ゾゾ~っと震えて
ニコッと笑っちゃう!?
笑顔になれるお化け屋敷とは
2022/08/01

「笑顔になれる」という変わったお化け屋敷があるらしくて気になっています。怖いはずのホラーなのに笑顔になれるとは一体どんなお化け屋敷なんでしょうか?探偵さん、調査をお願いします。
お化け屋敷といえば、悲鳴が響きわたり、背筋がゾーッと凍るような恐怖の空間をイメージしますよね。「笑顔になれるお化け屋敷」とは一体……?探偵たちが調べてみると「笑顔になれる」をコンセプトに掲げる「関西ホラーエンターテイメント集団 伯虎座(はくとらざ)」という団体を発見しました。問い合わせてみると、ちょうど開催中だというお化け屋敷に閉演後おじゃまできることに。さっそく現地へ向かいます!

やってきたのは、大阪市浪速区にある都市型温浴施設「スパワールド世界の大温泉」。ここで伯虎座プロデュースのお化け屋敷が開催されていました。施設内に入り、表示されている案内どおりに進むと、「あなたはこの恐怖に耐えられるのか」の文字が目に飛び込んできました。ここがお化け屋敷……!探偵、耐えられるか不安です。
「こ、こんにちは~」中に向かって恐る恐る声をかけると、「こんにちは!笑顔になれるホラーイベントについて知りたいんですよね」と、ニコニコ顔の男性が迎えてくれました。
目の前の笑顔につられて探偵も思わず笑顔に。はい、そうです。よろしくお願いします!
緊張をほぐしてくれたこの方こそ、伯虎座のプロデューサー、大河虎之介(たいがとらのすけ)さんです。

「伯虎座は、全国各地でホラーイベントを開催するエンターテインメント集団なんです」と大河さん。ホラーのエンターテインメント……コワ~い話が好きでたまらない人たちの集まりなのかな?と思っていると、大河さんが「元は喜劇を中心とした劇団でしたが、2020年の春ごろから、人が集まる劇場での公演が難しい状況になりました。そこで、役者たちの演技力をいかしつつ、同じような状況で困っているお店や地域と一緒に何かできないかと考えたところ、ホラーイベントの開催を思いついたのがはじまりです」と教えてくれました。

もともと喜劇団だったとは意外です!たしかに人を怖がらせるためには演技力が必要だと思いますが、なぜホラーイベントなのでしょうか?「舞台ができないなら少人数制で役者が活躍できるイベントを……と考えたとき、ホラーイベントにピンときたんです。しかも私は設定にこだわった物語を考えるのが得意で、趣味はホラー映画鑑賞。経験こそありませんでしたが、ホラージャンルでもきっとおもしろい脚本が書けるという自信がありました。また調べてみると関西にはホラーイベントのプロデュース団体がなく、話題性もあるだろうと考えたんです」。なるほど、いろんな条件がマッチしたんですね。
劇団員さんたちの反応はどうだったんでしょうか。「最初は驚かれましたが、私たちは演技を通じて人の心を動かしたいというエンターテイナーの集まりです。『ホラーもエンターテインメントだし、やるなら喜劇団らしく、思わず笑顔になれるようなイベントにしよう!』と方向性が決まりました」。喜劇を演じていた劇団員さんたちだからこそ、笑顔がキーワードになったんですね!

ホラーエンターテインメント集団として再出発した伯虎座は、ゲストハウスや商店街の空き店舗などを舞台に、全国各地ですでに20以上のイベントを開催。独創性と完成度の高さで、SNSを中心に瞬く間に話題となり、開催した店舗や地域からも「お客さんでにぎわった」とお喜びの声が続々と届きました。結成2年目にして、うわさを聞きつけた企業や団体から次々と依頼が舞い込む人気集団に。厳しい状況を乗り切り、地域活性化にまで貢献しているんですね!
ところで、ホラー仕様の内装や入口のポスターは、「笑顔になれる」というよりも「本格的に怖いお化け屋敷」そのものに見えるのですが……?探偵が疑問を投げかけると「ホラーイベントですし、もちろん『怖さありき』です」と大河さん。えっ、やっぱり怖いんですね!では、いったい何が来場者の笑顔につながるんですか?

いよいよ本題。大河さんが「笑顔になれるお化け屋敷」について語ってくれました。「私たちが目ざすのは、お客さまに『あー怖かった!あーおもしろかった!』と笑顔で盛り上がってもらうことなんです。そのために意識していることが2つ。1つは、没入感のある非日常な体験で爽快感を得てもらうこと。そしてもう1つは、コミュニケーションを楽しんでもらうことです」。

伯虎座のイベントは、来場者がストーリーの登場人物として参加するイマーシブ型(体験型)が中心。物語の当事者となり、ミッションに挑戦することで「非日常」に入り込んでもらう仕掛けになっているそうです。
また、コミュニケーションについては、「イベント中に役者がお客さまと対話し、楽しんでいただきます。子どもや女性、カップルなどお客さまに合わせてお声がけするので、同じ演目でもアドリブ満載の怖さやおもしろさがあるんですよ」と大河さん。
「さらに公演のあとには、役者全員でお客さまをお見送りします。そのときに感想を聞いたり、同じ回に参加していたお客さま同士が自然に会話をはじめたりとコミュニケーションが生まれて、『こういう交流があるから伯虎座のホラーイベントは楽しい』と言ってくれるお客さまも多いんですよ」と、うれしそうに教えてくれました。「お客さまの笑顔」にこだわり続けた結果、公演期間中に何度も足を運ぶ人や、遠方から駆けつけるファンも多いそうです。
ここで大河さんが「探偵さんたちも笑顔になれるホラーイベント、ぜひ体験してみてください」と言ってくれました。なんと、探偵たちのために準備してくださるなんて!ありがとうございます。お化け屋敷は少し怖いですが、お話を聞いたらなんだかワクワクしてきました。扉の外に移動し、会場の準備が整うのを待ちます。

待つこと10分、大河さんがニッコリと「さあ、恐怖と笑顔の世界へどうぞ」と扉の前へ誘ってくれました。さっきまでと同じ優しい表情なのに、なんだか怖い!会場の中へ足を踏み入れると、そこは先ほどまでとは世界が一変。辺りは薄暗く、わずかな灯りに照らされた壁や床の装飾が物々しい雰囲気をただよわせています。入って早々ですが、奥へ進むのが怖くてたまりません。しかしここは勇気を出して、いざ、体験……!
今回体験したストーリーは、呪いのピエロ人形が保管されているためスパワールドの従業員でもめったに入らないという、いわくつきのバックヤードに向かうというもの。バックヤードを特別に見学できるツアーに参加したところ、暗闇にまぎれてピエロが次々に人を襲いはじめ……。
詳しくは行った人だけのヒミツですが、途中で「そんなこと怖すぎて一人じゃできません!」と恐怖に震えるミッションが続いたり、ガイド役の役者さんとの会話にクスッと笑えたり。次々と迫る恐怖の中にも、楽しめる仕掛けがある新感覚のイベントでした。体験後は、「怖かった……けどおもしろかった!」と爽快感たっぷりで、本当に笑顔になれました!

一風変わった「笑顔になれるお化け屋敷」。大河さんのお話を聞いていると、来場者だけでなく開催地の方々も劇団員も、みんなが笑顔になれるものだと感じました。伯虎座は、最近では子ども向けのホラーイベントも実施しているそう。「子ども向けイベントでは、必ずハッピーエンドにつながるミッションを入れます。現実の世界で、怖さを乗り越えてヒーロー・ヒロインになる、そんな体験をしてもらいたいんです」と、大河さんは目を輝かせながら語ってくれました。
伯虎座は夏だけでなく、一年を通してさまざまな場所でホラーイベントを開催しています。ぜひ皆さんも、新感覚ホラーイベントを体験してみてはいかがでしょうか。(ただし、本当に怖いのでお気をつけて!)

- ※今回取材した「スパワールドお化け屋敷2022 残虐クラウンドール~本当は怖いスパワールド~」は2022年6月~7月に開催されたものです。
- ※伯虎座が開催するイベントについては、公式ホームページをご覧ください。
