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世界の省エネ

4月

自然エネルギーの知恵がぎっしりエコな暮らしを楽しみ、学べる「ソーラーリビングセンター」

  • アメリカ

自然エネルギーの知恵がぎっしりエコな暮らしを楽しみ、学べる「ソーラーリビングセンター」

自然エネルギーを体感できる「ソーラーリビングセンター」と水の広場(写真提供:"The Kite Aerial Photography of Cris Benton")

緑豊かな敷地に繰り広げられる
自然エネルギーを活かす暮らし方

サンフランシスコから国道101を北におよそ144km。周辺にワイナリーが点在するのどかで小さなこの町に、年間20万人が訪れる人気のエコロジースポットがあります。自然エネルギーを活かして築き上げた、自然と共生する暮らし方を提唱するお手本とも言える場所。米国で最初に住居向けソーラーパネルを販売したリアルグッズ社が、1980年代にひらいた「ソーラーリビングセンター」です。

12エーカー*1の広大な敷地には、太陽光、風力などの自然エネルギーやさまざまなアイデアを取り入れた環境建築、自然エネルギーを体験できるさまざまな装置、ソーラーポンプで水を汲み上げ多様な生物が共生する池、オーガニック農園、バイオガスステーションなどが広がっています。その施設をめぐり体験するガイド付きのツアーも毎日開催され、子供向けからエネルギー関連企業、大学研究者といった専門家向けまで多彩なプログラムが組まれています。

「ソーラーリビングセンター」のシンボル、水の広場。水は施設内の池からソーラーポンプで引いている

「ソーラーリビングセンター」のシンボル、水の広場。水は施設内の池からソーラーポンプで引いている

酷暑の夏もエアコンいらずのメイン施設はエコを提案する楽しいショップ

敷地の中心にはショップが設けられており、ソーラーや風力関連商品はもちろんのこと、人と環境にやさしい省エネ・オーガニックアイテムもセンス良くセレクトされています。オーガニックコットンを使用した衣類やエコ洗剤、ほうきなどの環境に負荷をかけない生活雑貨をはじめ、子供たちが遊びながら太陽電池や風力について学べる玩具、環境関連の本などなど。

ショップは、建物そのものが省エネと自然環境に配慮したパッシブソーラー建築で、見どころがいっぱい。室温の調整と照明には太陽光が利用され、建物形状だけでなく窓も日照と影の角度を計算した方向と位置に配置されています。厚い壁面は、農業廃棄物の藁(わら)のブロックを積み上げ漆喰(しっくい)で仕上げた断熱効果の高い「ストローベイル工法*2」を採用。また、強い陽ざしはぶどう棚で遮るなど、省エネと快適性を考えた工夫が随所に見られます。

筆者が訪れたのも35℃を超える猛暑日でしたが、建物内はエアコンを使わなくても過ごせるほどでした。エコな暮らしをめざす人にとっては、多くの体験や発見がある魅力にあふれたスポットなのです。

魅力的なエコアイテムが一堂に集まるショップのコーナー

魅力的なエコアイテムが一堂に集まるショップのコーナー

“エコな暮らし”の生涯教育を実践する
「ソーラーリビング インスティテュート」

見たり体験したりするだけでなく、エコな暮らしに興味を持った人には自然エネルギーや持続可能な暮らし方について学べる学習プログラムも運営されています。1998年に設立された非営利教育機関「ソーラーリビング・インスティテュート(SLI)」による学習プログラムは、もともとは太陽光発電に関するワークショップとして始まった活動でしたが、現在ではコースやクラスが増えて2,000人もの人々が学んでいます。

SLIには「ソーラートレーニング」「サステナブルリビング」の2つのコースが用意されています。その一つ「ソーラートレーニング」では、太陽光発電に関する知識や実際の技術を学ぶことができ、遠方に住む人もオンラインで学べます。このコースは、実際に太陽光発電の技術者を志望する人のキャリアトレーニングとしても役立っているそうです。

また多彩なクラスで人気を集めているのが「サステナブルリビング」のコース。ソーラーリビングセンター内のオーガニック農園で、有機農法で野菜やハーブ、果物を育てるクラスからストローベイル工法を学ぶクラス、身近なところでは手作り石けんをつくるクラスまで、実践的なプログラムが設けられています。

有機農法を実際の農園で学べるクラスもある

有機農法を実際の農園で学べるクラスもある

グリーン電力を供給して
エコの恩恵をより多くの人々に

SLIは、生涯教育を通じて自然と共生する暮らし方に共鳴する人々を育てながら、太陽光発電によるグリーン電力を電力会社と組んで消費者に提供するサービスも始めています。その量は年間で16万kWh*3と、北カリフォルニアでも最大規模となっています。これには、SLIの「人、モノ、経験」を育てるという理念と、SLIでの学び、リアルグッズ社が供給するソーラーパネルなど機器類、ソーラーリビングセンターでのグリーンな暮らし体験という複合的なアプローチが功を奏しているように思えます。

1978年にリアルグッズストアを開いた創業者ジョン・シェーファーの「体験型の環境教育を通じて、持続可能な暮らしを広げていく」という目標が着実に実を結んでいるソーラーリビングセンターとSLI。日本にはないスケールでエコな暮らしを体感できるこのスポットに、興味があれば足を運んでみてはいかがでしょうか。

*1 12エーカーは約48,000㎡、サッカーグラウンドでいえば7つ分にも相当する広さ。
*2 圧縮した藁のブロックを積んで壁をつくり、土の漆喰で塗り固める工法。断熱効果が高く、19世紀後半に北米で生まれた建築様式。
*3 「Solar Living Institute」webサイトより

Solar Living Institute https://solarliving.org/
Solar Living Center https://solarliving.org/solar-living-center

敷地内には多くのソーラーパネルが設置されている(写真提供:"The Kite Aerial Photography of Cris Benton")

敷地内には多くのソーラーパネルが設置されている(写真提供:"The Kite Aerial Photography of Cris Benton")

Word&Photo:yayoi minowa