依頼内容

京都の八瀬あたりに、猫が住職を勤める寺があると聞きました。どんなお寺なのでしょうか?

猫が住職を勤めるお寺?変わった依頼をうけて戸惑う探偵たち。住職といえば、法衣や袈裟をまとったお坊さんのこと。一方、猫といえば、日なたでゴロゴロというイメージですが、住職を勤めている猫なんて話は聞いたことがありません。

比叡山のふもとに位置する八瀬に到着し、しばらく周辺を探索してみても……、お寺らしき建物はありません。のどかな川の辺りを歩いていると、「猫猫寺」と書かれた看板を発見。「ここが猫猫寺です。『にゃんにゃんじ』と呼ぶんですよ」と教えてくれたのは、寺の代表である加悦(かや)徹さんです。

写真左:お寺というよりも、お茶屋さんみたいですね、写真右:寺の代表である徹さん
写真左:お寺というよりも、お茶屋さんみたいですね、写真右:寺の代表である徹さん

徹さんに案内されて中へ入ってみると、部屋一面に猫!猫!猫!膨大な数の猫をモチーフにした雑貨が並んでいます。続いて奥に入ると、目に飛び込んできたのは黄金に輝く猫の襖絵。猫猫寺の「にゃんにゃん」にちなんで22匹の猫が描かれているとか。隣の部屋には仏壇もあり、猫の手形がついた木魚もありました。猫だらけなんですね。

写真左上:猫の雑貨がいっぱい、写真右上:22匹の猫はみんな顔が違います、写真左下:仏壇も猫仕様、写真右下:木魚に猫の手のマークが
写真左上:猫の雑貨がいっぱい、写真右上:22匹の猫はみんな顔が違います、写真左下:仏壇も猫仕様、写真右下:木魚に猫の手のマークが

猫住職はどこかなと寺の中を探していると、窓際でまったりとくつろいでいる猫を発見!よく見ると首もとに何か着けているようですが……、この猫が猫住職なのでしょうか。「この子は、私たちの飼い猫の蓮(レン)です。住職見習いとしてお勤めしてもらっています」と徹さんが紹介してくれました。

見習いながらも堂々とした姿の蓮ちゃん
見習いながらも堂々とした姿の蓮ちゃん

猫猫寺には合計4匹の住職(見習い含む)がいます。ただ、蓮ちゃん以外はいつも猫猫寺にいるわけではなく、普段は別のところで暮らしていて時々お勤めにやってきます。「蓮以外の住職は私がスカウトしたんです。法衣や袈裟を身に着けても嫌がらない、人見知りをしない、性格が落ち着いているなど、住職にぴったりな猫たちです」と徹さんが教えてくれました。遠方からやってくる猫もいるため、お勤めの日は月によって異なるようで、この日は蓮ちゃん以外の猫住職に会えなくて残念。

ちなみに、住職だからといってお経を唱えたりすることはありません。猫住職たちは寺の中で自由気ままに過ごします。訪れた人たちの心をいやし和ませることが猫住職のお勤めなのだそうです。

初代猫住職の小雪ちゃん
初代猫住職の小雪ちゃん

そもそも猫が住職ってアリなのでしょうか。徹さんは「実は、猫猫寺は猫をご本尊とした寺院型テーマパークなんですよ」と笑って教えてくれました。確かに、猫住職とのんびり食事ができるカフェや、猫のアート作品が飾られたギャラリーコーナーやイベントスペースがあり、猫猫寺全体が猫だらけ。とてもユニークなお寺ですね。

ヨーロピアンな雰囲気の地下イベントスペース
ヨーロピアンな雰囲気の地下イベントスペース

こんなユニークな「お寺」ができたきっかけは、2011年に起こった東日本大震災。加悦さん一家は、「明日がどうなるか分からないなら、みんながそれぞれにやりたいこと、楽しめることを実現させよう」と家族で話し合いました。そこで奥さんの順子さんは、猫のフェルトアート作品や雑貨を扱うお店「Littlefootmark REN」を開き、息子の雅乃さんは猫をモチーフとした絵を描きはじめます。

写真左:今にも動き出しそうな順子さんの作品、写真右:雅乃さんが描いた作品
写真左:今にも動き出しそうな順子さんの作品、写真右:雅乃さんが描いた作品

寺社仏閣の彩色師が本業である徹さん自身は、その技術を生かして、家族みんなが大好きな猫をテーマにした「お寺」をつくりたいと考えました。そして、寺を建てるための資金をクラウドファンディングで集め古民家を改装し、2016年に「猫猫寺」が誕生したのです。

写真左:仏間の大日猫来(だいにちにゃらい)は父子の合作、写真右:父子のアトリエ風景
写真左:仏間の大日猫来(だいにちにゃらい)は父子の合作、写真右:父子のアトリエ風景
檀家としてクラウドファンディングの支援者たちの名前が刻まれています
檀家としてクラウドファンディングの支援者たちの名前が刻まれています

猫猫寺ができてから、家族はそこを拠点に活動範囲をさらに広げていきました。順子さんは羊毛フェルト作家として活動をする傍ら、フェルト教室などのワークショップもはじめました。また、雅乃さんはピカソも出展したフランスの「サロン・ドートンヌ展」に最年少で入選するなど、国内外から注目を集める存在に。

雅乃さんが「サロン・ドートンヌ展」で入選した時の作品
雅乃さんが「サロン・ドートンヌ展」で入選した時の作品

さらに、猫猫寺の輪は加悦さん一家からどんどんと広がっています。最近では有志によるマルシェやライブなども開催されるようになり、猫猫寺はご近所さんや各地の猫好きが集う場所に進化しました。徹さんはとてもうれしそうに、「猫猫寺に集まってくる人たちの活動範囲が、どんどん広がっていてワクワクしています。今後も、好きなことを自由に行える空間にしていきたいですね」と話してくれました。

猫猫寺に来られる方の中には、遠方から人生の悩み相談に来る人もいるのだとか。そんな方々に対して、徹さんは「猫のようにもっと自由に生きると、心が楽になりますよ」と話をするそうです。みなさんも、猫猫寺で自由気ままな住職たちと一緒にまったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

招き猫ポーズで「猫猫寺においでやす」
招き猫ポーズで「猫猫寺においでやす」
調査完了