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幻の「神戸人形」ってどんな人形?

2018/10/01
依頼内容

その昔神戸で生まれ、その後途絶えてしまった「神戸人形」が最近になって復活したと聞きました。どんな人形なのか全然知らないので、調べてきてください。

皆さん、神戸人形というものをご存知でしょうか。明治から昭和初期にかけてつくられた、神戸っ子だけでなく神戸を訪れる外国人観光客に愛され、世界各地に渡った人形のことです。名前の響きから、おしゃれな人形を想像してワクワクする探偵たち。調べたところ、日本で唯一の神戸人形作家・吉田さんがいるとわかり、さっそく東灘区の工房「ウズモリ屋」を訪ねてみました。

神戸人形の工房「ウズモリ屋」に到着!
神戸人形の工房「ウズモリ屋」に到着!

工房をのぞくと何か作業をしている方がいて、かたわらには人形と思われるものがあります。もしかしてこれが神戸人形?おしゃれというよりユーモラスな見た目で、想像していたのとはずいぶん違う気が……。すると、「変わった風貌でしょう。これが神戸人形なんですよ」と答えてくれた人がいます。それが吉田さんでした。

ちょっぴり目が飛び出ています
ちょっぴり目が飛び出ています

吉田さんに促されて人形の台座についているつまみを回してみると、人形がスイカにかぶりつきます。ほかにも、お銚子を傾けて盃にお酒を注ぐ人形など。その動きは、愛きょう抜群!

人間味あるコミカルな動きが魅力
人間味あるコミカルな動きが魅力

ついつい何回も動かして遊んでみたくなるのですが、神戸人形の由来を吉田さんに聞いてみることにしました。神戸人形が最初につくられたのは、明治中期のこと。現在の神戸市長田区で商店を営んでいた「長田の春さん」と呼ばれた男性が、ろくろ首や三つ目のからくり人形を手づくりしたのがルーツとされています。「腕が動いたり、目玉が飛び出したり、首をふったりするユニークなからくりが魅力の郷土玩具なんですよ」と吉田さんが教えてくれました。

当初は柘植(つげ)などの材料が使用され、木肌の美しさを強調した作品が多かったそうです。頭や腕が糸でつなげられていて、つまみを触ると動くのが特徴。琵琶や三味線を弾く人形やポンプで水をくむものなど、明治・大正時代の風俗・風習を表現したものが数多くありました。また、当時は怪談を題材にした芝居なども流行していたようで、「お化け」を題材にしたものも多く、「お化け人形」と呼ばれていたこともあるそう。

スゴイ形相で鯛をさばく!
スゴイ形相で鯛をさばく!

中にはなぜか黒く塗られた人形もあります。その謎が気になった探偵たちは、神戸人形を約600体も収集・保管している「日本玩具博物館」に問い合わせてみました。学芸員の尾崎さんによると、明治末から大正にかけて活躍した出崎房松という作家が神戸人形を黒く塗りはじめたとのこと。「彼が人形を黒く塗った理由はよくわかっていませんが、黒い神戸人形は欧米からの観光客に評判がよく、多くの人形が日本土産になりました。奇抜な動きにくわえて、黒が漆器の色を思わせることにも注目が集まったようです」と尾崎さんは教えてくれました。

海外の人に人気の黒く塗られた人形
海外の人に人気の黒く塗られた人形

神戸人形の制作は戦後一時途絶えましたが、1981年の神戸ポートピア博覧会で再び脚光を浴びたことで、三宮や元町に製造・販売を手がける店舗ができたそうです。しかし、1995年の阪神淡路大震災以降、再び制作が途絶えてしまいます。

日本玩具博物館に展示されている出崎房松の神戸人形
日本玩具博物館に展示されている出崎房松の神戸人形

吉田さんは、神戸人形の存在を幼いころから知っていたと言います。手先が器用で、プラモデルづくりやプロレスのマスクづくりにハマっていた吉田少年。元町にあった玩具店へプラモデルを買いに行くと、奥で店のご主人が神戸人形を組み立てているのがみえました。

「変な人形だな、と。動きも酒を飲んでいるなどかわいくないのに、神戸人形っていう美しい響きと、実物のギャップに興味をそそられたんですよね」と吉田さん。ご両親にねだっても買ってもらえなったそうですが、「どういうしかけで腕や首が動いているんだろうと気になって」、ずっとその店のショーウィンドウを眺めていたそうです。

神戸人形愛を語る吉田さん
神戸人形愛を語る吉田さん

大学時代には、たまたま入った人形劇部で器用さが認められ、プロの人形劇団で人形をつくるアルバイトをしていたそうです。大学卒業後は一般の企業に就職しましたが、人形劇への思いが高まり人形劇団に入団。その後人形劇美術工房として独立します。

時を同じくして阪神淡路大震災が発生。「震災で神戸の懐かしい風景がたくさん失われたうえに、さらに神戸人形もなくなり、今まであったものがなくなっていくことに対して寂しい思いを長く抱えていました」。そして震災から20年あまりが経過したころ、奥さんから「せっかく人形美術家になったんだから、神戸人形を自分でつくってみたら?」と言われたそうです。「人形制作を仕事にしておきながら、なぜか自分で手がけようという発想に結びついていなかったんですが、その言葉を聞いて目からウロコでした。よし、やってみようと!」

明治期の作品「酒呑み」を再現
明治期の作品「酒呑み」を再現

とはいえ、一度途絶えてしまったものを再現するのは難しかったのでは?「それが、こんな感じかな……と記憶だけを頼りにつくってみたら、うまくいったんです!」えっ、そうなんですか!さすが人形のプロですね。

試作した作品の寸法を書き留めたメモ
試作した作品の寸法を書き留めたメモ

最初は、伝統的なモチーフにのっとった作品を制作していましたが、「お化け箱」のように日本玩具博物館から復刻依頼を受けて制作した作品もあります。

「お化け箱」はいろんなところから手足がニョキッ!
「お化け箱」はいろんなところから手足がニョキッ!

やがてオリジナリティを加えたものもつくりはじめました。「料理」という作品は、お皿の上にご注目!台座の横を動かすと、お皿の上がステーキ、エビフライ、オムライス、骨つき肉と早変わりするサマは、見ているだけでなんだか楽しい気持ちになってきます。

カタカタと料理が早変わり!
カタカタと料理が早変わり!

「バンド」は、つまみはひとつしかないのに、人形それぞれが別の動きをするのが圧巻!

コミカルな動きが楽しい「バンド」
コミカルな動きが楽しい「バンド」

ウズモリ屋のホームページでは、吉田さんが制作した神戸人形を販売しています。注文時に神戸人形愛好家から、「頑張ってください!」「待っていました!」などのあたたかいメッセージが届けられます。中には、「震災で壊れたきり、そのままにしておいた神戸人形を修理できないか」と問い合わせる方も。「震災で途絶えたものを復活させたり壊れたものを直すことで、自分なりに震災復興のつもりでやっています」と吉田さんは語ります。

同じく人形製作をする奥さんと
同じく人形製作をする奥さんと

「時代の経過とともに、街も人も流行もどんどん変わっていくものですが、神戸人形は神戸の人にとって変わらないものとして、記憶に残ってくれればいいな」と話す吉田さん。今回は、神戸人形の遊び心あふれる動きにクスリと笑わされ、吉田さんの思いにあたたかな気持ちにさせられた探偵たちでした。皆さんも神戸人形を見かけたときは、ぜひ手に取ってみてくださいね。

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