大学教授に聞く!鴨川に座るカップルが
等間隔になってしまうワケ
2017/05/22
鴨川といえばカップルというくらい、並んで座っている光景が有名ですよね。カップルの距離が等間隔だと聞いたことがあるのですが、これって本当なんですか?
寒い季節から暖かくなるにつれ、人出が増えてくる鴨川の川岸では、カップルが並んで座っている風景がよく知られていて、みんな間隔をあけているイメージがありますよね。それが等間隔なのかどうか、探偵も気になります。さっそく鴨川に行って調べてみました!
川沿いを見てみると、この日は少し肌寒かったせいかそんなにたくさん人はいない様子。でも、あまり多くないにもかかわらずなかなかの等間隔っぷり!
では、みんなカップルかというと……意外にもカップルばかりではなさそう。お花見シーズンまっただ中だったこの日は観光客や学生さんも多く、川沿いにはグループで座っている人や、一人でのんびりしている人の姿も。その割合は、いかにもカップルらしき二人組と半々、といったところでした。
「20年ほど前に調査しましたが、そのときもカップルではない人たちは多かったんですよ」と語るのは、鴨川のカップルについて調査して本まで出版された、京都精華大学の斎藤先生。そのころ、メディアで鴨川のカップルについて取り上げられるようになってきたことから、1993年に先生のゼミでも鴨川のカップルについて話をしたところ、研究テーマとして取り組みたいという学生たちが現れました。調査に手間暇のかかる難しいテーマでしたが、彼らは最後まで熱意を持って取り組み、卒業論文にまで仕上げたそうです。
先生自身も学生のころから鴨川を見るたびに、ここに座るカップルはどこから来た、どんな立場の人たちだろうとぼんやり考えていたのだとか。実際に調査してみるとカップルではない人たちが多く、声をかけてみると「つきあってません」ときっぱり否定する人もちらほら。
座っているのはカップルばかりではないとわかったものの、誰もが等間隔に座っているのは事実です。これはいったいなぜなのでしょうか?
これには、人間が無意識につくっている目に見えない縄張り「パーソナルスペース」が影響しているそうです。先生によると、人は両サイドに別の人がいれば両方のスペースを侵さないように真ん中くらいに座るため、等間隔になるのだとか。座る人が増えてきて、極端に自分に近いところに別の人が座ると、パーソナルスペースが侵されて居心地が悪くなるので、横に少しずれたり、移動したりして、まただんだんと等間隔になるのだそう。
先生たちもそれを実証するべく、実際に鴨川で座っている人たちの間隔を調査したところ、約半数が1mから2mの間隔で座っているという結果に。
出典:斎藤光, 橋爪紳也, 風俗研究ネットワーク編著『Kyoto恋愛空間 : 現代カップル考』(株式会社学芸出版社 1994年6月)70ページ
先生のお話では、「電車のシートでも同じことが起こります。まず端に人が座り、次に真ん中、その次は端と真ん中の間にできた空間の中央に座って、両サイドと同じ間隔があくようにする傾向があります。それが人間の習性なんです」とのこと。つまり、鴨川はとてつもなく長い電車のシートだと考えればいいわけですね。
なるほど、どうして等間隔になるのかはわかりました。では、たくさん川がある中で、どうして鴨川にこんなに多くの人が座っているのでしょうか?「鴨川って対岸とほどよい距離があって、向こう岸から人の顔が判別できないし、橋の上から座っている人の顔が見えるわけでもない。両岸を歩く人も座っている人の後ろを通るから、顔を見られずにすむし、人がすぐそばを通っている感覚もあまりないからですね」と斎藤先生。
そのうえ、川が音を吸収するので、内緒話をするのにもってこい。ためしに探偵たちも座ってみると、隣のカップルの声も車の音もまったく気になりませんでした。川の音も驚くほど小さくしか聞こえないので、静かなカフェで話しているくらいのボリュームでも会話できました。
人がたくさん座るのは、川の幅や静かさにも理由があったとは……。座ってみて、あらためてその魅力に気づきました。
カップルではない人たちが多いのは予想外でしたが、これほど居心地のいい場所ならカップルでなくても座りたいですね。どんどん暖かくなって、夜でも座りやすくなるこれからの季節、みなさんも等間隔の仲間入りをしてみては?