甘い香りの先にあった山の正体とは?
大阪市城東区の川沿いを探索
2023/07/03

大阪市城東区にある城北川沿いを散歩していたら、綿菓子のような甘い香りが漂ってきました。でも、それらしいお店も屋台も見当たらなくて、何の香りかわからず……。
いったい何の香りだったのか気になって仕方ありません。探偵さん、調査してください。
甘い香りの正体を探ってほしいとの依頼です。香りにつられていくと、その先にはいったい何があるのでしょうか?探偵もとっても気になります。さっそく城北川に向かってみましょう!
川の南端へ到着した探偵たち。どこから香りがするのかを探るため、北へ向かって歩いてみたいと思います。歩きはじめること約10分。ん!?ほのかに甘い香りがしてきました!1歩ずつ足を進めると、どんどん香りが強くなっていきます。依頼者さんがおっしゃるとおり「綿菓子」のような、甘くてやさしい香りです。さらに100mほど進み、一番香りが強く感じるところで足を止めると、いく棟も並んだ工場の前にたどりつきました。

この工場が香りの正体なのは間違いなさそうなのですが、どうやって中に入ろうか……と、入口あたりをうろうろしていると、「どうしましたか?」とスタッフの方が声をかけてくれました。
甘い香りにつられて来たのですが、こちらは何の工場でしょうか?「香りにつられて、ここまで来られたのですか(笑)。今日はちょうど、工場案内をおこなっている日なんです。よかったら寄っていかれませんか?」
いいのですか!?ぜひお願いします!お声がけくださった山岡さんに案内され、工場の中に入ることができました。

山岡さんのあとに続きながら、甘い香りの正体らしきものを探そうとキョロキョロしていると、「ここから先は、これに着替えてくださいね」と、作業服と帽子を渡されました。
作業服を着てシューズカバーをつけ、帽子は耳まですっぽり。なかなかの厳重ぶりに、いったい何が待っているのかとドキドキしながら歩き続けると、大きな倉庫の前に到着しました。「さ、入りますよ」と、山岡さんが扉を開くと……。

「どうぞ、近くに寄って見てください」と誘導され近づいてみると、どうやら茶褐色の粉が積み上がっています。「すごい量でしょう。この結晶は砂糖の原料なんです。『原料糖』といって、サトウキビからできています」。
砂糖の原料!?なるほど、道理で甘い香りがするわけですね。こんなにたくさんあるということは……?「はい。ここは砂糖を生産する、日新製糖株式会社です!」甘い香りを放っていたのは、砂糖をつくる会社でした!
日新製糖は千葉と大阪に工場があり、今回訪れた大阪の今福工場は、1952年に建設されたそうです。「年間9万トンもの砂糖を生産しているんですよ。これがどのくらいの量になるかというと、大阪市民が消費する約2年分以上の砂糖にあたります」と山岡さん。

甘い香りの謎は解けましたが、そういえば探偵たち、砂糖について何も知りません。いつから日本にあるのか、どうやってつくっているのか……。「砂糖について知らないという方は少なくないんですよ。ではまず、砂糖の歴史からお話ししましょう」。
砂糖が生まれたのは紀元前で、インドが発祥の地といわれています。日本にやってきたのは奈良時代。仏教が広まる過程で中国から伝わり、貴重な薬として扱われ、一般には普及していませんでした。
交易が盛んにおこなわれた江戸時代には、砂糖の輸入量が増え、一部の富裕層や商人の間でも使われるようになっていきましたが、それでも扱いとしては高級品だったそうです。明治時代に入ると、日本でも砂糖の生産が開始されます。明治初期から中期にかけて多くの砂糖工場が設立され、和菓子や洋菓子に使われたり、調味料として使われたりと、一般の家庭にも広まっていきました。

私たちが手軽に砂糖を使えるようになるまでには、長い歴史があったのですね。「そうですね、皆さんが安心して毎日砂糖を使えるように、私たちもたくさんつくり続けています」。そういえば先ほど、年間9万トンもの砂糖をつくられているというお話でしたが、こんなにたくさんの砂糖をつくるための原料は、いったいどこから運ばれてくるのでしょうか?
「原料糖は、海外ではオーストラリアやタイ、国内では鹿児島や沖縄から、船で大阪南港に運ばれてきます。大阪南港から今福工場へは、『艀(はしけ)』と呼ばれる小型の運送船で運んでいますよ」。
砂糖の原料は、船で運ばれてくるのですね。「たとえば中型トラックですと一度に運べる量が4トンですが、艀だとその100倍の400トンを運ぶことができます。効率的ですし、CO2の排出量も少ないので、創業当時の運送方法を今も活用しているんですよ」と山岡さん。難点は、雨が降ると水揚げ時に原料糖が濡れてしまうため、運送ができなくなるということ。梅雨時期はスケジュール調整が大変だそうです。


運ばれてきた原料糖は、どのようにして砂糖になっていくのでしょうか?「大まかに工程をお伝えすると、まずは原料糖から不純物を取り除くために洗糖やろ過をおこない、純度の高い糖液をつくっていきます。できあがった糖液を濃縮していくと結晶ができ、これが砂糖になります」。
「ほかにも氷砂糖など、砂糖の種類によって工程が異なる商品もありますよ。たとえば、最近人気のきび砂糖をご存じですか?」きび砂糖……聞いたことがあります。少し茶色いお砂糖ですよね。健康志向の方に人気だとか。「そうなんです。きび砂糖は、不純物を取り除く際の途中の工程のものを煮詰めてつくっています。だから、色も茶色がかり、含まれている成分も異なってくるんです」。

同じ砂糖でも、ひとくくりじゃないのですね!「はい。きび砂糖はミネラルがより多く含まれていたり、サトウキビの風味がより感じられたりと、健康志向の人たちや料理好きな人たちから注目を集めています。料理にもコクがでると評判で、会社を代表する人気商品ですよ」。

なるほど~。砂糖に関して詳しくなった探偵たち。そこで山岡さんが、「今日は砂糖のことを紹介できてよかったです!最後に、自宅でできる簡単な甘~いおやつのつくり方をお教えしましょうか」と提案してくれました。
さっそく教わったレシピを紹介します。
ぜひお家でチャレンジしてみてください!
\日新製糖さんおすすめ/【手づくりフルーツキャンディー】
夏の屋台でよく見かけるフルーツキャンディーが、フライパンで簡単につくれます!

材料:お好きなフルーツ、砂糖
①好きなフルーツをひと口大にカットし、竹串に刺しておく
②白砂糖(上白糖)100gに、水 大さじ2(30cc)を混ぜてフライパンに流し入れ、中火で沸騰させる
③砂糖に色がつきはじめたらすぐに火を止め、フライパンをまわしながら余熱で全体を飴色にする
\マイマイ姉妹からのアドバイス/
色づきはじめると、あっという間に濃い茶色になってしまうので、タイミングを逃さず!
④お皿にアルミホイルやクッキングシートを敷いて、フルーツに砂糖をまわしかける。冷蔵庫に入れて冷やし、固まったら完成
\マイマイ姉妹からのアドバイス/
フルーツを下にして竹串を立てて、余分な砂糖を下に流すと、砂糖が均一についてキレイな仕上がりに
今回ご紹介いただいた日新製糖のレシピはこちら
フルーツキャンディーも載っているよ!

甘い香りに誘われた先は、70年前から続くお砂糖工場でした!そこで長年働く山岡さんが、最後にアドバイスしてくれました。「疲れたときに甘いものを食べるとほっとしますよね。砂糖はブドウ糖に分解されて脳のエネルギーになりますので、仕事や勉強で疲れたときには、ほんの少し糖分をとるようにしてくださいね。疲れたアタマを甘~く癒してくれますよ」。
暑さで疲れた身体にもお砂糖はおすすめで、栄養を与えてくれるのだとか。夏休みには、教えてもらったフルーツキャンディーづくりに、ぜひ挑戦してみてください!
