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大阪駅前第1ビルに、
異次元すぎる喫茶店を発見!

2017/11/06
依頼内容

梅田の大阪駅前第1ビルに、異次元空間に迷い込んだような気分を味わえる喫茶店があると聞きましたが、どんな場所でしょうか?

コスパ抜群の飲食店が多く集うため、近隣で働く人たちから絶大な支持を得ている大阪駅前第1ビルの地下1F。パチンコ店、金券ショップ、レコード店などが軒を連ねるフロアを歩いていると、「いらっしゃいませ、どうぞ!」と軽快な声が聞こえてきました。

異次元喫茶店の入口はこちら
異次元喫茶店の入口はこちら

声がする方を見ると、シルクハットに蝶ネクタイ、ステッキ、赤いコート、片メガネという格好の男性が……。

声のする方には、こちらのジェントルマンがいました♪
声のする方には、こちらのジェントルマンがいました♪

「これはスコッチ・ウイスキーのブランド“ジョニー・ウォーカー”のジョニ赤人形で、その名もストライディングマン(闊歩する英国紳士)って言いますねん」と店からひょこっと顔を出したのは、この喫茶店「マヅラ」のオーナー・劉(りゅう)さんです。先ほどのお声の主もストライディングマンではなくて、この方でした。店先のストライディングマンは、劉さんが喫茶店の経営と並行してウィスキー販売店を行っていた関係で、20年以上前から店にいる看板ジェントルマンです。

蝶ネクタイがチャーミングな劉オーナー
蝶ネクタイがチャーミングな劉オーナー

どうやら噂の喫茶店はここのようです。「マヅラ」という不思議な店名の意味を聞くと、劉さんが19歳のときに旅したインドネシア・マドゥラ島が名前の由来だそうです。「砂浜でギターを弾いていたら、色の浅黒いキレイで純真そうな女の子が笑顔でやってきてくれて、海まで案内してくれたんや。それで『僕がいつか商売したら、君を思い出して島の名前を屋号にするよ』なんて言ってね。青春時代の思い出やな」とのこと。ロマンティストですね。


「立ち話もなんやから、コーヒーでも飲んでいき」とお誘いいただいたので、探偵たちはお店に入ってみました。店内に足を踏み入れた途端、遊園地のミラーハウスにいるかのような感覚に。それもそのはず、店内には鏡が張り巡らされています。

鏡に照明が反射して店内はキラキラ
鏡に照明が反射して店内はキラキラ

店内は約100坪と広く、中央に配された円形ソファは往年のキャバレーのよう。ふと見上げると、天井はちょっぴり色あせた群青色で、月のクレーターを思わせる凹凸がつけられています。つり下げられたミラーボール風の丸いライトは無数に輝く星を思わせ、まるで宇宙船に乗って宇宙旅行を楽しんでいる気分になります。一方、壁面は繊細な透かし模様が施されており、大阪万博当時の近未来感が醸し出されています。

どこに座っても内装を楽しめるように設計されています
どこに座っても内装を楽しめるように設計されています
壁面の滑らかな曲線は大工さんが手作業でカットしたとか
壁面の滑らかな曲線は大工さんが手作業でカットしたとか

1920年に台湾で生まれた劉さんは、今年でなんと御年97歳!祖先に三国時代の英雄、蜀の劉備がいるそうです!大学卒業後の1941年に単身大阪にやってきて貿易商社に就職したものの、すぐに太平洋戦争が本格化して仕事を失ってしまいました。1945年の大阪空襲で焼け野原と化した大阪駅周辺には、終戦直後闇市が広がりました。「物がなかった時代で、焼け野原に建てた掘っ建て小屋や路地に、食料品や着物を置いて売り買いしてたなぁ」。


その後、稼いだ資金をもとに、大阪駅前の一角に約15坪の土地を購入して「マヅラ」を開業。「台湾にいたときによく通っていた音楽喫茶みたいな店をつくりたいと思ってね。でも当時は砂糖もなく、店で提供できたのは甘くないぜんざいぐらい。進駐軍が捨てていったコーヒーを出したこともあったな」と遠い目をしながら思い出話をしてくれます。アメリカから取り寄せた中古のレコードプレーヤーには針がなかったので、友人お手製のダイヤモンドの針を取りつけて連続再生仕様に改良。ショパンやモーツァルトなどの名曲を流す「音楽喫茶」として知られるようになりました。

1964年頃の外観写真
1964年頃の外観写真

そして、大阪万博が開催された1970年に大阪駅前第1ビルが完成。創業当初の店は取り壊されたものの、新しく建てられたビルに収用され、広さは100坪に一気にグレードアップしました。

ビル建築当時の様子
ビル建築当時の様子

店舗の設計は演劇好きの劉さんにちなみ、店内を舞台に見立て、宇宙をイメージした空間となっています。47年たった今も内装はそのまま。ミッドセンチュリーモダンなイスやテーブルも、すべて当時のままとのこと。お店は現在、劉さんのご長男(写真右)とお孫さん(写真左)と一緒に、3世代で切り盛りしています。

同じビル内でスコッチウイスキーのオールドパー専門店「King of Kings」を営む娘さんも加わって、パシャリ
同じビル内でスコッチウイスキーのオールドパー専門店「King of Kings」を営む娘さんも加わって、パシャリ

内装にも驚きましたが、メニューを見てさらにびっくり。コーヒーは1杯250円で、ジョニ赤はコーヒー並の350円と安い!「創業からこれまでたくさんのお客さんが足を運んでくれたおかげで、今まで続けてこれました。だから価格は約20年間据え置きにすることで、感謝の気持ちを還元したい」とのことでした。広いテーブルを1人で使用するとテーブルチャージがかかるのも、なるべく多くの人にゆっくり過ごしてもらいたいからだそうです。

パソコンの使用はご法度なのでご注意を
パソコンの使用はご法度なのでご注意を

また、2014年には大阪市が今に生きる魅力ある建物を発信する「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」に選ばれています。

生きた建築ミュージアムの証!
生きた建築ミュージアムの証!

ふと伝票に目をやると、パーティ予約について「大歓迎4~5人のパーティでも特別の席をつくります。よい雰囲気とセンス、そして安いことで喜ばれています」と書かれています。この丁寧な言葉遣いから、劉さんのお人柄が感じられますよね。

伝票の端っこのメッセージにも、思いがこもっています
伝票の端っこのメッセージにも、思いがこもっています

ちなみに、大阪府は都道府県別の喫茶店事業所数が全国1位だとか。喫茶店同士の競争が激しく、大手のコーヒーチェーンもどんどん進出している中、マヅラは昔と変わらず人が集っていました。

時間も忘れてしまうような空間で、お買い物や仕事帰りのひと休みに、お友達とのおしゃべりに、タイムスリップ気分を味わえる「マヅラ」へ行ってみてはいかがでしょうか。

ミックスサンドと一緒にいただきます
ミックスサンドと一緒にいただきます
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