滋賀県にある凧の博物館に巨大な凧が展示されていると聞きました。探偵さん調査をお願いします。
お正月の風物詩としておなじみの凧揚げ。昔は、広い公園や河川敷で、多くの家族連れが凧揚げしている光景をよく目にしましたよね。凧といえば、子どもが両手を広げたくらいのサイズをイメージしますが、巨大な凧とは一体どれほどの大きさなのでしょうか?さっそく探偵たちは、近江鉄道・八日市駅から徒歩15分の、凧をテーマにした博物館「世界凧博物館 東近江大凧会館」に向かいました。
到着した探偵たちが中に入ってみると、壁一面にドーンと展示された巨大な凧が目に飛び込んできました。想像を超える迫力に、驚きを隠せない探偵たち。
「驚いたでしょ。畳にして100畳分はある大きさです。東近江には昔から大凧を揚げる文化があるんです」と教えてくれたのは、副館長の鳥居さんです。「まずは館内をご案内しましょう。ここでは日本だけでなく海外の凧も合わせて約600点展示しているんですよ」。
鳥居さんと一緒に2階に上がると、壁から天井まで凧がぎっしり!日本の凧を紹介するコーナーでは、北海道から沖縄まで全国の約500点が地域別に並んでいました。飛行機や船などをモチーフにした立体的なものや、阿波踊りをする人型のものなど、初めて目にするユニークな凧ばかりです。さらに進むと、世界の凧のコーナーへ。アジア圏をはじめ、欧米やアフリカ、オセアニアなど世界各地から集まった凧はとても個性豊か!本物そっくりに作られたコウモリ凧や、繊細な筆づかいで描かれたチョウのものなど、どれもリアルに表現されています。
続いて、大凧がずらりと並んだコーナーに向かった探偵たち。鳥居さんによると、新成人を祝って20畳サイズの大凧を毎年作って揚げており、ここで展示しているのはその大凧のミニチュアだそうです。ここで、探偵たちが気になったのは凧の図柄。どれも上部には生き物が、下部には大きく文字が描かれているようです。これは何か意味があるのでしょうか?鳥居さんにお聞きすると、「絵と漢字で一つの言葉を表す『判(はん)じもん』という遊び絵が描かれています。この絵と漢字にはその時代の世相を反映したものやお祝いの言葉、メッセージが表現されているんですよ」と教えてくれました。例えば、対に描いた闘牛と「燃」の文字が描かれた判じもんは「闘牛・燃」、つまり「トウ・ウシ・モヤス」……「闘志を燃やせ!」を表しているそう!
ここで、鳥居さんから「突然ですが問題です。この判じもんは何を表しているでしょうか?」とクイズが出題されました。鳥居さんが手にした図柄には、対になった亀と「夢」の一文字が描かれています。
夢という文字に、2匹の亀……?うーんと頭を悩ませる探偵たちですが、全然分かりません!答えを聞いてみると、「夢の文字と2匹の亀、2は英語でツー。合わせるとユメ・ツー・カメ……『夢つかめ』となります!」と鳥居さんがネタ晴らしをしてくれました。博物館には、他にも約20枚ほどの判じもんの凧があり、来館者はクイズ感覚で楽しんでいるのだとか。
博物館に展示されている大凧の話をいろいろ聞かせてもらった探偵たち。そもそも、東近江の大凧揚げはどのようにして始まったのでしょうか?大凧が作られるようになったのは、世間で凧揚げが大流行した江戸時代中期頃。凧は「あがる」ことから縁起物とされ、男子が生まれた際のお祝いに揚げられたそうです。鳥居さんいわく、「最初は小さな凧だったんですよ。これが、ある理由で次第に大きくなっていったんです」とのこと。その理由とは、村人たちの負けん気!村同士で「隣の村より大きいものを」と競い合った結果、徐々に凧が大きくなっていきました。東近江には、広大な平野や琵琶湖から吹く風など、大凧を揚げるのに適した環境があり、明治15年には240畳もの超大凧が揚げられたそうです。
江戸時代から長らく続いてきた大凧作りは、第二次世界大戦中に一度中断を余儀なくされました。戦後、東近江の大凧揚げが廃れていくことを危惧した各村の人たちは、昭和28年に「八日市大凧保存会(現在は東近江大凧保存会)」を発足。彼らの努力によって大凧の伝統は無事に受け継がれました。その後、平成3年には大凧文化の拠点となる「世界凧博物館 東近江大凧会館」をオープン。平成5年には国の無形民俗文化財になりました。さらに、東近江の大凧は日本のみならず、過去にはイギリス・中国・シンガポール・フランス・マレーシアなど、世界各国の大会やイベントでも揚げられたそうです。
大凧の展示を見たり大凧の歴史を聞いたりするうちに、実際に大凧が揚がるところを見てみたくなった探偵たち。鳥居さんに、今でも大凧を揚げているのか聞いてみたところ「先ほど展示で見ていただいた20畳の大凧は、毎年1月に行われる東近江市の成人式典で揚げられるものなんですよ。来年も新成人たちが大凧を揚げるので、ぜひ見に来てくださいね!」と嬉しい情報をいただきました。東近江市では、11月から新成人たちが集まり、保存会の方々と一緒に約1ヶ月かけて大凧を作るそうです。そして本番当日、20人余りの新成人が大凧の引綱を手に持って、合図とともに一斉に走り出します。みんなの願いを乗せた凧が空高く舞い上がった瞬間には、会場全体が大きな感動と爽快感に包まれるそうです。
最後に、鳥居さんは大凧の魅力について語ってくれました。「大凧を作るのも、揚げるのも、一人ではできないからこそ、みんなで一致団結してやり遂げる喜びがあります。だからこそ、江戸時代から現在まで受け継がれてきたのでしょう。これからも東近江の大凧を後世に繋いでいけるよう、当博物館で皆さんに大凧の魅力を伝えていきたいですね」。
古くからこの地でずっと受け継がれてきた大凧の文化。現在も、東近江市の成人式の行事として保存会の皆さんが新成人の若者たちと大凧を一緒に作りながら伝統を伝え、次世代へと繋いでいます。次は、どんな想いが込められた大凧が作られるのかとても楽しみですね。ぜひ皆さんも、世界凧博物館 東近江大凧会館へと足を運んで、東近江が誇る大凧の文化に触れてみませんか?