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本場ドイツを超えた!?
バウムクーヘン大国・ニッポン

2019/10/21
依頼内容

しっとりとしておいしいバウムクーヘンが大好きです。ドイツ発祥のお菓子と聞きましたが、いつから日本にあるのでしょうか?

バウムクーヘンは、「木のお菓子」という意味を持つドイツ生まれの焼き菓子。日本では、スーパーやコンビニでも手軽に購入できるほど身近なものです。探偵たちが調べたところ、日本初のバウムクーヘンをつくったのは、株式会社ユーハイムの創始者であるドイツの菓子職人、カール・ユーハイム氏と判明。さっそく探偵たちは、バウムクーヘンの歴史やおいしさの秘密を聞くために、神戸・元町にあるユーハイムの本店へと向かいました。

形も大きさもさまざまなバウムクーヘン。どれもおいしそう
形も大きさもさまざまなバウムクーヘン。どれもおいしそう

店内にはおいしそうなバウムクーヘンがズラリ。ショーケースの商品を眺めていた探偵たちに「バウムクーヘンには、形もサイズもいろいろあるんですよ」と話しかけてくれたのは、広報室係長の藤本さんです。

ユーハイムの本店がある神戸出身の藤本さん
ユーハイムの本店がある神戸出身の藤本さん

まずはバウムクーヘンの歴史についてお聞きしたところ、藤本さんから「カール・ユーハイムは、日本で最初にバウムクーヘンをつくりました。しかし、そのときつくられたバウムクーヘンは、実は『バウムクーヘン』という名ではなかったんです」という謎めいた言葉が!一体どういうことなのでしょう?

バウムクーヘンじゃなかったってどういうこと?
バウムクーヘンじゃなかったってどういうこと?

元々ドイツの菓子職人だったカール氏は、1908年に当時ドイツの租借地だった中国・青島(チンタオ)で喫茶店に就職し、その店を譲り受け独立しました。しかし、1914年には第一次世界大戦が勃発し、カール氏は日本軍の捕虜として日本に連行され、収容所生活を余儀なくされました。その後、1919年に広島で行われたドイツ物産展示会に参加したカール氏は、ドイツの伝統菓子としてバウムクーヘンを出品。これが日本におけるバウムクーヘンの歴史の始まりだとされています。ちょうどいまから100年前のことですね。

ユーハイムの創始者、カール・ユーハイム氏
ユーハイムの創始者、カール・ユーハイム氏

「このとき、カールは『ピラミッドケーキ』という名前でバウムクーヘンを出品したんですよ」と藤本さん。えっ、ピラミッド!?もしや日本初のバウムクーヘンはピラミッドの形をしていたのでしょうか?「いいえ、違います(笑)。ドイツ語の『バウムクーヘン(木のお菓子)』という名前がとっつきづらいことから、別の名前にしたんです。カールがつくったバウムクーヘンは、木の幹のように上にいくにつれて細くなっていく形状だったため、それを日本人でもわかるピラミッドに見立てたそうです」と、藤本さんは種明かしをしてくれました。

日本で最初に出品されたバウムクーヘンはこんな形
日本で最初に出品されたバウムクーヘンはこんな形

このとき出品されたピラミッドケーキがとてもおいしいと日本人に好評だったため、カール氏は妻子を呼び寄せ、横浜で店を開くことにしました。ところが、開業直後に関東大震災によって店が焼失してしまったため、神戸に移転して新しい店舗を構えました。

写真左:三宮に構えた開店当初の神戸店、写真右:後方の棚に並んでいるのが「ピラミッドケーキ」
写真左:三宮に構えた開店当初の神戸店、写真右:後方の棚に並んでいるのが「ピラミッドケーキ」

その後、商品名を「ピラミッドケーキ」から「バウムクーヘン」に変えたのは、1960年代に入ってから。ユーハイムの河本現会長が本場ドイツに視察留学した際、バウムクーヘンという名が一般的だと知り、日本でもドイツの呼び名に合わせることにしたそうです。また、従来は量り売りしていたのを、サイズを均一にして箱に入れた状態で販売したところ、お客さまから贈答用に買い求められることが増えました。さらに、「断面が樹木の年輪のように見えて長寿や繁栄につながって縁起がいいから、結婚式の引き出物として使用したい」とお客さまからの要望があり、バウムクーヘンに「寿」と書かれたビスケットをつけて出したところ大変好評で、以来、お祝いなどに広く用いられるようになったそうです。

おめでたい日にぴったりの「寿」と書かれたビスケットつきバウムクーヘン
おめでたい日にぴったりの「寿」と書かれたビスケットつきバウムクーヘン

次に、バウムクーヘンの要である美しい年輪をつくるコツをお聞きしたところ、実践を積んで根気よく技術と感覚を磨いていくしかないとのこと。ユーハイムでは、ある程度経験を積んだ職人は、本場ドイツで国家資格・製菓マイスターを取得することになっています。そして帰国後、マイスターの資格を得た職人は学んだことを後進に伝えるために指導にあたるそうです。

美しい年輪に焼き上げるのは至難のわざです
美しい年輪に焼き上げるのは至難のわざです

ここで、藤本さんは「バウムクーヘンをおいしく食べるコツをご紹介します!」と、店頭のカウンターに案内してくれました。店頭では、焼きたてのバウムクーヘンをナイフですくうようにして切っています。こんな切り方があったなんて、と驚いている探偵たちに、藤本さんは「これは『そぎ切り』という方法で、本場ドイツではこうやってカットしています」と教えてくれました。そぎ切りされたバウムクーヘンを口に入れると、年輪の層がほろりとほぐれてふんわり感としっとり感がアップ。バターの香りが口いっぱいに広がります。切り方を変えるだけで、食感が全然違います。

ナイフですくうようにカットする「そぎ切り」
ナイフですくうようにカットする「そぎ切り」

「実は、ドイツでバウムクーヘンを食べるのは、クリスマスや結婚式などの特別なときだけ。一方、日本では、洋菓子店はもちろんスーパーやコンビニでも売られており、贈答用だけでなく普段づかいのお菓子としても親しまれています。また、各地の洋菓子店では、サイズや形、味等に工夫をこらしたさまざまなバウムクーヘンを製造しており、ドイツから来日した人たちもびっくりするほどです」と、藤本さんは誇らしげに語ります。日本は本場ドイツをしのぐバウムクーヘン大国だったんですね!

「ユーハイムを訪問するドイツ人マイスターにも驚かれます」と話す藤本さん
「ユーハイムを訪問するドイツ人マイスターにも驚かれます」と話す藤本さん

カールが1919年に日本ではじめてバウムクーヘンを焼いてから、今年でちょうど100周年。ユーハイムではそれを記念して、47都道府県の約200社がイチ押しバウムクーヘンを出品する「バウムクーヘン博覧会」を全国の百貨店で開催しています。バウムクーヘンだけでこれだけたくさんの会社が集まるなんて、すごいです!

色も形もさまざまなバウムクーヘンが集結
色も形もさまざまなバウムクーヘンが集結

100年前にドイツからやってきたバウムクーヘンは、たくさんの人に親しまれながら日本独自のさまざまな進化を経て、日本人にとってすっかりおなじみのお菓子となりました。これからも、その年輪のようにおいしさの輪がどんどん広がればいいなと思った探偵たちでした。

みなさんも「そぎ切り」で味わってみてね
みなさんも「そぎ切り」で味わってみてね
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