




黒い招き猫の誕生秘話!?
京都・檀王法林寺(だんのうほうりんじ)を徹底調査!
2026/01/05

先日、「京都に黒い招き猫がたくさん展示されているお寺がある」という話を聞きました。黒い招き猫というのも珍しいですし、たくさんあるとなると、とても気になります。なぜお寺に黒い招き猫が展示されているのでしょうか。探偵さん、ぜひ調べてください。
黒い招き猫を探しに、京都へ
黒い招き猫を数多く展示しているお寺があるなんて、探偵もはじめて聞きました。しかも、依頼者さんがおっしゃるとおり、「黒い」というのも珍しいですよね。とても興味がわいてきます。
調べてみると、依頼文に書かれているお寺は京都市左京区にある檀王法林寺(だんのうほうりんじ)だとわかりました。さっそく京都へ向かい調査に取りかかります!
京阪本線・鴨東(おうとう)線の三条駅で下車し、三条大橋のたもとから鴨川を左手に1分ほど歩くと朱塗りの門が見えてきました。門の前に立つと、先ほどまで歩いていたにぎやかな三条通とは空気が一変し、おごそかな雰囲気が感じられます。この中にたくさんの黒い招き猫たちが……!ドキドキしながら、門をくぐり檀王法林寺の境内へと入ります。

お寺でおまつりしている神様と黒猫の関係とは!? 境内を少し進むと本堂が見えてきました。

拝観料をおさめ中へ入ると、広々とした空間が広がります。
部屋をぐるっと見わたすと、なんとびっくり……!数えきれないほどの招き猫が、棚いっぱいに飾られています。ざっと数えても100体以上ありそうです。

大小さまざまな招き猫のなかに、確かにたくさんの黒い猫がいます!これが、依頼者さんがおっしゃっていた黒い招き猫ですね!

黒い招き猫をもっと近くで見ようと足を前に進めたとき、「ようこそ、檀王法林寺へ」と男性が声をかけてくれました。ご住職の信ヶ原(しがはら)さんです。

このお寺にはじめて来たのですが、たくさんの招き猫が飾られていて、びっくりしました。特に黒い招き猫はあまり見たことがなく、こんなにたくさん並んでいることに驚いています。
「黒い招き猫は確かに珍しいかもしれませんね。当山の授与品なんですよ。縁起物として人気で、黒い招き猫をお目当てにお越しいただく方もいらっしゃいます」。
こちらのお寺で授与されている人気の縁起物なんですね。ところで、あまりお見かけすることのない黒い招き猫を授与されているのには、何か特別な由来があるのでしょうか?
「はい。当山では、ご本尊の阿弥陀如来さま以外に、主夜神(しゅやじん)という神様もおまつりしています。主夜神さまは、『主夜』が『守夜』と転じ、『夜を守る神様』として信仰されてきました」。
「夜を守る神様」がいらっしゃることをはじめて聞きました。黒い招き猫と関係しているのでしょうか?
「はい。話は、当山を開いた僧侶「袋中上人(たいちゅうしょうにん)」が仏教をより深く学ぼうと、中国への渡航を試みた1603年にさかのぼります。袋中上人の夢に主夜神さまがあらわれて「あなたを守る」と告げられたそうです。
当時の情勢により中国への入国はかなわなかったのですが、諸国での布教活動を経て、1611年に檀王法林寺をおつくりになられました。その際、『船旅や布教活動を無事におこなえたのは、夢にあらわれた主夜神さまのおかげだ』という感謝から、主夜神さまをおまつりしはじめました」。

感謝の気持ちが、信仰のはじまりとなったのですね。
「そうなんです。そして、その主夜神さまのお使いが、黒猫といわれているんです」。
なんと!そこで「黒猫」が関係してくるのですね。
「文献などは残っていないのですが、黒は霊力が最も強い色とされ、黒猫も霊力が強いという見解があります。そのため『主夜神さまの持つ力を弱めることなく届けられる存在』として黒猫がお使いに選ばれたのではないかと考えられています。また、当時の船旅では『船内のネズミ駆除』と『長旅のいやし』という2つの目的で猫を連れていくことが一般的でした。袋中上人も中国への船旅に猫を連れていったとされており、もしかしたらその猫も黒猫だったのでは、と私は推測しています」。
なるほど……、袋中上人は神様のお使いである「黒猫」に守られていたのかもしれないですね。

特別な日にだけ拝観できる主夜神像
「さあ、当山のお話もお聞きいただきましたし、ぜひ、本堂にある主夜神さまのお堂もご覧ください」。
住職に案内され奥の板の間へと進むと、主夜神さまのお堂がありました。お堂には紫色の幕がかかっており、神聖な雰囲気がただよっています。

「こちらのお堂の中に主夜神像を安置しています。ふだんは公開しておらず、拝観いただくことはできません。毎年12月の第1土曜日に開催する『招福猫・主夜神大祭(しょうふくねこ・しゅやじんたいさい)』のときにのみ、ご開帳しています」。
年に1度だけご開帳されるのですね。今日は見ることができなくて残念です……。ぜひまた参拝に訪れたいと思います!
江戸時代中期から大人気!黒い招き猫に込められた願い
黒い招き猫の授与は、いつごろからはじまったのでしょうか?
「江戸時代中期にはすでにはじまっていたといわれており、縁起物としてはもちろん、ご自宅で主夜神さまにお祈りを捧げる際の対象として、黒い招き猫を授与するようになったと伝えられています。当時は、地域の方々が競うようにお受け取りにこられたそうです」。

黒い招き猫は、地域の方々に大人気だったのですね。
「檀王法林寺の周辺には、祇園や先斗町といった夜にお商売をされる方が多い地域があります。そのため、夜を守る主夜神さまへの信仰があつかったそうで、主夜神さまのお使いである黒猫を模した黒い招き猫を求める人が、あとを絶たなかったといいます」。
檀王法林寺の黒い招き猫の背景には、夜の災いから人々を守る主夜神さまへの信仰と、その神様のお使いである黒猫の存在があったのですね。
黒い招き猫に込められた思いとは!?
お話を聞いて、もう一度招き猫たちを拝見したくなりました。
「ぜひ、何度でもご覧ください」。
あらためて拝見して思ったのですが、授与品の黒い招き猫のほかにも、いろんな招き猫が展示されていますよね。
「当山の授与品以外の多くは、全国からご奉納いただいたものなんですよ」。
全国から!?それはすごいですね。
「はい、本当にありがたいことです。約30年前に、伊勢の『来る福招き猫まつり』に檀王法林寺の黒い招き猫が展示されたことがきっかけで、『だんのうさんの黒猫』として全国に知られるようになり、招き猫のご奉納が増えました」。
招き猫が、さらに招き猫を呼んできてくれたのですね。
よく見ると、あげている手が右手のものと左手のものがありますが、何か違いがあるのでしょうか?
「あげている手によって『お金を招く』、『人を招く』などご利益が異なるんです。なかには両手をあげて『お金と人の両方を招く』とされる招き猫もありますよ」。

招く手によってご利益が違うとは知りませんでした。檀王法林寺の黒い招き猫は……右手をあげていますね。これはどういうご利益があるのですか?
「一般的な招き猫では、右手は『お金を招く』とされていますが、当山では『人を招く』という願いを込めています。人が集まることで助け合いの心をつないでほしいと歴代の住職は考えてきたのだと思います」。
檀王法林寺の黒い招き猫は、夜の災いから人々を守る神様のお使いである黒猫を模したものであり、祈りを捧げる対象として、多くの方々に信仰されてきたことがわかりました。
京都を訪れる際は、ぜひ「だんのうさんの黒猫」に込められた、「人と人が心をつなぎ、助け合ってほしい」という願いに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

- ※この記事は2025年12月1日時点の情報をもとに掲載しています。


- 檀王法林寺




