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炎の探偵社

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「能勢菊炭」で地域を盛り上げたい!
未来へ向けたアツい想い

2018/10/15
依頼内容

茶道でも使用される菊炭という高級な木炭が大阪にあるそうですが、どんな炭なのでしょうか?

木炭は冬に暖をとったり調理に使ったりと、生活に欠かせない燃料として重宝されてきました。炭といえば備長炭などはよく聞きますが、菊炭(きくすみ)というのは聞いたことがありません。いくらなんでも菊の花を炭にしたってことはないでしょうが、どんな炭なの?気になってしかたない探偵たちは、菊炭をつくる炭焼き師さんの工房「能勢さとやま創造館」を訪ねてみることにしました。

能勢さとやま創造館へやってきました!
能勢さとやま創造館へやってきました!

「能勢さとやま創造館」に入ると、特徴的な切り口の木炭がズラリ!!まるで花びらを広げた菊の花のようで、工芸品かアートを見ているみたい。どうやらこれが菊炭のようですね。室内には、心がほっこりと和む炭の香りが漂っていて癒やされます。

菊の花が咲いているみたいな炭
菊の花が咲いているみたいな炭
館の奥はギャラリーになっています
館の奥はギャラリーになっています

ようこそ!と探偵たちを出迎えてくれたのが、炭焼き師の小谷さん。小谷さんは炭焼き仕事に携わって、約30年。菊炭について小谷さんにお聞きしてみました。

この道30年の炭焼き師である小谷さんとマイマイ姉妹
この道30年の炭焼き師である小谷さんとマイマイ姉妹

菊炭はクヌギを使ってつくられる木炭で、古くより鉱物の精錬用に使われていましたが、次第に「茶」にも用いられるようになりました。「安土桃山時代になると、千利休が好んで使っていたんですよ」と小谷さん。あの千利休も使っていたとは驚きです。

菊の割れ目から赤い炎が見えて趣が感じられます
菊の割れ目から赤い炎が見えて趣が感じられます

千利休より前の時代、茶道における所作の一つである「炭点前(すみてまえ)」は客前で行わない仕事でした。炭点前とは、茶釜の湯の温度を上げるために炉に炭をつぎ足す手順のことで、それまでは裏方がやるものでした。それをあえて千利休は、茶席で自ら行ったのです。「千利休は美や風情を大切にして、とことん追求した人。菊炭に火をつけると、吸い込まれそうな黒い色をした菊割れ模様が赤く燃え上がり、やがて姿を崩すことなく真っ白に燃え尽きる。そんなわびさびを、客人と愛でたかったのではないでしょうか」と小谷さんは考えています。

最後まで菊の形を保ったまま白くなっていきます
最後まで菊の形を保ったまま白くなっていきます

菊炭は茶席に欠かせない炭として今も珍重されており、小谷さんの工房からは高級炭として京都の茶道家元へ納品されています。寒い季節に使う炭は、暖を取りながら使うため大きめサイズになっています。一方、暑い季節は小さめサイズと、季節によってお渡しの品が違うのだそう。

左が夏用で、右が冬用
左が夏用で、右が冬用

小谷さんが炭焼き師の道を歩む決意をしたのは、能勢町の職員として町の活性化に取り組んでいたころのことでした。ふと周りを見たときに、伝統の技法を受け継ぎ、良質な菊炭をつくる職人がどんどん減っている中、父親が能勢の伝統を守るために、ずっと菊炭を焼き続けていることに気づきました。そこで小谷さんは伝統を途絶えさせないためにも自分が跡を継ごうと、お父さんのもとで炭焼きの修業をはじめます。それから1年ほど後に、残念ながらお父さんはこの世を去ってしまいました。小谷さんの決断が遅ければ、能勢の炭焼きは継承されていなかったかもしれません。

美しい菊炭はオブジェとしても人気
美しい菊炭はオブジェとしても人気

菊炭と呼べる炭には美しい菊割れ模様があることに加え、火つきや火持ちのよさ、しまりがあること(簡単にはくずれない、重量がある)、樹皮が密着していることなど、いくつもの条件があります。これらの条件がそろった炭は、どうやってつくられているのでしょうか?

どうやって菊炭をつくっているのかな〜
どうやって菊炭をつくっているのかな〜

菊炭づくりの作業が始まるのは、毎年11月ごろから。伐採後に乾燥させたクヌギを、窯に入れて6日間蒸し焼きにします。このとき、自然と炭化するよう温度調整しながら窯の火を調整し、最後は煙突もふさいで完全に密閉して、6日間ほど冷ましたらようやく窯出しです。この作業を、5月ごろまで繰り返します。

左上:クヌギを伐採、右上:窯に原木を入れる作業、左下:火がつくと、通気孔を残して窯の口を閉じ温度を調整、右下:煙が無色になったら完全に密閉
左上:クヌギを伐採、右上:窯に原木を入れる作業、左下:火がつくと、通気孔を残して窯の口を閉じ温度を調整、右下:煙が無色になったら完全に密閉

菊炭づくりには熟練の技術と勘、経験が要求されます。「伐採した木の状態は、気候などにより年ごとに異なります。そのため、クヌギの原木から最適な部分を選定したり、温度の上がり方や湿気の入り方の違いからくる微妙な操作が難しく、最初のころは収量が全然上がりませんでした」と小谷さんはその苦労を語ってくれました。お父さんが亡くなってからは、一人で試行錯誤を重ねてきたそうです。

大きなドーム状の窯での作業は体力勝負!
大きなドーム状の窯での作業は体力勝負!

古くから大阪の北部・能勢地域一帯でつくられてきた菊炭は、池田から各地に出荷されていたことから、池田炭と呼ばれていました。しかし、小谷さんは自分のつくる炭を「能勢菊炭」と名づけて、商標登録して能勢の活性化につなげようとしています。その理由を小谷さんは「グローバルな時代だからこそ、いいものが残っていることはその地域の誇りになります。生産地の名をつけることで、地元の理解と愛着を深められると考えました」と教えてくれました。

能勢菊炭について、アツく語る小谷さん
能勢菊炭について、アツく語る小谷さん

また、小谷さんは菊炭の原材料となるクヌギの植樹も行っています。さらに、ファンを増やしていきたいからと、菊炭で焙煎したコーヒーを楽しむイベントを開催したり、能勢菊炭を使った石けんの開発にも取り組んでいます。石けんには日本酒も配合されていて、保湿効果がありながらさっぱりとした洗い上がりで好評です。

菊炭でコーヒー豆を焙煎
菊炭でコーヒー豆を焙煎
能勢菊炭を使った石けんも人気
能勢菊炭を使った石けんも人気

小谷さんは現在、若手スタッフ2人とともに能勢菊炭づくりに取り組んでいます。「友だちと一緒にバーベキューをするときに、肉にこだわる人はかなりいます。今後は炭にもこだわって、『菊炭っていいんやで!』っていう人が巷で増えてくるとうれしいですね。そのために、もっと多くの人に知ってもらえるよう、もっと能勢菊炭について発信していきたい」と語ります。このアツい想いが、能勢菊炭のようにいつまでも燃え続けていられますようにと祈りながら、美しい里山を後にした探偵たちでした。

菊炭のわびさびを楽しんでみてね!
菊炭のわびさびを楽しんでみてね!
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