依頼内容

京都のお土産に和菓子を買って帰ったら、「そういえば京都の和菓子を京菓子って呼ぶことがあるよね。ほかの和菓子と何か違うのかな」という話題になりました。結局答えはわからずじまいで、とっても気になっています。「京菓子」とはなんでしょうか?探偵さんぜひ調査してください。

京菓子といえば、はんなり、上品なイメージがありますよね。でも、「ほかの和菓子との違い」をあらためて聞かれると、探偵も答えることができません……。京菓子とはいったいどんな和菓子なのでしょうか?

そんな疑問を解くべくやって来たのは、京都市営地下鉄今出川駅から歩いて5分ほどのところにある「京菓子資料館」。創業1755年の老舗京菓子司「俵屋吉富」が開設した、京菓子文化の総合的な資料館です。ここならきっと、京菓子の詳しい話が聞けるかも!?さっそく中に入っていきます。

「京菓子資料館」に到着
「京菓子資料館」に到着

いかにも京都らしい細長い坪庭があり、厳かな雰囲気にドキドキしていると、広報担当の成岡さんが笑顔で迎え入れてくれました。「こんにちは。京菓子のことなら、ぜひなんでも聞いてくださいね」。

株式会社俵屋吉富、広報担当の成岡さん
株式会社俵屋吉富、広報担当の成岡さん

ありがとうございます。それではさっそくですがおうかがいします!京菓子って、どんなお菓子のことですか!?

「京菓子とは、ずばり、京都でつくられた和菓子のことです。といっても、すべてが京菓子というわけではなく、日本の四季をあらわす『上生菓子』といわれる上等な生菓子が中心です。詳しいお話は資料館の中でご説明しましょうか。さあ、どうぞ中へお入りください」。

京都でつくられたから京菓子……。とてもわかりやすい答えですが、それだけではないとのこと。いろいろ深い話が聞けそうです!ワクワクしながら成岡さんについていくと、京菓子の歴史の資料が並ぶ2階の展示室に到着しました。

京菓子の図案帳をはじめ、落雁(らくがん)のような干菓子をつくるための木型や、美しい蒔絵(まきえ)のお菓子箱などが並ぶ展示室
京菓子の図案帳をはじめ、落雁(らくがん)のような干菓子をつくるための木型や、美しい蒔絵(まきえ)のお菓子箱などが並ぶ展示室

展示室では、京菓子の成り立ちや洗練されていく歩みを、お菓子の図案帳や木型といった貴重な資料とともに紹介しています。その資料を見ながら、成岡さんが京菓子について説明してくれました。

「そもそも京都は名水が多く、素材のおいしさを引き立てるきれいな井戸水が豊富だったことから、和菓子づくりにふさわしい土地だったといわれています。平安時代には、天皇に献上するお菓子をつくるためのお菓子屋さんが都の周辺にたくさん並び、それぞれ技を磨いていきました」。

天皇に献上するための和菓子として、独自に発展したんですね。「はい。ここでは和菓子の図案帳も展示しているのですが、こちらをご覧いただくと、職人たちが伝承してきた和菓子の歴史を知ることができますよ」。

かつてお品書きとしても使われていたお菓子の図案帳
かつてお品書きとしても使われていたお菓子の図案帳

かわいいデザインがいっぱい!色鮮やかで素敵なものばかりですね。
「そうなんです。これが『京菓子とは』の答えのひとつです。視覚的にも楽しめるよう、四季を表現したものが多く誕生し、今もなお受け継がれています。ひとつの和菓子でも、季節によってデザインが変わるものもありますよ。たとえばこちらの『きんとん』をご覧ください」。

京菓子のなかでも特に彩り豊かな「錦秋(きんしゅう)きんとん」
京菓子のなかでも特に彩り豊かな「錦秋(きんしゅう)きんとん」

成岡さんが差し出してくれた写真を見ると、緑や黄色、赤などで彩られた京菓子が写っていました。色の組み合わせだけで、季節を表現しているのですね。この色合いは……秋でしょうか?

「あたりです!紅葉の季節には、日々変わりゆく木々の色に合わせて、日替わりでグラデーションを再現したりもするんですよ。夏だったら、あじさい色のあんこの上に、雨粒に見立てたキラキラした寒天を乗せたりもします。一足早く四季を楽しんでいただけるように、季節を先取りしてお届けするのも京菓子の魅力ですね。また、手にしたときにイメージが膨らむような、色合いだけでデザインした抽象的な和菓子が多いのも、豊かな表現力を持つ京菓子ならではの特徴です」。京菓子は季節によって表情を変えるんですね。四季を楽しむ日本人らしい趣を感じます。

「そのほか、季節や年中行事、和歌、古典文学などから取り入れた、お菓子につける名前『菓銘(かめい)』もすごく魅力的なんですよ。たとえば春の訪れを告げるウグイスにちなんだ『春告鳥(はるつげどり)』や古今和歌集の夏の歌にちなんだ『唐衣(からころも)』、秋の豊作を米俵のように丸々と表現した『福俵(ふくだわら)』、冬に柴とよばれる野山の小さい木々に雪が積もる様子をあらわした『柴の雪(しばのゆき)』など」。

「京菓子をいただくときは、まず目で色や形を楽しんでいただきながら、耳で菓銘を聞いて、『これは何を表現しているんだろう?』とぜひイメージを膨らませてみてほしいですね。つくり手の想いを感性でも味わえるのも、京菓子の醍醐味なんです」。

迎春を表現した京菓子たち
迎春を表現した京菓子たち

おいしいだけでなく、目や耳でも楽しめるんですね。まもなくやってくるお正月の京菓子もありますか?
「もちろんです。お正月にいただくのは、白いお餅に白味噌あんと甘く煮たゴボウをはさんだ、平安時代から伝わる『花びら餅』ですね。新年を祝う京菓子です」。長寿を願うゴボウを使った京菓子なんて、とても縁起がよさそうです!

新しい年を迎える際に、長寿を願う「花びら餅」
新しい年を迎える際に、長寿を願う「花びら餅」

「あともうひとつ、ゆとりを楽しんでいただけるのも京菓子のいいところです」と、成岡さん。
「京都は茶の湯文化が大きく花開いた街。実はお茶も京菓子も、時間や空間のゆとりを楽しむためのものなんです。毎日が忙しいと、季節を感じる余裕がなくなってしまうこともありますよね。そんなときはぜひ、京菓子で四季を感じながら、ほっとできる時間を過ごしていただけたらと思います」。

「京菓子を味わう時間が、忙しい現代人の心のゆとりになってほしいです」と話す成岡さん
「京菓子を味わう時間が、忙しい現代人の心のゆとりになってほしいです」と話す成岡さん

五感で京菓子を味わいながら、ゆったりとやすらぐなんて、素敵な時間ですね!探偵たちも京菓子を食べるときは、味を楽しむだけではなく、季節を楽しみながらほっとした時間を過ごしたいと思います。

「1階のお茶席『祥雲軒(しょううんけん)』では、京菓子を実際にお召し上がりになれますよ。資料館に来られた際は、ぜひお立ち寄りいただき、ゆっくりと流れる時間をお楽しみください。ほかにも、京菓子資料館では職人による京菓子教室もおこなっていて大変人気です。15名以上でご予約いただけますので、機会がございましたらこちらもぜひご参加ください」。

京菓子をいただくことができる1階のお茶席「祥雲軒」
京菓子をいただくことができる1階のお茶席「祥雲軒」
京菓子教室の様子
京菓子教室の様子

京菓子とは、四季折々の自然の美しさを表現した、京都でつくられる和菓子のことでした。「京菓子が彩る一つひとつの豊かな表情は、和菓子のなかでも唯一無二の存在なのではと思っています」。成岡さんの一言に、平安時代から長い時間を経て発展してきた京菓子の魅力がギュッと詰まっているように感じました。

五感で京菓子を味わい、やすらぎの時間を楽しんだ探偵たちでした
五感で京菓子を味わい、やすらぎの時間を楽しんだ探偵たちでした
調査完了