炎の探偵社

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お菓子が集まる神社で、
「お菓子の元祖」に迫る!

2023/06/05
依頼内容

和歌山に、日本中のお菓子が大集合する神社があると聞きました。なぜ神社にお菓子が集まるのでしょうか?探偵さん、調査をお願いします!

日本中からお菓子が集まる神社とは、いったいどんなところなのでしょうか?調べてみると、全国にいくつかの「お菓子の神社」が見つかりました。依頼者さんがおっしゃるとおり和歌山にも「橘本(きつもと)神社」という神社があるようです。

もう少し詳しく見てみると、なんと橘本神社では毎年春にお祭りが開催されていて、お菓子が集まってくるとのこと。これはぜひ参加せねば!もしかして、おいしいお菓子が食べられるかも!?期待に胸を膨らませつつ、調査に向かいます。

お菓子の神社・橘本神社に到着
お菓子の神社・橘本神社に到着

JR海南駅から車で走ること約10分、橘本神社に到着!石段の上にある大きな鳥居をくぐって、本殿へ足を進めます。はてさてお菓子はどこでしょう?と、はやる気持ちを抑えながら、まずはお参りです。

「これからも『炎の探偵社』を楽しんでいただけますように」とお決まりのお願いをしてから顔を上げると、なんと目の前に並んでいるではないですか。和菓子、洋菓子、駄菓子と種類もさまざまなお菓子が、北は北海道から南は九州まで、日本各地から集まっています。

全国から集まった200種類以上のお菓子たち
全国から集まった200種類以上のお菓子たち

まるでお菓子の博覧会に来たかのようです。あのお菓子知ってる!あ、これも食べてみたかった~と、端から一つひとつお菓子を見ていると、「お菓子がたくさん集まっているでしょう」と宮司の前山さんが声をかけてくれました。関西では見たことのないお菓子もたくさんありますね!ところで、なぜ橘本神社には、こんなにもたくさんのお菓子が集まるのでしょうか?「この神社はお菓子の始祖・田道間守(たぢまもり)をまつっていて、神様にお供えするためにお菓子が集まるのです」。

お祭りの当日、お忙しいなか声をかけてくれた宮司の前山さん
お祭りの当日、お忙しいなか声をかけてくれた宮司の前山さん

全国からお菓子が集まっているのは、神様へのお供えだったんですね!ところで、田道間守とはどのような神様なのでしょう?お菓子の始祖ということは、はじめてお菓子をつくった方ということでしょうか?「そうですね、たいへんお菓子にかかわりがある方ですよ。では当神社の神様、田道間守についてお話ししましょう」。

『今から約1900年前の弥生時代、田道間守という男がいました。ある日、彼が仕えていた第11代・垂仁(すいにん)天皇から「不老不死の果実を探してくるように」との命を受けます。それは橘(たちばな)の実のことで、別名・非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)と呼ばれていました。時を選ばず香る、つまり「永遠に香る」を意味する伝説の果物で、海の向こうの国(中国)にあるのだといいます。田道間守は橘を探す旅に出ます。

田道間守は橘を探すため、荒れた海をわたり旅に出ます。1年たち、2年たっても、橘はなかなか見つかりません。日本を離れて探し続けること約10年。苦労の末、ようやく橘を見つけた田道間守は、喜び勇んで日本へ帰ります。ところが、果実を心待ちにしていた垂仁天皇は、田道間守が帰る前に亡くなっていたのです。田道間守の悲しみはいつまでも癒えることはありませんでした。

このときに田道間守が持ち帰った伝説の果物・橘は、半分は皇太后に献上され、残りの半分は垂仁天皇のお墓に植えられました。橘は、まるで垂仁天皇がおわす空の上へ実を届けんとするように、枝を伸ばし続けたのだそうです』。

不老不死の果実を求めて海の向こうの国へわたった「田道間守」のお姿
不老不死の果実を求めて海の向こうの国へわたった「田道間守」のお姿

やっと約束を果たせると日本に帰ってきた田道間守の気持ちを考えると、胸が苦しくなりますね。「そうですね。でもその田道間守が持ち帰った橘は、温暖な和歌山の地でみるみる育ち、現在のみかんへとつながっています。橘を持ち帰り、みかんを生んだ田道間守は、この史実から『みかんの神様』として崇められるようになったんですよ」。

私たちが食べているみかんは、田道間守が苦労して持ち帰った果物の子孫だったんですね。「そうなんです。今のようにおいしいお菓子がなかった時代は、橘をはじめとした果物がお菓子そのものだったんです。そして果物のなかでも橘は、香りや味わいなどさまざまな点から『最高のお菓子』と位置づけられていました」。

「歴史から見ると、まさに橘はお菓子の元祖。橘を持ち帰ってきた田道間守をお菓子の始祖と称え、全国のお菓子関係者は毎年自社のお菓子をお供えし、見守ってくださるようお祈りしているのです」。なるほど、田道間守はみかんの神様でもあり、お菓子の神様でもあるんですね!

田道間守が持ち帰った橘の子孫といわれる「橘の木」
田道間守が持ち帰った橘の子孫といわれる「橘の木」

お話に聞き入っているうちに、本殿の外に少しずつ人が集まってきました。「そろそろ祭りがはじまりますよ。行きましょうか」。お祭りには、菓子メーカーやパティシエなどお菓子づくりにかかわる人々が、菓子業界の発展や商売繁盛の祈りを捧げるため参加されています。「今年は過去最高となる197社からお供えのお菓子が届きました。探偵さんたちも、ぜひ見ていってくださいね」。

探偵たちはお祭りの邪魔にならないように、参列者席の一番後ろに座って見ることにしました。
ざわざわとしていた神社が、太鼓の音とともに、静まり返っていきます。心地よい春の陽気の下、お祭りのはじまりです。

左上:お祭りの参加者たち、右上:本殿の中で祝詞(のりと)を読み上げる前山さん、左下:美しい鈴の音を響かせながら舞を披露する巫女さん、右下:神様へ捧げる玉串、よく見るとみかんがついています
左上:お祭りの参加者たち、右上:本殿の中で祝詞(のりと)を読み上げる前山さん、左下:美しい鈴の音を響かせながら舞を披露する巫女さん、右下:神様へ捧げる玉串、よく見るとみかんがついています

神様へのお供え物としてお菓子が奉納されたあと、前山さんによる祝詞や巫女さんの舞へと、お祭りは厳かに続いていきます。最後に、参列者が順番に玉串を捧げ、お祭りが終わりました。約1時間半ほどでしたが、参加者皆さんの想いが伝わってきて、探偵たちはなんだか胸がいっぱいになりました。お菓子の神様に参加者皆さんの願いが届いていますように。

お祭りが終わると、前山さんが再び探偵たちのもとに来てくれました。「お菓子は私たちにとっておなかを満たすだけでなく、心まで満たしてくれるもの。お菓子業界がこれからも発展し、私たちにおいしいお菓子を届けてくださいますよう、神様への感謝を常に忘れないようにしたいですね」と語ってくれました。お菓子が好きな方は、ぜひ感謝の気持ちを伝えに橘本神社へ行ってみてくださいね。

橘がお菓子のルーツだったんだね
橘がお菓子のルーツだったんだね
調査完了
今回取材したところはこちら
橘本神社
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