京都に石の博物館があると聞きました。密かに人気のスポットらしいのですが、どんなところなのでしょうか?
「石」といえば、道端に落ちている石ころから美しい宝石まで、さまざまな種類のものが思い浮かびます。今回の依頼内容はそんな「石」の博物館。調べてみたところ、京都御所のすぐ西側に通称「石ふしぎ博物館」があると分かりました。正式名称は公益財団法人・益富地学会館(ますとみちがくかいかん)と言うそうです。探偵たちはさっそく調査へ向かいます。
建物を眺める探偵たちに「石ふしぎ博物館へ、ようこそいらっしゃいました!」と声をかけてくれたのは、主任研究員の石橋さんです。
建物に入り、展示室へ向かう途中の廊下や階段にも、大きな水晶や中生代(約2億5千万年前~)に生息した爬虫類「翼竜(よくりゅう)」の化石など、たくさんの石が並んでいます。展示室にはどんな光景が広がっているのかな?と探偵たちはワクワクしてきました。
展示室に足を踏み入れると……ビックリ!キラキラと綺麗に光る鉱物や、カラフルな色のものなど、質感も色もさまざまな石がところ狭しと並んでいます。所蔵標本の数は2万点以上。日本をはじめ世界中から収集し、年々増えているのだとか。
数ある展示物を前に、石橋さんにおすすめの石を聞いてみたところ、「来場者に人気が高いのは、京都で採れた『桜石』と、ベーコンに似た『豚肉石』ですね」と教えてくれました。桜石は断面が桜の花のようでとってもかわいい♪一方、豚肉石は、名前の通り脂ののった豚肉にしか見えません……ほかにも、鉄が多く含まれているため磁石がくっつく『鉄隕石』や、アザラシの赤ちゃんのようなふわふわの見た目がなんとも愛らしい『オケン石』など、見たこともないさまざまな石が展示されています。
また、展示品にはそれぞれわかりやすく石の産地や特徴が書かれたカードが添えられています。中にはクイズ形式のものもあり、初心者でも楽しめる工夫がほどこされています。展示室の開館日(土・日・祝日)には解説員が常駐し、来場者の質問に答えてくれます。
ところで、益富地学会館はどういった経緯で設立されたのでしょうか。気になった探偵たちは、石橋さんから創設者の故・益富寿之助(ますとみかずのすけ)さんの話を伺いました。
益富さんは、本業は薬剤師でありながら、宮内庁の依頼をうけて正倉院に収蔵されている石薬(薬として利用される鉱物)の研究にも長年取り組んだ鉱物学者。また、後進の育成や支援にも熱心だった益富さんは、1973年に同館の前身「日本地学研究会館」を設立し、研究環境や成果発表の場を提供しました。そして、1974年には、益富さんの数々の功績を称えて、滋賀県で新たに発見された鉱物が「益富雲母(ますとみうんも)」と命名されました。会館はその後、1991年の財団法人化を機に名称を「益富地学会館」と改め、さらに2012年に公益財団法人へと移行し今に至るそうです。
現在も、同館では益富さんの地学発展への想いを引き継ぎ、研究が続けられています。今回の取材では、会員専用で一般には公開していない研究室を特別に見せていただきました。中には、何やら専門的な器具や装置がズラリ・・・研究室には、鉱物の成分を分析できるX線回折装置など専門的な装置が多数あり、大学から依頼を受け調査のサポートを行うことも。貴重な蔵書や資料も充実しており、国内外を問わず地学の研究を行う人々が訪れ、研究に打ち込んでいます。
さらに、一般の人々にももっと石の魅力を広めたいと、同館では各地でたくさんのイベントを実施しています。例えば、西日本最大級の規模を誇る鉱物・化石・石製品の展示会「石ふしぎ大発見展」。展示会では、約200ものブースがさまざまな種類の石を展示し、鉱物鑑定試験や講演会などの特別イベントも開催しました。また、屋外イベント「かわらの石観察研究会」では、桂川や木津川などの河原に集合し、その地域でどのような地質が広がっているかを鉱物鑑定士の先生と一緒に調べます。長期休みに合わせて開催されることが多いので、子どもたちの自由研究のテーマにするものおすすめです。
最後に、石橋さんはこう想いを明かしてくれました。「博物館に来る人はさまざまです。色とりどりのきれいな石を、手にとって眺めるのが好きな人。石を通じてはるか太古の大地や自然に想いを馳せる人。研究装置を駆使して、岩石研究を極めようとする人…。皆さんに石のおもしろさを感じてもらえるよう、私たちはその魅力に気付く手助けができればと思っています。いろんな石好きがもっと集まってくれる場所になればいいですね」。探偵たちも、たくさんのふしぎな石に触れ、なぜこんな色や形になったんだろう…と考えているうちに、いつの間にやら石の魅力のトリコになってしまいました!石に興味がある方はもちろん、今まで関心がなかった方も、ぜひ石ふしぎ博物館に足を運んでみてくださいね。