依頼内容

地獄がどんなところか、身にしみてわかるところがあると聞きました。探偵さん、調査してきてください!

調べてみたところ、地獄体験ができるのは大阪の平野区にある「全興寺」というお寺。約1,400年前に聖徳太子が建てたとされるお寺で、「平野」というエリアの起源とも言われています。歴史があるお寺なのは明白ですが、どうしてそこで地獄のことがわかるのか?お寺って極楽に行くための場所だと思っていたのに、違うのか?そもそも、なんのための「地獄体験」なのか?疑問には閻魔大王が答えてくれるかもと期待して、さっそく潜入開始です。

入ってすぐの正面に、鬼の看板が!
入ってすぐの正面に、鬼の看板が!

どうやら境内に「地獄堂」という施設があるようです。そこから子どもの泣き声が聞こえると評判なんだとか……。道端にある案内板も鬼になっていて、地獄の入口に近づいているのをじわじわと感じはじめ、だんだん引き返したい気分になってきました……。

鬼の案内に逆らって歩くとどうなることやら
鬼の案内に逆らって歩くとどうなることやら

しかし、これも調査のためと自分に言い聞かせながら進むと、一見地味だけど、何やら不気味な建物が。

これが噂の「地獄堂」なのか?
これが噂の「地獄堂」なのか?

見ると、「地獄度チェック」という謎の機械が!使用説明を読むと、「極楽への道」「地獄への道」と題された選択肢の中から、「感謝して真剣に努力する」or「絶えず不平不満が多い」、「義務も責任も進んで果たす」or「やる気がなく無責任」などといった選択肢のうちどちらかを選びます。10問回答したところで、自分の地獄度がチェックできるというもの。探偵もさっそくやってみたところ、地獄度8点という結果に。点数が判明した瞬間、閻魔大王の「地獄行き決定~!」という声がしました。そ、そんなぁ~、どうしても行かなきゃいけないの?と思いつつも、地獄堂の中へと進んでみました。室内は薄暗く、おどろおどろしい雰囲気が伝わってきて、不安は募るばかり……。

地獄度チェックはWebでもできます。詳しくは全興寺のWebで!
地獄度チェックはWebでもできます。詳しくは全興寺のWebで!

地獄堂の中には閻魔大王をはじめとする10人の裁判官が待ち受けています。左手には、何とも恐ろしげな姿の脱衣婆(死後の世界の番人的な存在で、死者から服を剥ぎ取る役割を持っている)と屈強な鬼が、こちらを見おろしています。地獄堂ができた当初は自動ドアになっており、中へ入るとドアが閉まる仕組みになっていましたが、閉まった瞬間、あまりの恐ろしさに耐え切れず、泣き出してしまう子どもが多数いたため、現在ではドアは開いたままになっています。これまで、いろんなところに潜入捜査をしてきた百戦錬磨の探偵でも、この空間に閉じ込められたら、二度と出られないと思って、泣いちゃうかも。

今にも襲いかかってきそうなほどリアルな鬼と脱衣婆
今にも襲いかかってきそうなほどリアルな鬼と脱衣婆

なんでも地獄では、死んでから49日以内に、裁判官たちが死者の生前犯した罪に対して審判を下していくそうです。その裁きのもと、死者はさまざまな輪廻先に飛ばされるのだとか。ちなみに、閻魔大王は一番偉い人のイメージがありますが、実際は10名の裁判官と変わらない地位らしいです。

正面にいる閻魔大王と左にズラリと並ぶ裁判官。今から謝ってももう遅い?
正面にいる閻魔大王と左にズラリと並ぶ裁判官。今から謝ってももう遅い?

閻魔大王の前にあるドラを叩くと、人が死んでから歩む地獄への道のりが、鏡に映像で映し出されます。身の毛もよだつ拷問シーンが、次から次へと出てくるのですが、その残虐さのあまり、探偵も震え上がりました。

映像の最後には「命はひとつきり」という深い言葉が映し出されます
映像の最後には「命はひとつきり」という深い言葉が映し出されます

思い出すだけで夜も眠れなくなりそうな地獄体験でしたが、なぜ「地獄堂」ができたのでしょうか。その理由を知るために、全興寺の住職である川口さんにお話をうかがいました。
川口さんは、「子どもだけでなく大人にも、悪いことをすると必ずその報いを受けることと、自分自身の命を大切にすることを伝えたかったのです」と語ります。なるほど〜。確かにこの、大人でも怖いと感じる空間と映像を体験すると、「悪いことをせずに、自分自身の命を大切にしていこう」と強く心に誓うでしょう。

住職の川口さんは優しそうな方でひと安心
住職の川口さんは優しそうな方でひと安心

実際に訪れる方の多くは、幼い子どもを連れた家族なのだとか。「地獄堂に入って泣いてしまう子どもも多いけれど、家に帰ったら悪いことをしなくなったり、素行の悪かった高校生がたまたま地獄堂に来て、真面目になったりしたんですよ」といったエピソードをお話してくれました。怖いだけじゃなく、ありがたい場所でもあるんですね。

ところで、「全興寺」には地獄だけでなく、心を清められる「ほとけのくに」なる場所もあります。こちらは、四国八十八ヶ所各寺院のご本尊と弘法大師、合計151体の石仏に囲まれて、ステンドグラスの上で瞑想できる神秘的なスポットです。

恐怖心から解放されていくような気が…(制作会社スタッフ)
恐怖心から解放されていくような気が…(制作会社スタッフ)

そのほかにも、穴に頭を入れると地獄の釜の音がきこえるという不思議な石や、昭和の駄菓子屋さんに並んでいたおもちゃが展示されている「駄菓子屋さん博物館」や子どもたちが地域の人と昔遊びを楽しめる「おも路地」、軽食やコーヒーで一息つける「おもろ庵」など、一日かけて回らないと、すべてを堪能できないほど見どころが盛りだくさん。それもすべて川口さんが企画しているというから驚きです。

(写真左上)穴に頭を入れると地獄の釜の音がきこえる石(右上)駄菓子屋さん博物館(左下)おも路地(右下)おもろ庵
(写真左上)穴に頭を入れると地獄の釜の音がきこえる石(右上)駄菓子屋さん博物館
(左下)おも路地(右下)おもろ庵

全興寺の地獄堂は、忘れたくても忘れられないほど罪の深さや地獄の怖さを強烈に示してくれる、インパクトのある場所でした。子どもだけでなく大人になってから訪れても、地獄の怖さに震え上がり、正しく生きることの大切さを実感させられます。地獄堂を訪れた人は、「あんなところにはぜっっったいに行きたくない!」と必ずや思うはず。悪いことさえしなければ、地獄には落とされないはずです!皆さん、まずは地獄度チェックですよ!

命はひとつきり!悪いことはしちゃダメですよ~!
命はひとつきり!悪いことはしちゃダメですよ~!
調査完了