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炎の探偵社

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小さなマッチには街の記憶が
詰まっている!神戸のマッチ博物館

2020/09/07
依頼内容

今回は、前回の記事で調査した「マッチの現状やマッチ会社の取り組み」に対する続編です。前回の記事もあわせてご覧ください。

前回、「最近マッチを使わなくなりましたが、マッチを作っていた会社はどうなっているのでしょうか」という調査依頼を受けて、神戸マッチ株式会社でマッチ業界の現状や今後の可能性のお話を聞いてきた探偵たち(前回の記事はこちら)。マッチについてさらに詳しく調査するため、今回は約3万点ものマッチ箱を収蔵しているというたるみ燐寸(マッチ)博物館に行ってみることにしました。

JR垂水(たるみ)駅のすぐ目の前、博物館は小さなビルの2階にあります。出迎えてくれたのは「たるみ燐寸博物館」の館長の小野さん。実はこの博物館、美容師や園芸職向けのハサミのケースを扱うシザーケース専門店「red alligator」の中にあり、小野さんはそのお店の店長でもあります。

「たるみ燐寸博物館」館長の小野さん
「たるみ燐寸博物館」館長の小野さん

でも、どうしてお店の中に博物館があるのでしょうか?とお聞きすると、小野さんはこう教えてくれました。「2013年にテレビ番組で『マッチ箱を集めている人』として取り上げられ、取材の中で『博物館を作ります』とつい言ってしまったんですよね。そこで、当時からやっていたこのお店の中に、自分で博物館を作ることにしたんです」。

小さなスペースにたくさんのマッチが展示されている「たるみ燐寸博物館」
小さなスペースにたくさんのマッチが展示されている「たるみ燐寸博物館」

さっそく博物館の中を見せていただくことにしました。マッチには、マッチ製造会社オリジナルの「商標マッチ」とお店や企業の宣伝用として作られた「広告マッチ」があり、たるみ燐寸博物館のコレクションは主に「広告マッチ」なんだそう。広告マッチは、マッチ箱に店名や企業のロゴなどが書かれたマッチのことで、1950〜1970年代の高度経済成長期にたくさん作られました。宣伝用なので、そのお店の特徴や雰囲気がデザインに色濃く表れています。中には、画家が小遣い稼ぎでイラストを描いたものもあり、有名な画家が携わったマッチ箱はコレクターから人気なんだそうです。

お店や企業の宣伝のために作られた広告マッチ
お店や企業の宣伝のために作られた広告マッチ
有名な画家(東郷青児)が描いたマッチ箱のイラスト
有名な画家(東郷青児)が描いたマッチ箱のイラスト

たるみ燐寸博物館がスタートした当時、博物館のコレクションは小野さんが自分で集めた5,000点ほどでしたが、それから約5年経った今、全国のコレクターから譲り受けたものも含めると3万点を超えました。その中から、日本各地の広告マッチ1,000点ほどをセレクトし博物館に常時展示しています。

博物館の中央には、「どうぞ、ご自由に触ってみてください」と言わんばかりに、たくさんのマッチ箱が無造作に置かれています。触ってみたいけど、いいのかな……と迷っていると、小野さんはこう声をかけてくれました。「どうぞ手に取ってみてください!マッチを知らない若い方にも触ってもらい、手触りやサイズ感、箱を振ったときの音なんかを知ってもらいたいんです。本音をいうと、汚れたらどうしよう、破れたらどうしようという心配もありますけどね(笑)」。そっと手に取って振ってみると、『カタカタ』と軽い音が心地良く感じられます。

気になるものがあれば自由に触ってもOK
気になるものがあれば自由に触ってもOK

一方、壁際では、マッチ箱を小さな絵画のように額縁に入れて展示していたり、さまざまなマッチ箱を色別にまとめた展示コーナーも。マッチ箱の色には業種ごとに傾向があり、赤いマッチ箱は中華料理屋、紫のマッチ箱は料亭などの高級飲食店が多いそうです。

マッチ箱はまるで芸術作品のよう
マッチ箱はまるで芸術作品のよう
色別にまとめられた展示。赤は中華料理屋が多く(写真左)、紫は料亭などの高級飲食店に多いそう(写真右)
色別にまとめられた展示。赤は中華料理屋が多く(写真左)、紫は料亭などの高級飲食店に多いそう(写真右)

ところで、なぜ小野さんはマッチを集めるようになったのでしょうか?集め始めたのは、小学校4年生の頃。当時流行っていたお菓子のおまけを集めたかったけれど、お菓子をあまり買ってもらえず、集めることができませんでした。それでも、とにかく何かを集めたい!と思った小野さんは、さまざまな絵柄のマッチ箱を集めることにしたそうです。当時はお風呂を沸かすのに使っていたり、お父さんがタバコを吸っていたりで、小野さんのまわりにはマッチ箱がたくさんありました。「シリーズものを揃えたい」という一心で、友だちにも家のマッチを持ってきてもらうようお願いしたこともあったそうです。

小学生のときに特にお気に入りだった「日本のあゆみシリーズ」
小学生のときに特にお気に入りだった「日本のあゆみシリーズ」

小野さんは、高校生になって喫茶店に行くようになると、さらにたくさんのマッチと出合えるようになりました。そんなある日、地元の喫茶店で、とっても個性的なイラストのマッチ箱を見つけ、なんとかして手に入れたいと思いました。でも、テーブルの上のマッチと灰皿は高校生が来たら片付けられてしまい、なかなか持ち帰れません。小野さんはあきらめきれず何度も店に通いましたが、「マッチを収集しているので僕にもください」と言って、ちょっと変な人だなと思われるのが恥ずかしくて、なかなか言い出せませんでした。最後は、友人に協力してもらい、ようやく手に入れることができたそうです。小野さんは「あれからたくさんのマッチと出合いましたが、いまでもこのマッチのイラストが一番好きですね」と、昔を懐かしみながら嬉しそうに話してくれました。

小野さんの一番お気に入りのマッチ。苦労してようやく手に入れました
小野さんの一番お気に入りのマッチ。苦労してようやく手に入れました

最近では、博物館を知った全国各地のコレクターからマッチを寄贈したいと申し出をいただくことも増えています。小野さんは、持ち込まれたマッチを引き取る際の独自のこだわりをこう教えてくれました。それは「ストーリーがあるマッチだけを譲り受ける」ということ。ただ引き取るだけではなくて、持ち主とマッチのことをじっくりとお聞きして、ストーリーごと貰い受けるようにしているそうです。持ち主の人となり、マッチ収集のきっかけ、それぞれのマッチに関する思い出など、お話をじっくりと聞くため数時間も話し込むこともあるんだとか。

さらに、小野さんは、そんなマッチのお店が今はどうなっているのかを確かめるため、マッチに書かれた情報を頼りに現地に行ってみることもあります。だけど、あったはずのお店が跡形もなく無くなっていて、街並みもすっかり変わってしまっていることが多いのだとか。そんな時、街の様子が時代とともに変化していることを実感するそうです。

「ストーリーがあるマッチだけを集める」というこだわりについて話す小野さん
「ストーリーがあるマッチだけを集める」というこだわりについて話す小野さん

最後に、小野さんはこう話してくれました。「僕は、そのお店の個性やこだわりが詰まった広告マッチのデザインのみならず、持ち主から聞いたストーリーをあわせて『マッチが持つ記憶』と捉えているんです。マッチを手に取ると、当時のお店の様子だけでなく、お店のあった街の景色も目に浮かびます。当館に展示されている全国から集まったマッチの数々には、たくさんの街の記憶が詰まっているんです」。

確かに、探偵たちも展示されているレトロなマッチを手に取ると、なんだか1970年代ごろの神戸の街のイメージがなんとなく思い浮かんできました。少しだけ当時の街の空気に触れることができて、ちょっと懐かしいような新鮮なような感じがした探偵たちでした。

マッチを通じて、当時の街の様子を思い起こすことができるかも
マッチを通じて、当時の街の様子を思い起こすことができるかも

前回の神戸マッチと、今回のたるみ燐寸博物館。2回にわたってマッチに関する記事をお届けしましたが、いかがでしたか?時代とともに使う場面が少なくなってきたマッチの未来、そして過去。いろいろなストーリーがありました。皆さんも、今度の休日にはたるみ燐寸博物館で懐かしい街のマッチを探したり、「hibi 10 MINUTES AROMA」でいい香りに癒されるなどして、マッチの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

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