日本一低い山の天保山には
山岳救助隊が存在する!そのワケは
2017/05/08

天保山に「山岳救助隊」がいるって聞きました。あんな低い山に、山岳救助隊がいるってどういうことですか?
江戸時代、安治川の下流には上流から流れてきた土砂が大量にたまり、そのたまった土砂を運び出し、積み上げてつくられたのが天保山です。当初は20m近くあったのですが、幕末のころロシアの軍艦が大阪湾に現れたことを機に、砲台を配備するために山を大きく切り崩したことにより、さらに戦後には地盤沈下が原因となり、現在の標高4.53mまで低くなってしまったのです。
そんな低い山に、本当に山岳救助隊なんているの?探偵たちは天保山に向かい、噂の真相を確かめることにしました。

天保山公園入口の前には15段ほどの階段が。もしかして、この上が山頂?と思っていたら、「天保山の山頂がどこかわかりますか?階段の上にはありませんよ」と声をかけてくれるおじさんに遭遇。えっ!?では山頂は一体どこ?
「山頂にたどり着けないわけだから、遭難者ですね」とおじさんに言われました。「私がご案内しましょう!」えっ、ありがとうございます!親切なあなたはどちらさま?とおたずねすると、なんと!

左腕に「山岳救助隊」の腕章が!噂の山岳救助隊の橋本さんでした。橋本さんいわく、「日本一低い山だけに、山頂の場所を見つけられない遭難者が少なからずいます」とのこと。

救助してもらったついでに、橋本さんに山頂まで案内してもらいました。山頂までのルートは2つあり、最短で行くなら西ルート、登山気分を味わいたいなら南ルートとのこと。そこで、南を選択。

意を決して、目の前の階段をあがると、すぐに広場が現れます。ここが山頂かと思いこんでしまう人は多いようですが、実は展望台。橋本さんはすたこらさっさと先へ行ってしまいました。つまり、山頂はこの先に!?階段を降りると、目の前に広がるのが山頂広場です。なんのために階段をあがったんだろう……。

広場にそびえ立つ明治天皇行幸記念碑の正面に向かって右下に、ポツンと四角い三角点を発見。これこそが山頂でした!公園入口から山頂までわずか徒歩2分程度。

そもそも橋本さんはなぜ山岳救助隊に?とお聞きすると、「低くてすぐ登れてしまうのが天保山の魅力。そこを楽しんでもらおう!」と1998年に橋本さんが中心となり、山岳会を結成したとのこと。さらに冗談半分、真面目半分で山頂にたどり着けない人たちを助ける山岳救助隊を結成しました。どちらもまちおこしの活動の一環ではありますが、テーマは「いちびる(調子に乗る、ふざけるの意味)」こと。登頂成功者には、「日本一低い山の頂上をきわめた」いちびり精神をほめたたえる登山証明書を発行しています。過去の証明書発行人数は海外からの観光客を含めて、5万5,872人(2017年4月20日現在)も!

毎年開催されるイベントもいちびり精神満載!元旦に開催されるご来光登山では、橋本さんお手製のラッキーアイテム「運呼」を投げて山頂からの距離の短さを競ったり、負けたモン勝ちのいちびりじゃんけん世界一決定戦などが行われます。また、桜の時期には、大阪にこだわらず天保山にちなんだ場所を案内するお花見登山も。たとえば、今年で没後150年を迎える坂本龍馬が、おりょうと新婚旅行に出かけた際の出発地は、なんと天保山!そこで今年は、寺田屋や伏見の町へ行き、龍馬ゆかりの史跡や名所をまわったそうです。歴史的な文献を読みあさり、企画からパンフレットの作成までてがける橋本さんの行動力には、探偵たちも脱帽です。

関西では「日本一低い山」として有名な天保山ですが、われこそは日本一、と名乗りを上げる山は全国にあるようです。最近では宮城県の日和山が津波で削られ、標高3mで日本一低い山になったといわれています。その一方で、徳島の弁天山(6.1m)は自然にできた山としては日本一だという意見も。
日本一低い山の首位攻防戦は熾烈なようですが、橋本さんはどう思っているのでしょうか。「山の標高は国土地理院が山頂付近に設置する“三角点”の位置で決まります。三角点が存在する山の中で一番標高が低い山は、天保山なんです。だから、今も正式に天保山が日本一なんです!」とおっしゃっています。王座は渡さない宣言ですね。

来年2018年は、「天保山山岳会」および「山岳救助隊」の結成20年目なので、20年にちなんだいちびりイベントを企画中だそう。5月の陽気に誘われて、天保山の山頂を目指しお出かけしてみませんか?
