小さいころよく遊んだピーヒャラ笛を最近あまり見かけませんが、どうなっているのでしょうか?
口にくわえてふぅーっと息を吹くと、ピューという音とともにスルスルと伸びて、息を止めると先からクルクルッと巻き戻ってくる紙製のおもちゃを覚えていますか?夜店や駄菓子屋などで見かけるもので、子どものころ、これで遊んだ思い出のある方は多いのではないでしょうか。ピロピロ、ピーヒャラ笛などの名前で呼ばれていますが、正式名称は「吹き戻し」といいます。
探偵たちが調べたところ、国内生産の約80%が淡路島の「吹き戻しの里」によるものと判明。淡路島の現場へ向かうと、青と黄色で彩られた建物を発見しました。
館内へ入り、キョロキョロしていると、「ここでは、吹き戻しの製作体験ができますよ」と案内してくれる人がいました。株式会社吹き戻しの里の村田さんです。自分でつくれるとは、おもしろそう!探偵たちも挑戦してみることにしました。
まず、赤や青、緑、キャラクターなど、たくさん並んだ紙から好きなものをチョイス。紙の片側には針金が取りつけられていますね。続いて両端を持ち、机に設置された細い棒にまたがせて、上下に動かします。これで紙についた針金に巻き癖をつけられるので、手を離すとクルクルと巻かれた状態に。吹き口がついた筒もお好みのデザインを選んだら、紙と合体させてテープで留めて完成!ちゃんと伸びるかドキドキしながら吹いてみると、見事スルスル伸びて戻ってきました。1本辺りの製作時間は5~10分。子どもにもカンタンにつくれて、1人6本までお持ち帰りできます。
吹き戻しづくり体験の後に案内していただいたコーナーで、村田さんから「この赤いヘルメットを装着して、息を吹いてください」と言われて、ふぅーっと吹くと……。頭からたくさんの吹き戻しが飛び出しました!「こちらは『初日の出』をイメージして、頭に取りつけたんです。おめでたい感じがするでしょ」と村田さん。さらに、茶色のヘルメットをかぶって息を吹くと、白い吹き戻しが花のように飛び出してきました。「これは淡路の名産・タマネギ型の吹き戻しで、本物のタマネギもこういう白い花が咲くんですよ」。
中には、19本もの吹き戻しがつながっている「地獄のピーヒャラ」という名のアイテムも。すべてを広げるためにはものすごい肺活量が必要とされるため、吹いた後には地獄を見ちゃうということで命名された、恐るべきアイテムです。
ところで、吹き戻しはいつの時代からつくられているのでしょうか。村田さんに聞いてみたところ、吹き戻しの歴史は大正時代の終わりごろまでさかのぼります。「当時、富山の置き薬屋が薬を購入したお客さまへのおまけとして、紙風船を配っていました。それに対抗しようと、大阪の置き薬屋が大阪の玩具メーカーとつくったのが、吹き戻しだと言われています」。現在でも薬包紙に使われているグラシン紙で吹き戻しの里の吹き戻しはつくられているようです。
「吹き戻しの里」の前身は、昭和13年に大阪・谷町に創業した「八幡光雲堂紙店」です。当初はふすま紙や紅白紙などの製造を手がけていましたが、昭和24年からは紙製玩具の製造も行うようになり、昭和36年からは吹き戻しの製造をスタート。昭和46年には、吹き戻しづくりは手作業が多いことから、内職の担い手が多い淡路島に本社を移転させました。
そのころから同社では吹き戻しを「BLOWOUT」と名づけて、欧米への輸出をはじめました。「海外でもハロウィンの時期や新年を祝うパーティーなどで、吹き戻しに似たおもちゃを吹く習慣がありますが、安くて質のいい当社の商品が徐々に受け入れられるようになった結果、最盛期には年間7,000万本も出荷するまでになったのです」。それはスゴイですね!
しかし、オイルショックや円高などを受け、売上がみるみる減少。そこで、現社長の旗振りのもとで国内向け中心に経営方針を転換し、先ほど紹介したようなユニークな吹き戻しが次々と開発されました。
遊び心あふれる吹き戻しがメディアで取り上げられると、さまざまな業界から「こんなものができないか」という依頼が飛び込むようになりました。なんと医療や介護、美容業界の各社からの依頼で、新たな商品が開発されたのです。医療器具のメーカーと共同開発した吹き戻しは、腹式呼吸や呼気力の練習、飲み込む筋肉を鍛える練習に役立つと医療や介護施設で注目されています。最大1mまで伸びる「ロングピロピロ」は、ゆっくり吹くことでお腹まわりをエクササイズできたり、ほうれい線の予防・解消にも期待できる美容アイテムとして売り出されています。
吹き戻しは肺活量アップのトレーニングにもなることから、「今後も吹奏楽器の練習や、スポーツのトレーニングなど、さまざまな世界で役立つ吹き戻しを開発していきたいですね」と語る村田さん。探偵たちは懐かしいおもちゃを探して訪れた淡路島で、遊ぶだけではなく医療や介護、美容へと吹き戻しの可能性が広がっていることを知ったのでした。皆さんも淡路島観光の際は、一度立ち寄ってみてくださいね。