日本最古のエレベーターが京都にあるそうですが、どんなエレベーターなのか調べてきてください。
紀元前200年ごろの古代ローマには、すでに存在していたとされるエレベーター。物理学者や天文学者として有名なアルキメデスが、滑車とロープを使って荷物の上げ下ろしをしたのが最初のエレベーターなんだとか。それから2,000年の時を越えて、1889年に電動のエレベーターが米国で誕生しました。今回のお目当ては、1924年に米国のオーチス・エレベータ・カンパニーから輸入された、現存するもののなかで日本最古のエレベーター。京都・鴨川ぞいにそびえ立つ、外国の教会を思わせる北京料理店「東華菜館(とうかさいかん)」にあります。さらに調査を進めるために、興味津々の探偵たちは東華菜館へ向かいました。
玄関に到着した探偵たちの目を奪ったのは、華やかな飾り彫刻を壁にあしらった西洋風の建物。よく見ると、魚や貝など食材をモチーフにしたものばかり。扉を開けて足を踏み入れると、天井や扉にも美しい装飾が施された空間が広がります。異空間へタイムスリップしたような気持ちになっていると、フロア主任の森本さんが「いらっしゃいませ」と出迎えてくれました。
西洋風の建物に北京料理店?と不思議そうに館内を見まわしていると、「もともと当館は、数多くの西洋建築を手がけたウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏によって、西洋料理店として大正時代に建てられました。その際に、まだ日本では普及していなかったエレベーターが取り入れられたのです」と説明してくれました。その後、所有者が中国人に変わり、北京料理店の東華菜館として開店したそうです。
そんな歴史のある東華菜館のエレベーターですが、なんと製造されてから100年近く経ったいまでも、現役で稼働中!探偵たちはわくわくしながら乗り込むことにしました。
エレベーターの扉は、ガラス張りの外扉と蛇腹式の内扉で二重になっていて、それを手で開けて乗り込みます。このエレベーターは昇降操作が必要なことから、お店のスタッフが必ず運転操作をすることになっています。そのため、東華菜館の社員は製造元の日本オーチス・エレベータで研修を受けることになっているそう。研修を受けていない社員やお客さまがエレベーターを操作することは禁止されています。
森本さんが、内部のレバーハンドルを左右に動かすと、エレベーターは静かに上昇しはじめます。意外にもスムーズでゆったりとした乗り心地。真鍮製の蛇腹式扉や昇降中のレトロな機械音が、まるで大正時代にタイムスリップしたような気持ちにさせてくれます。すると、ガタンという大きな音がして、揺れとともにエレベーターが止まりました。探偵がびっくりすると、「皆さん、エレベーターが到着したときの衝撃に驚かれます。」と森本さん。
もしうまく到着できず定位置でない場所で扉を無理やり開けてしまうと、扉に傷がつき故障の原因になります。森本さんは「修理が必要になったとき、このエレベーターにはもう製造されていない部品が使われているため、昔のエレベーターの部品を再利用して使います。でも、部品には限りがあるので、できる限り長く使えるよう慎重に運転することが大事なんです」と語ります。
エレベーターの管理面では、日本オーチス・エレベータのベテランスタッフが、建物の上部にあるマシンルーム内の昇降機を中心に月に1~2回の頻度で入念に点検しています。また、東華菜館の社員もこまめに点検をするだけでなく、エレベーター内をピカピカにみがいているそうです。日本最古のエレベーターを長く使っていくには、手間ひまを惜しまずメンテナンスをする必要があるんですね。
東華菜館は北京料理のお店ですが、お客さまのお目当ては料理だけでなく、クラシカルなその雰囲気を楽しみにして訪れる方も多いようです。年輩のお客さまからは「昔のデパートみたいで懐かしい」、若いお客さまからは「古い映画に登場するエレベーターや、遊園地のアトラクションみたい」などという声が聞こえるとか。大正時代にタイムスリップしたような空間のなかで、日本最古のエレベーターに乗り北京料理を味わうという体験は、この東華菜館でしかできない楽しみ方です。
最後に、森本さんは日本最古のエレベーターについて、愛情たっぷりにこう話をしてくれました。「こんなに歴史があるエレベーターを運転できることは、私の誇りです。でも、京都には何百年と続く建築物が数多くあることを考えると、まだまだ。今後200年、300年と使われ続けていくエレベーターになってほしいですね。また、ひとりでも多くのお客さまに、この雰囲気と北京料理を堪能してほしいですね」。京都・鴨川にそびえ立つ「東華菜館」。異国情緒漂うその空間に一歩足を踏み入れると、まるで大正時代にタイムスリップした感覚を味わえます。皆さんも、日本最古のエレベーターでタイムスリップ体験してみませんか?
※見学だけのご来店はお控えください。