世界の省エネ

6月

サッカーもサステナブルに!環境配慮型のワールドカップを楽しむ

  • ロシア

2018年のロシア杯会場のひとつとなった「サンクトペテルブルク・スタジアム」はさまざまな環境配慮がなされている

2018年のロシア杯会場のひとつとなった「サンクトペテルブルク・スタジアム」はさまざまな環境配慮がなされている

ドイツ大会から掲げられた環境保護コンセプト「Green goal」

2018年は4年に1度のサッカーの国際的大会、FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップが開催される年です。ワールドカップに代表される国際的なスポーツ大会は世界的に注目度が高く、規模がどんどん拡大していますが、CO2排出や廃棄物など環境への負荷も大きいことから、持続可能なものが求められています。 2006年のドイツ大会を開催するにあたり、FIFAは環境配慮型のワールドカップとして「Green goal」という環境保護コンセプトを設定しました。これは、スタジアム内やその周辺におけるエネルギー消費量・水の使用量・ごみなどの廃棄物量を20%削減し、観客の50%が公共交通機関を利用して移動することでCO2排出量も20%減らすという省エネ目標です。大会期間中、移動によるCO2排出量は19%の削減を達成しましたが、削減しきれなかった分は、「カーボンオフセット」を実施することになりました。 カーボンオフセットとは排出されるCO2等の温室効果ガス(カーボン)を、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業といった温室効果ガスの削減活動等に投資するなどして埋め合わせ(オフセット)するという考え方のこと。これによって、ドイツ大会でオフセットされたCO2量は9万2,000tとなりました。2010年の南アフリカ大会でも「Green goal」は継続され、カーボンオフセットの量が270万tと大きく拡大しました。

2006年のドイツW杯会場のひとつとなった「アリアンツ・アレーナ」はLED照明システムの導入でも大幅な電力削減を実現した

2006年のドイツW杯会場のひとつとなった「アリアンツ・アレーナ」はLED照明システムの導入でも大幅な電力削減を実現した(flickr)

メガソーラーを設置したブラジル「アレナ・ペルナンブーコ」

メガソーラーを設置したブラジル「アレナ・ペルナンブーコ」(WIKIMEDIA COMMONS : Portal da Copa/ME


図1 2014 年 FIFA ワールドカップ ブラジル大会 CO2排出量内訳

図1 2014 年 FIFA ワールドカップ ブラジル大会 CO2排出量内訳
出典:Summary of the 2014 FIFA World Cup Brazil Carbon Footprint (2014 FIFA World Cup Organising Committee Brazil)

ブラジル大会では再生可能エネルギーの利用を強化

2014年のブラジル大会でも、「Green goal」の取り組みが実施されました。大会におけるCO2排出量は約272万tで、その内訳は海外からの移動が約半分、続いて国内移動が30%を占めました(スタジアムの新設は含まない)。サッカースタジアムのCO2排出量は、全体の10%を占めています(図1参照)。 開催にあたりいくつかのスタジアムで大規模な改修が行われ、その際に太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用が強化されました。たとえば、日本代表の試合が開催されたペルナンブーコ州レシフェのスタジアム「アレナ・ペルナンブーコ」には、1MWのソーラーパネルが設置されました。これにより、試合開催時におけるスタジアム内電力需要の30%をまかなえます。また、スタジアムを使用していないときには、発電した電力は地域の電力系統に送られ、多くの近隣住居に電力を提供しています。 このようにブラジル国内では、2014年のワールドカップを契機に太陽光発電などを付帯したスタジアムが、現在もサッカースタジアムとして活用されている例がいくつもあります。一方で、スタジアム「エスタジオ・ド・マラカナン」のように、主に経済的理由で利用できなくなっている例もあります。この事実は、施設の管理や大会後の使用方法などを、大会前から考慮しなくてはいけないということを示しています。

ロシア、カタール大会ではスタジアムの再利用や多用途利用を促進

ブラジル大会の課題をとらえ、ロシア大会では新たに建設されるスタジアムはサッカー大会だけでなく、多用途に使うことを想定して建てられています。たとえば、「サンクトペテルブルク・スタジアム」は、冬場でもさまざまな用途に使用できるように屋根の雪を溶かす装置を装備した移動式屋根を設置して、年間を通じてさまざまなイベントに使えるように設計されました。そのうえで、エネルギーや水などの資源を効果的に使い、廃棄物や汚染・環境劣化を削減するよう設計され、世界的な環境性能評価システムの「LEED」が正式に認証しています。 また、ロシア大会でもCO2排出量は選手や観客の移動によるものが最も多く、全体の70%を占めると想定されています。そこで、ロシアへの旅行や国内移動のCO2排出量を、FIFAとロシア大会組織委員会が共同でカーボンオフセットするキャンペーンを行う予定です。このオフセット効果は、160万tになると予測されています。 さらに2022年のカタール大会では、場所を移動して再利用できるという画期的な工夫がこらされたスタジアムが2020年に完成予定です。首都ドーハの「ラス・アブ・アブド・スタジアム」は、大会終了後に解体してほかの場所で組み立て直して再利用できるデザインを採用。観客席や屋根、トイレなど、各種の設備が多数の「モジュールブロック」を組み合わせて建設されるため、資材や工期だけでなく廃棄物も減らせると期待されています。

カタール大会で使用される再利用可能なリユース式スタジアム「ラス・アブ・アブド・スタジアム」の完成図

カタール大会で使用される再利用可能なリユース式スタジアム「ラス・アブ・アブド・スタジアム」の完成図

ブラジル、リオにある振動で発電するサッカー場「FAVELA FOOTBALL PITCH」

ブラジル、リオにある振動で発電するサッカー場「FAVELA FOOTBALL PITCH」(Pavegen)

街角の小さなサッカー場でも、再生可能エネルギーの活用が始まる

サッカーに関する環境配慮は、国際試合が開催される大型スタジアムに限らず、広がりを見せています。ブラジル・リオにあるファベーラと呼ばれるスラム街のひとつ「モーロ・ダ・ミネイラ」。ここには、著名なサッカーレジェンドのペレが支援して、英国のテクノロジー会社が建設したサッカー場があります。一見すると普通のサッカー場ですが、人工芝の下には200枚の発電パネル(キネティックタイル)が埋め込まれていて、プレーする選手たちが走る振動によって電力を生み出します。生み出された電力はフィールドを照らす6つのLED照明に使われ、夜でも安全にプレーできる環境となっています。

ワールドカップやオリンピックなどの大きなスポーツイベント運営では、省エネや環境配慮をするのが当たり前になってきました。世界で多くの人々に親しまれるスポーツのフィールドで、持続可能な未来に向けたアクションが広がっています。

Text by Yayoi Minowa