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炎の探偵社

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パン屋の中に
機関車があるのはなぜ!?

2017/06/19
依頼内容

京都のパン屋さんで、店内に電気機関車を置いているところがあるようです。気になるので調べてきてください!

機関車とは蒸気や電力などの動力装置を持ち、その力でほかの車両を引っ張る車両のことです。貨物車両やブルートレインを引っ張る先頭車両で、電気を動力源としたものが電気機関車です。それがパン屋さんにあるっていうけど、本物なの?おまけに、店の外じゃなくて中にあるの?どうやって入れたのでしょうか!?調べてみたところ、京都府木津川市にあるパン屋さん「パン・オ・セーグル」にあるようです。探偵たちはさっそく行って確かめてみることにしました。

三角屋根が印象的なパン屋さん
三角屋根が印象的なパン屋さん

正面は一見普通のパン屋さん。ところがお店の正面から左側に回って、縦横3m以上ありそうな巨大な窓から見えるのは……。

窓の中、パンと機関車でパンパンやん!
窓の中、パンと機関車でパンパンやん!

さっそく店内に入ると、パンが並んだテーブルの前に電気機関車の車両がどーん!実はこれ、運転席が入っている前部分だけをカットしたものですが、それでも相当大きい。スペースぎりぎりいっぱいに入っています。どうやってここに置いたのか、気になってしかたない探偵は、さっそくオーナーシェフの泉川さんに当時のことをお聞きしました。

まるで機関車が、パンを焼いて売っているかのような光景
まるで機関車が、パンを焼いて売っているかのような光景

1999年から別の場所でパン屋を営んでいた泉川さん。2011年4月に入居していた建物が取り壊されることになり、移転を余儀なくされたのです。泉川さんは、また移転をしなくていいよう、自分のお店を建てることにしました。このとき、泉川さんはいつか必ず、と決めていた夢を叶える決断をします。それが、店内に電気機関車を置くこと。

こちらが泉川さん。鉄道好きなのでしょうか?
こちらが泉川さん。鉄道好きなのでしょうか?

それからは鉄道会社などにその希望を伝えては断られてばかりでしたが、偶然出会った貨物列車の運転手さんに事情を話したところ、協力してくれることに。この方が泉川さんの企画書を持って、ほうぼうをあたってくれたそうです。そしてついに、かつては「はやぶさ」などの有名な寝台列車をけん引していたEF66-49号機という電気機関車を、本来の役目を終えて廃車になるタイミングで、なんとか手に入れることができました。


そして2011年6月。お店はすでに完成ずみで、あとは車体を窓から入れるだけでした。前もって幅を計算して車体を2分割していたので、搬入は午前中くらいの作業で終わるだろうと誰もが思っていたのですが……。


「車体の前面のとがっている部分が邪魔をして入らなかったんです。そこで上部分をクレーンで吊り上げ、窓枠を壊さないよう少し斜めにして入れることに。店内に入れてジャッキアップするのですが、その途中で今度は4ヶ所あったジャッキの1つが壊れてまた中断。予備のジャッキにつけ替えてなんとか1m26cmまで引き上げました」と当時を思い出す泉川さん。人力のジャッキアップだったため、引き上げるのにはなんと8時間がかり。車体の下に台車部分を搬入して接合し、アンカーボルトで床にしっかり固定して、設置がようやく終了。結局、重さ11トンもの巨体の搬入は、不眠不休で26時間にも及ぶ大工事になってしまいました。


苦難の末、夢が叶った喜びで胸がいっぱいになった泉川さんは、作業してくれた方に感謝の気持ちを伝えると、返答は「実は何度も危険を感じて、3回は作業をやめようと思ったよ」。この言葉からも搬入作業の難しさ、大変さがわかります。

機関車が店内に突っ込んできたかのように見えますが、そうではありません
機関車が店内に突っ込んできたかのように見えますが、そうではありません

話を聞くうちに、胸が熱くなってきた探偵たち。泉川さんの夢に共感して協力してくれた人が何人もいたからこそ、このお店があるんですね!そこまでして夢を叶えた泉川さんって、かなり熱烈な鉄道ファンなんですよね?


「まあ、好きは好きですけどね。でも旅行先で風景と同じように写真を撮ったりする程度ですよ」との衝撃のお答えが。ええ~!!鉄道ファンじゃないのに、なぜ?と驚いていると、「鉄道ファンなのは実は息子なんですよ」とさらに驚きの一言が。

全国の鉄道ファンが、2階のカフェにあるこの写真を眺めて過ごすそう
全国の鉄道ファンが、2階のカフェにあるこの写真を眺めて過ごすそう

現在23歳の息子さんは、小学生のころから一人で寝台列車に乗って遠方まで電車の写真を撮りに行くほどの鉄道ファン。お店の2階はカフェになっているのですが、ここには息子さんが撮影した、全国の鉄道写真が展示されています。

店内に提示されている説明などは、息子さん作なのだそう
店内に提示されている説明などは、息子さん作なのだそう

今は車体のヘッドマークを定期的に変えてそのスケジュールをホームページで紹介したり、ライトを点灯させたり汽笛を鳴らしたりといった作業を息子さんが担当していて、電気機関車がある毎日を楽しんでいます。

運転席のところに他のヘッドマークもありました。2週間おきに替えています
運転席のところに他のヘッドマークもありました。2週間おきに替えています
定休日の案内がおちゃめ
定休日の案内がおちゃめ

いつかお店を息子さんが継ぐときに、何か他にも財産となるものを残したいと考えていた泉川さん。ふと思いついたのが、息子さんが子どものころから大好きだった電気機関車だったのです。電気機関車を店に置く夢は、息子さんがきっかけだったんですね。


ちなみに、こちらのパンは泉川さんが健康的で美味しいものを、とこだわって全品100%天然酵母。実は全国から鉄道ファンのみならず、パン目当てのお客さんもやってくる人気店です。夢にもパンにも熱い情熱を注ぐ泉川さんを見て、探偵たちもまだまだがんばらなきゃ、とあつあつのパンをほおばりました。

泉川さん父子は、マイマイと同じくらい仲よしなんだね!
泉川さん父子は、マイマイと同じくらい仲よしなんだね!
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