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9月
中国雲南省に建設された風力発電ファーム MelindaChan(flickr)
中華人民共和国(以下、中国)は、世界最大の温室効果ガスの排出大国ですが、同時に世界最大の自然エネルギー大国としてリードする存在になりつつあります。
エネルギーはまだ化石燃料を使った火力発電が主流ですが、その割合は年々減っています。2014年に国務院から発表された「エネルギー発展戦略行動計画(2014〜2020年)」では、エネルギー消費量を減らし、2020年までに再生可能な自然エネルギーの割合を15%にするとありました。これは従来の経済発展を優先したエネルギー政策の流れから考察すると、画期的な政策転換といえます。
それだけではなく、中国国内のエネルギー戦略研究をしている「能源研究所」は、「2030年には電力の53%を、2050年には86%を自然エネルギーで供給できる」という報告書を発表しています。同研究所は、中国政府の重要な経済政策を策定する「国家発展改革委員会」の傘下にあることから、これがエネルギー政策についての重大な発表だということがわかります。
その目標達成に向けて、中国ではさまざまな自然エネルギーの導入が加速しています。2015年には、風力発電、太陽光発電における電力導入量で、また、太陽のエネルギーを熱として利用する太陽熱温水器の導入量でも中国は世界1位となりました(グラフ1参照)。中国が自然エネルギーに舵を切ったことは、世界のエネルギー動向を大きく変えるほど影響力のあることです。
それでは、中国がエネルギー政策を大きく転換させていくまでの流れを見てみましょう。
グラフ1)出典:REN21 自然エネルギー世界白書2015
中国では、2000年以降の急速な経済成長にともない、エネルギー需要が増加した結果、数々の環境問題に直面することとなりました。PM2.5をはじめとする大気汚染、河川や湖、地下水の汚染、近海で深刻化している海洋汚染、大量の未処理廃棄物、土壌汚染など、どれをとっても深刻な問題ばかりです。中でも大気汚染は劣悪で、車の増加、工場の排気により、首都・北京の空は「1年365日のうち、360日はグレーに染まっている」と言われるほどです。
当然のことながら、これらの環境汚染に関する問題は国際的にもクローズアップされるようになりました。2005年以降、温室効果ガス排出量が世界一となり、増加し続ける排出量になかなか歯止めがかからないことに対して、国際世論の厳しさも増してきました。そのため、中国政府は2014年以降、エネルギー政策を大きく転換させることになったのです。
この年、習近平国家主席が「エネルギーの生産・消費革命を積極的に推進する」ことを表明し、エネルギー消費総量を抑制する方針を明言しました。続いて国務院による「エネルギー発展戦略行動計画(2014~2020年)」では、「節約」「クリーン」「安全」の戦略方針のもとで、2020年にはエネルギー消費における石炭消費の割合を62%以内に抑える一方、自然エネルギーを15%、天然ガスを10%以上に引き上げる数値目標が示されました。これ以降、自然エネルギーを積極的に導入していくようになったのです。
大気汚染が深刻な北京市内は、昼間でも視界が悪い Kentaro IEMOTO(flickr)
中国が導入する自然エネルギーの中でも、飛躍的に伸びているのが風力発電です。2005年から広大な国土を活用して本格的な導入が始まりました。発電設備容量は2005年に1.86GWしかなかったのが、2010年には44.73GWとなり、アメリカを抜いて世界1位の設備容量となりました。その後も、2012年には75.3GW、2014年には100GW超えと右肩上がりに伸び、その速度には目を見張るものがあります。現在、中国の累積導入量は、世界全体の風力発電能力の3分の1に匹敵します。
風力発電は、「再生可能エネルギー法」によって、送配電会社に対して発電された電力の全量買取義務が課される一方、発電会社にも一定比率の再生可能エネルギー発電設備の保有が義務化されたことにより、主として内モンゴル、新疆ウイグル、江蘇省などの地域において急ピッチで開発が進んでいます。
しかし、問題がないわけではありません。急激な導入に設備のメンテナンスや送電網の整備が間に合わず、大規模な送電網脱落事故が起きたり、風車は建てたものの送電網につなげなかったりといった問題が発生しています。実際に送電網で流された電気は、能力の7割弱ぐらいに留まっているというデータもあるほどです。
これに対して政府は現在、遠隔地の風力発電所からエネルギー需要の高い東部に電力を送電するため、2020年末までの完成を目指して27ヶ所で超高圧送電線の建設を進めています。また、風力発電の安定的な運営に向けて、送電網への連系が確実な案件だけに認可を限定したり、電圧が低下しても発電システムを作動できる設備「LVRT」の機能装着を風車に義務付けるなど、さまざまな対策が講じられています。
内モンゴル自治区の砂丘に設置された風車群 Zhang Yu(flickr)
電力導入量で風力発電とともに世界一である太陽光発電は、政府の支援策により拡大しています。政府は、2009年から国内での商業開発を進めるために、「太陽光発電一体型屋根普及計画」を推進しました。財政支援、電気料金の優遇などによって、工業地域や商業施設、公共機関、未電化の辺境地区において、太陽光発電のモデル事業を重点的に支援したのです。
その結果、太陽光発電は2015年の導入量が15GWとなり、累積導入量が43GWとなったことで、ドイツを抜いて中国が世界最大の導入量となりました(グラフ2参照)。
中国における太陽光発電の産業はその後も大きく発展し、2015年には世界の太陽光発電機器メーカー最大手10社のうち8社*1を中国企業が占めるまでになっています。
太陽の熱で温められたお湯を給湯などに使う太陽熱利用。この太陽熱利用でも中国は世界をリードしています。2011年末の設置容量(累計)は、世界の約65%*2を占め、2位の米国に10倍以上の差をつけています。中国で太陽熱利用の進んだ理由として、政府が環境対策の一環として積極的利用を促進したことに加え、国内に1,000社とも言われる太陽熱利用システムメーカーから品質のいい太陽熱温水器が開発され、数多く流通していることもあります。太陽光発電、風力発電などを含め、自然エネルギーの拡大が産業発展に結びついているのも中国の特徴です。
大気汚染、水質汚染などさまざまな環境問題に直面しながらも、環境汚染とエネルギー問題を同時に解決する方法として、国として自然エネルギーへの明確なシフトを表した中国。国内における自然エネルギー需要の高まりをとらえ、2014年の再生可能エネルギー投資額は895億ドルに達しています。今後も莫大なエネルギー需要が見込まれる中国だけに、世界のエネルギー収支を左右する大国の今後はこれからも目が離せません。
*1 米国太陽光発電市場リサーチ・コンサルティング会社SPV Market Researchの最新レポート(The Photovoltaic Manufacturer Shipment Report:太陽電池メーカー出荷量レポート)2016より
*2 IEA Solar Heat Worldwide 2013
Word:Yayoi Minowa