競技かるたブームは世界へ!
かるたを広めた日本人女性とは?
2019/12/16

近江神宮で競技かるたの世界大会が開催されるそうです。海外でも、かるたは人気なのでしょうか?探偵さん調べてきてください。
競技かるたとは、百人一首の100枚の札のうち50枚を使い、自陣と敵陣に25枚ずつ札を分けて並べ、読み手が上の句を読み上げたら、その下の句の札を取り合う競技。高度な集中力と瞬発力が必要とされ、取った瞬間に札が舞う様子から「畳の上の格闘技」とも言われています。探偵たちが調べてみると、滋賀県大津市の近江神宮・近江勧学館で、競技かるたの世界大会「第2回おおつ光ルくん杯競技かるた世界大会」が開催されることがわかりました。

世界大会の舞台となる近江神宮は、小倉百人一首の巻頭歌を詠み、かるたの祖神としても尊敬を集める天智天皇が祀られていることから「かるたの聖地」と呼ばれています。選手にとっても、競技かるた名人位・クイーン位決定戦、全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会といった競技かるたの頂上決戦が行われている憧れの場所なんだそうです。「競技かるたの人気の高まりを受けて、2018年に第1回世界大会が開催されました。今年は第2回が開催されるんですよ」と紹介してくれたのは、大津市観光振興課の喜田さんと佐藤さんです。「今年はフランスや韓国、中国、インドネシアなど、あわせて7つの国・地域の代表チームに加え、海外在住日本人による特別チームと、第3回おおつ光ルくん杯ジュニアカップ(日本の中学生が参加する競技かるた大会)の上位2チームも加わって10チームが集まりました」。

「明日の本番に向けて強化合宿をおこなっている最中なんですよ」と喜田さんに案内され大広間に入ってみると、選手たちによって本番さながらの激しい戦いが繰り広げられていました。

ここで、喜田さんは「ここまで競技かるたが海外に普及したのは、実は一人の日本人女性のおかげなんです」と、海外でのかるた普及活動に取り組むストーン睦美さんを紹介してくれました。彼女は元々日本で競技かるたの選手として活躍していましたが、約20年前、結婚を機に米国人のパートナーの都合でアメリカへ。しかし、競技かるたへの情熱は冷めず、海外で競技かるたを紹介する活動を始めます。イギリス、タイなどパートナーの赴任地が変わるたびに現地の方に「かるたをしませんか?」と声をかけ、各地で「かるた会」を立ち上げました。

ストーンさんは、当時の様子をこう話します。「友人に言わせると『普及ではなく布教だ』なんて笑われましたが、絶対おもしろさをわかってくれるはずと信じて活動を続けました」。そんな地道な活動が実を結び、十数年の間に各国で競技人口が増えていったそうです。そんな中、2011年に競技かるたの世界を描いた漫画「ちはやふる」がアニメ化され、50ヵ国以上で配信されたことによって、競技かるたはさらに人気を集めました。ストーンさんは2018年の第1回世界大会の開催にあたって、各国のかるた会に所属する選手を取りまとめるという大きな役割を担いました。「世界大会が開催されるなんて、20年前では考えられないこと」とストーンさんは感無量の様子です。

しかし、日本人でも覚えるのが難しい句を、海外選手が覚えたり、聞き取ったりできるのでしょうか?大会運営を担う佐藤さんは、こう教えてくれました。「競技かるたは、1文字目の子音を聞き分けることが重要。例えば、『ちはやぶる』の場合は、1文字目である『ち(chi)』の『ch』にあたる部分です。海外選手は、『ch』と『t』のような日本人には聞き取りにくい微妙な違いを聞き分け、どの札が読まれたか日本の選手よりも早く判断することができます」。なるほど、海外選手が有利なこともあるんですね。

そして、ついに試合当日。今年はいったいどのチームが優勝するのでしょうか。まずは10チーム全てが参加する予選・順位決定戦が実施され、その後、世界王者の座を決めるための上位4チームによる決勝戦・3位決定戦が行われました。
試合中は、練習とは違った緊張感が張り詰め、激しい戦いが繰り広げられます。また、選手たちはチームを越えて応援しあったり、健闘をたたえ合ったり、礼儀やマナーを重んじるスポーツマンシップを感じるシーンも多数。海外チームのみなさんも、まるでスポーツの試合のように、母国語ではなく日本語で「集中!」「いけるよ!」などの掛け声で、試合に臨む選手たちを応援していました。
大会開始から9時間が経過した19時過ぎ、世界大会の全試合が終了しました。前回覇者のフランスチームを破り見事頂点を極めたのは、愛知県の中学生チーム「南山女子」でした!さっそく感想を聞いてみると……「海外選手もすごくって、勝ててとても嬉しかったです。フレンドリーな人たちが多く、大会中もよく話しかけてくれて楽しかったです」と話してくれました。一方、フランスチームは敗戦後に涙を流す場面も見られましたが、「去年は優勝だったので悔しい気持ちもありますが、それ以上にやりきった気持ちが大きいです」と充実した表情を見せてくれました。

最後に、試合を見届けたストーンさんはこう語ります。「海外選手は年々強くなってきています。その理由の一つは、海外でも競技かるたの大会が行われているから。今後、そのような大会に日本人が出てくれたら、海外選手の成長にもっとつながるはずです。互いに切磋琢磨してかるたを盛り上げてほしいですね」。一人の日本人女性の情熱がきっかけとなり、競技かるたを愛する仲間たちの輪は、日本国内のみならず世界各地にどんどんと広がりつつあります。また、競技かるたには記憶力や瞬発力、反射神経が求められますが、老若男女だれでも楽しめる点も魅力です。お正月には、みなさんもご家族や友達とかるたで楽しく遊んだり、各地のかるた会で競技かるたにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

