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10月
ニューヨークのエンパイアステートビルもグリーンビルディングに Ivo Jansch(flickr)
米国では、エネルギーや水などの使用量を削減し、環境負荷を低減した建造物「グリーンビルディング」の導入が広がっています。米国グリーンビルディング協会(U.S. Green Building Council)による調査結果では、2015年中に建設が予定されている同国内の事業用の建築物のうち40%以上が、一般の住宅でも15%以上が、グリーンビルディングを目指しているといわれています。
グリーンビルディングとは、環境も人間も健康でいられるように設計、建築された建物で、環境保護庁はグリーンビルディングを「エネルギー、水、その他資源を効果的に使い、廃棄物や汚染・環境劣化を削減し、居住者やビル内で働く人の健康と生産性を高めることにより、環境や人体への負荷を削減するよう設計された建物」と定義しています。
この場合、商業ビルでも住宅でも、また、新築でも既存建築物でも、基準を満たせばグリーンビルとみなされます。現に、建築から80年以上を経たニューヨークのランドマークであるエンパイアステートビルも、最先端技術を駆使して省エネ改修をし、グリーンビルディングに認定されました。
このようにグリーンビルディングの取り組みは新築だけではなく、既存の建築物の改築、改修市場にも広がっています。現在、米国内の建設プロジェクトの約61%は改修プロジェクトとなっており、既存の建物のグリーン化に対する投資は2015年から2023年までの間に9,600億ドル*1に上る見込みです。既存の建造物を使い、さまざまなエコ改修をすることで、環境価値を生むグリーンビルディングは、新築よりそのコンセプトへの親和性が高いといえそうです。
出典:米国グリーンビルディング協会
米国グリーンビルディング協会はLEED(リード)という認証制度を所管しています。LEED とは 「Leadership in Energy and Environmental Design」の略で、建築物全体の企画・設計から建築施工、運営・メンテナンスまでにわたり、省エネや環境負荷について、いくつかの項目の評価のポイント数の合計によって評価するしくみです。
評価ポイントには、建築物(敷地)の持続可能性や交通の便、水効率や節水性、省エネと再生可能エネルギーの使用、資材の再利用・リサイクル率、屋内環境の快適さといった項目があります。たとえば、敷地の持続可能性や交通の便では、公共交通機関へのアクセスがいい場合は1ポイント、緑地を最大限に活用している場合は1ポイントというように、基準をクリアするごとにポイントが得られるしくみとなっています。満点は110点ですが(住居のみ136点)、40~49ポイントで認証獲得、それ以上になると、50ポイントでシルバー認証、60ポイントでゴールド認証、80ポイント以上でプラチナ認証と高い評価を受けられます。現在米国でLEED認証を受けている建物は2016年7月時点で25,000件を超え、申請数も35,000件を超えています。
グリーンビルディング協会では、LEED認証がもたらす環境へのインパクトについても報告*1しています。たとえばエネルギーの節約は、LEEDゴールド認証を取得した建物はエネルギー消費量が25%、水使用量が11%低減、メンテナンスコストが19%低減、CO2排出量が34%低減という効果が見られました。これに加え、入居者の満足度も27%向上しているという点は見逃せません。
また、LEED認証は建材の削減にも効果を示しています。建築物は、米国におけるCO2排出量の39%、エネルギー消費量の40%、水消費量の13%を占める、非常に環境負荷の高い存在となっています。LEED認証を目指すプロジェクトは再生素材を使ったものが多く、米国環境保護庁の調査によれば、LEED認証の導入により年間8,000トンの廃棄物を減らすことにつながると予想されています。
このように、米国でLEED認証を取得する建築物が増えているのは、建物の環境負荷の低減により、メンテナンスコストが普通のビルに比べて2割程度安くすむことや、光熱費が節約できる環境価値も大きいのですが、理由はそれだけではありません。老朽化したビルがLEED認証を受けることで、入居希望する企業が集まりやすく、通常のビルより資産価値が高くなる経済効果も持ち合わせているのです。環境価値に加え経済的価値も高まることで、LEED認証に対する関心が高まっています。
LEEDプラチナ認証を受けたビルには認証プレートが贈られる David Burn(flickr)
米国では、自治体もLEED認証の導入に積極的になっています。
ニューヨーク市では、2005年から施行されている「グリーンビルディング法」により、市が関連する建築プロジェクトで建築コストが200万ドル以上のものは、LEED認証取得が必須条件となっています。
サンフランシスコ市では、1915年建築の歴史的な建物、市庁舎をグリーンビルディングに改修し、最高ランクのプラチナ認証を獲得しました。同市庁舎は、照明をなるべく使わないよう天窓から自然光を取り入れる「自然照明管理システム」を取り入れ、照明も省エネ性能の高いものに変え、電力消費を抑制。新しい節水機能を高めたトイレや蛇口へ交換し、水使用量を大幅に削減しました。
また、企業では、コーヒーチェーンのスターバックスが新規に建築・改装する世界中のスターバックス全店で、LEED認証獲得を目指すことを発表しています。新店舗デザインは「地元の素材と建築者を採用する」「リサイクル・再利用建材を使用する」「建築構造の健全性と素材の出所を明確にする」などが、指標として挙げられています。たとえばLEED認証されたシアトルの店舗では、柱・床・天井はリサイクル建材を、キャビネットに使われている木材はシアトル地域の倒木を利用、バーカウンターの表面に張ったレザーは靴や自動車工場から出たスクラップレザーを、そしてテーブルは、地元のレストランで使用されていたものを再利用と、リサイクル・再利用建材を多用しています。
グリーン化によりLEED認証を得たサンフランシスコ市庁舎 heydrienne(flickr)
LEED認証は現在、グリーンビルディングの認証システムとして、米国のみならず世界的にも広まりつつあり、2015年1月現在、世界150以上の国や地域において、69,000件以上のLEED認証建設プロジェクトが存在します。米国以外でのプロジェクトはすでに全体の4割を超えており、導入している国では、カナダ、中国、インド、韓国、台湾などが多く、アジアの国々でも導入が活発になっています。日本でも、このところLEED認証への関心が急速に高まっています。国内では2015年10月時点で145件のプロジェクトが認証を受けるために登録され、うち67件がすでに認証を受けました。
LEED認証を受けた建築物は、省エネで環境への負荷を減らし、資産価値を高めることからも、今後も商業ビルを中心に、新築、既存建築物問わず広がっていきそうです。
*1 USGBC(U.S. Green Building Council)2016年世界のグリーンビルディングの現状に関する調査結果
LEED プラチナ 認定を受けた台湾の国立成功大学 グリーンビル研究センター
Word:Yayoi Minowa