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炎の探偵社

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深~い歴史を持つ
奈良のご当地鍋「飛鳥鍋」って?

2019/11/05
依頼内容

奈良に、牛乳を使った「飛鳥鍋」というご当地鍋があると聞きましたが、どんな鍋なのでしょうか?探偵さん、調べてきてください。

秋も深まり、鍋のおいしい季節になってきましたね。依頼を受け、探偵たちが調べてみたところ、飛鳥鍋は奈良に古くから伝わる郷土料理のようです。さらに調査を進めていくと、高市郡明日香村で飛鳥鍋を看板メニューとして提供している「めんどや」にたどり着きました。全国各地からお客さんが訪れるめんどやは、創業以来約100年続く老舗の食事処です。めんどやの名前の由来は、お店を始めた店主が「面倒見が良かったから」だとか。さっそくめんどやへ向かい、6代目店主の北海(きたみ)希美子さんにお話を聞かせてもらいました。

「飛鳥鍋」の大きな文字。まさに看板メニュー!
「飛鳥鍋」の大きな文字。まさに看板メニュー!

飛鳥鍋を注文して待っていると、大きな器に盛られた具材と白いスープが入った鍋が運ばれてきました。野菜や鶏肉を煮込んでいくうちに、いい香りがただよってきます。北海さんによると、めんどやの飛鳥鍋は牛乳と複数の出汁をブレンドした特製スープでつくられているのだとか。「具材も地鶏と旬の地場野菜を使っているので、この鍋だけで奈良の味をまるごと召し上がっていただけますよ」とのこと。さっそく一口食べてみると、牛乳のコク深さと出汁のハーモニーが絶妙です。実は牛乳と鶏肉が苦手な北海さんですが、自分でも食べられるようにと改良を重ねたことで、牛乳や鶏肉のくさみを感じさせない味になりました。

牛乳のコクがおいしさの秘密
牛乳のコクがおいしさの秘密

お腹が満たされたところで、飛鳥鍋の名前の由来を聞いてみました。北海さんは「今から1,300年前の飛鳥時代の頃からこの地域で食べられていたので、『飛鳥鍋』と呼ばれているんですよ」と胸をはって答えます。飛鳥鍋にそんなに長い歴史があるなんてびっくり!驚く探偵たちに、北海さんが「飛鳥鍋や牛乳の歴史のことなら、うちの常連の鉃田(てつだ)さんが詳しいので、色々教えてもらうといいですよ」と紹介してくれました。探偵たちは飛鳥鍋のルーツを探るべく、鉃田さんのもとへと向かいます。

飛鳥鍋をつくりながら話をする北海さん
飛鳥鍋をつくりながら話をする北海さん

探偵たちは、観光ボランティアを行ったり奈良の歴史講座を開くなどの活動をしている「奈良まほろばソムリエの会」の鉃田憲男さんにお話をうかがいました。鉃田さんはこの会の専務理事で、これまでに奈良の魅力を広く発信してきたことから、2011年に奈良県知事表彰を受けたほどの奈良通。「奈良に関することならおまかせ!」と奈良愛にあふれた言葉が頼もしい限りです。

「私も飛鳥鍋は大好物です!」と語る鉃田さん
「私も飛鳥鍋は大好物です!」と語る鉃田さん

まずは、牛乳についての質問です。飛鳥鍋は1,300年以上前からあるとのことですが、当時から牛乳はよく飲まれていたのでしょうか。鉃田さんは、「我が国で一般的に牛乳が飲まれるようになったのは、江戸時代の初期から。ところが、奈良県南部を中心とした飛鳥地域では、飛鳥時代の頃から牛乳が飲まれていたんですよ」と教えてくれました。

奈良まほろばソムリエの会は観光ボランティアガイドなどの活動をしています
奈良まほろばソムリエの会は観光ボランティアガイドなどの活動をしています

さらに鉃田さんは、『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』という書物に、牛乳に関する記述があると教えてくれました。同書では、7世紀半ばの飛鳥時代、中国大陸から牛乳が伝わり、渡来人の子孫である善那使主(ぜんなのおみ)が孝徳天皇へ献上したところ大変喜ばれたとされています。これが日本における牛乳飲用のはじまりになるのだとか。牛乳を薬として飲むと健康にいいと知った孝徳天皇は、善那使主に「和薬使主(やまとのくすしのおみ)」という姓(かばね)と「乳長上(ちちのおさのかみ)」という職を授け、乳しぼりや牛乳の加工を命じたそうです。

「当時、牛乳は薬としての役割を持っていたんです」と鉃田さん
「当時、牛乳は薬としての役割を持っていたんです」と鉃田さん

当初、牛乳はとても貴重なもので皇族や貴族しか口にできませんでしたが、次第に他の階級の人々にも広まっていきました。そして、飛鳥の里では、鶏肉を牛乳で煮込んだ「鶏肉の牛乳煮」が誕生。近くの多武峰(とうのみね)で厳しい修行に励んでいた僧たちが苦行の合間に山を下りた際、栄養を摂るためにこの料理を食べていたそうです。

鉃田さんは、この「鶏肉の牛乳煮」が時代とともに浸透し、鶏肉と牛乳以外にも野菜などの具材が追加されるなどの進化を遂げて「飛鳥鍋」として定着したのではないかと考えています。いまでもその進化は続いており、めんどやさんの飛鳥鍋には、なんとブロッコリー等の西洋野菜も加わっています。

鶏肉の牛乳煮が飛鳥鍋になったんだね
鶏肉の牛乳煮が飛鳥鍋になったんだね

1,300年もの長い間飛鳥の人々に愛され、進化を続けてきた、元祖・ご当地鍋「飛鳥鍋」。飛鳥寺や石舞台古墳などの名所を巡って飛鳥文化にたっぷりと触れてからいただいた飛鳥鍋は、なんだか一層味わい深いね…と、お腹いっぱいになりつつもその歴史に感じ入る探偵たちでした。皆さんも、この冬は明日香村に足を運んで、体の芯から温まる飛鳥鍋を味わってみてはいかがでしょうか。

お腹いっぱい!ごちそうさまでした
お腹いっぱい!ごちそうさまでした

※めんどやの営業時間は、11時からその日の食材が切れるまで。お鍋を注文する場合と17時以降の入店は予約が必要です。

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