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神戸市民だけが知っている!?
地元で愛される神戸ノートとは?

2018/05/21
依頼内容

神戸では、「神戸ノート」と呼ばれるノートを使って多くの小学生が勉強をしていると聞きました。どんなノートなのでしょうか?

「神戸ノート」は、神戸市内で小学校時代を過ごす子どもはみんな使っているという話ですが、大阪で育った探偵たちは今まで聞いたことも使ったこともありません!神戸にしかないの?ほかのノートは使わないの?謎は深まるばかりです。

神戸在住の小学生は神戸ノートで勉強するのが一般的
神戸在住の小学生は神戸ノートで勉強するのが一般的

調べてみると、神戸ノートを制作しているのは神戸市・長田区に本社をかまえる「関西ノート株式会社」だとわかりました。さっそく探偵たちは、詳しく話を聞くために潜入調査を開始します。

JR鷹取駅の住宅街に本社があります
JR鷹取駅の住宅街に本社があります

関西ノートは創業90年を超える老舗で、紙製品全般を扱っています。「現在のラインアップは、21種類に及びます。小学校の教科と学年によって異なった種類のノートが発売されているんですよ」と教えてくれたのは、相談役の大河さんです。

生まれも育ちも神戸の大河さんとマイマイ姉妹
生まれも育ちも神戸の大河さんとマイマイ姉妹

まずは、敷地内の製本工場を案内していただきました。見たこともないぐらい大きな紙に、内側のノート部分と、表紙がどんどん印刷されています。その後さまざまな機械を通っていくうちに、よく見るノートの形になっていきます。こうして裁断・製本されて、神戸ノートになるんですね!

工場内を調査する探偵たち。ノートになる前の表紙だ~
工場内を調査する探偵たち。ノートになる前の表紙だ~
懐かしさを感じるデザインが魅力
懐かしさを感じるデザインが魅力

神戸ノートは街の風景写真がセピアやモノトーンカラーで印刷してあり、レトロな雰囲気が魅力です。表紙には、神戸の観光スポットとして有名な場所の写真が用いられています。大河さんは、「現在、ノートに使われている写真は昭和40年代に取られたものが中心。景色が変わってしまって、今ではもう見ることができない景色ばかりなんですよ」と神戸ノートのヒミツを語ってくれました。たとえば、「百字練習帳」では、みなと神戸を象徴するメリケンパークの景色が用いられています。ところが、よーく見るとポートタワーはあるのに、そのそばにあるはずのホテルオークラ神戸のタワービルや、白い屋根が特徴的な神戸海洋博物館、モザイク大観覧車などがありません!今の風景とは似ているけれどもちょっと違う、そこに懐かしさを感じるのかもしれませんね。

昭和30年代後半の写真を使った「百字練習帳」
昭和30年代後半の写真を使った「百字練習帳」

関西ノートは、大河さんの曽祖父が明治の終わりごろに立ち上げた文房具店「飯田商店」がはじまりです。その後大正15年に、株式会社化して現在の社名に変更されました。


昭和25年ごろ、関西ノートは製本機を取り入れてノートの製造販売に乗り出しました。このころは朝鮮戦争特需で景気がよかったことから、神戸市の小学生の間で高価な文房具を持ってくる児童が増加。一方で文房具を満足にそろえられない児童もいて、その格差を是正したいと校長会から依頼がありました。どの家庭の子どもでも同じように購入できる統一のノートを、ということで昭和27年に神戸ノートの販売を開始。発売当初の表紙には、写真ではなく神戸の風景や小学生受けするようなイラストが採用されていました。音楽ノートのイラストは、制作にあたって神戸市内にある小学校の音楽の先生方にご意見をお聞きしていたときに、絵心のある先生から提供されたものだそうです。イラストの素朴さに味わいがあり、これだけは発売当初から変わらないままです。

「音楽ノート」は今でも写真ではなくイラスト
「音楽ノート」は今でも写真ではなくイラスト

そのほかのノートの表紙は、昭和30年代半ばごろにあったカメラブームの影響で写真になりました。関西ノートの取引先や社員の親戚、地元の文房具店のご主人など、カメラ好きの方に声をかけて「神戸らしく残っていく風景を」と依頼したそうです。集まった写真の中からチョイスしたのですが、中には神戸市役所の建物は市章がセンターで折れてしまう、商船三井ビルディングは建物がノートの帯で見えなくなってしまうなどの理由で、残念ながら不採用になったものもあります。

旧居留地にある商船三井ビルディングの写真は不採用に
旧居留地にある商船三井ビルディングの写真は不採用に

神戸ノートの表紙は約30年間、変更されていません。理由は、神戸ノートの愛用者から「このスタイルのまま続けてほしい」という声が届いているからだそう。神戸ノートは、小学校の先生や神戸市民と一緒につくりあげられてきたノート。その思いが伝わるから、このままがいいと感じる方も多いのでしょうね。


ところで、こんな素敵なノートの存在がなぜ他地域では知られていないのでしょうか?神戸ノートは、多くの神戸市内の小学校で入学のお祝いなどで配付されたり、市内のスーパーや文具店でも販売していますが、神戸市外ではほとんど販売されていません。そのため、神戸市外では知らない人の方が大多数なんです!大河さん自身も小学生時代に、神戸ノートで勉強した子どもの一人。「このノートを使うことが当たり前だったので、全国でもこのノートが使われているのだと思っていました(笑)」。

「百字練習帳」の表紙が大河さんのお気に入り
「百字練習帳」の表紙が大河さんのお気に入り

ただ現在は文房具好きの人たちがネットで取り寄せを希望したり、神戸を訪れた観光客がノスタルジックな雰囲気に惹かれて購入したり、神戸出身の人が懐かしさで購入することもあり、神戸以外でも知られつつあります。最近では購入しやすいB7サイズも登場しました。

こちらは神戸市内でもまだ知らない人が多い!? 3月に発売されたばかりのB7サイズのノート
こちらは神戸市内でもまだ知らない人が多い!? 3月に発売されたばかりのB7サイズのノート

また、思い出の写真や記念写真を使って、世界に一つだけのオリジナル神戸ノートをオーダーすることも可能。お子さんの誕生記念や結婚式の引き出物、会社のノベルティなどに利用されているそうです。

オリジナル神戸ノート。子どもが成長したとき、結婚式の引き出物にしたらいいかも
オリジナル神戸ノート。子どもが成長したとき、結婚式の引き出物にしたらいいかも

「神戸ノートが、みなさんの人生の思い出の一つになったり、故郷を思い出すきっかけになったりしていたら、これ以上うれしいことはありません。これからもみんなに愛されるノートをつくっていきたいですね」と大河さんは語ります。子どもへの思いと神戸愛にあふれたこのノート。一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

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