は宿らない」というコンセプトで自然界にある有機的な形を多用したフンデルトヴァッサーは、「ウィーンのガウディ」とも称されています。
壁面に、屋上に、窓に、緑生い茂る「クンストハウス ウィーン」
フンデルトヴァッサーは、緑や木の効果について、1991年4月にこう言及しています。*5
フンデルトヴァッサーは建物に緑を配することが、建物の温熱環境を調整するだけでなく、酸素を作り出し、生物多様性を生み、住む人の生活の質を上げるなど多様な働きがあることを意識していたのです。それを彼は独特のスタイルで表現しました。まさに現代の都市がかかえる問題を先見していたのです。
フンデルトヴァッサーの示唆に富む建築物は、大阪の「舞洲ゴミ焼却場」、「舞洲スラッジセンター」などでも見られます。申し込みをすると見学*6ができますので、興味をもたれたら、是非フンデルトヴァッサーが伝えたかった自然と共生する建物を実際に体験してみてください。
*1 大阪管区気象台、気象庁データ
*2 東京気象台、気象庁データ
*3 ヒートアイランド現象:緑の減少や車やエアコンなどからの排熱などで都市の中心部の気温が郊外に比べて島状に高くなる現象
*4 フリーデンスライヒ・レーゲンターク・ドゥンケルブント・フンデルトヴァッサー(Friedensreich Regentag Dunkelbunt Hundertwasser、1928年12月15日 ~ 2000年2月19日)はオーストリアの芸術家、画家、建築家。
*5 TASCHEN JAPAN社「フンデルトヴァッサー クンストハウス ウィーン」
フンデルトヴァッサーが手がけた、人と自然が共生する温泉保養地バートブルマウの模型
Word&Photo:yayoi minowa