漢字テストが出される明石焼き屋さんがあると聞きましたが、本当でしょうか?探偵さん、試しに受けてきてください。
明石焼きといえば、ふわふわの生地を、アツアツのお出汁にくぐらせていただく兵庫県・明石の名物。地元明石では玉子焼きと呼ばれています。ハフハフしながらほおばると、玉子の甘味に出汁の塩気を吸い込んだ味わいが口いっぱいに広がって、ついつい何個でもパクパク食べちゃいますよね。
JR明石駅近くにある「魚の棚商店街」。明石では「うおんたな」の愛称で親しまれています。こちらには、明石だこや明石鯛といった近海ものの鮮魚や海産物を扱う商店が軒を連ねており、この商店街を中心に、明石焼き専門店が約70軒も市内にあるのだとか。
まずは明石焼きについて、明石観光協会の福田さんにお聞きしてみました。起源は、江戸末期に盛んにつくられていた模造サンゴの「明石玉」。明石玉とは卵白を接着剤として硝石(しょうせき)などを固めたもので、かんざしや首飾りなどの装飾品として製造されてきました。「そこで余った卵黄を有効活用するために誕生したのが玉子焼(明石焼)です」と福田さんは教えてくれました。この玉子焼きを明石焼きと呼ぶようになったのは、今から約30年前。明石のまちをPRするため、地名を冠した明石焼きになったそうです。明石焼き誕生に、そんな歴史があったのですね!
さて、明石焼きについて勉強した後は、お店の調査です。さっそく調べたところ、市内にある「明石焼き ゴ」が、漢字テストを実施していると判明。どんな漢字テストが出てくるのか、探偵たちはやる気満々で行ってきました!それにしても「ゴ」ってヘンテコな名前ですね。後で店名についても聞いてみようっと。
のれんをくぐると、店内の壁には膨大な漢字が、まるで居酒屋のメニュー表のようにズラリとディスプレイされています。「1,200ぐらいの漢字を入れようと思ったんですが、貼ってみたら字が小さすぎて読めなくてね」と教えてくれたのは、店主の小谷さん。現在、598個の漢字が貼りつけられています。
いすに座ると、さっそく漢字の小テストが出されました。「ゴ」では、入店者には全員この漢字テストが出題されます。小テストの出題は10問。制限時間は「商品ができあがるまで」。よし、頑張るぞ!目指せ、全問正解!
挑戦してみたものの、なかなか難しい……。つい調べちゃおうかなとスマホを取り出したところ、「スマホなどで調べるのは禁止ですよ!」と小谷さんに注意されました。「1テーブルで1枚のテストを配るので、グループ内で相談するのはOKです」とのことでした。探偵の結果は、10問中6問正解。「6問正解で5%引き、8問正解で10%引き、全問正解で20%引きになります」と小谷さん。正解が多いほど、料金の割引率が高くなるんですね。小谷さんは、「解けないと悔しくて、またチャレンジしに来たというお客さんが、他にもたくさんいます」と教えてくれました。どうやら、再来店のきっかけにもなっているようです。
テストが終わったところで、明石焼きが運ばれてきました!生地はふわっふわの食感に仕上げるため、小麦粉のでんぷん質の部分(浮き粉)を使用。口の中で優しくほどけていく食感がたまりません。具材はたこ以外に、えび、チーズ、キムチ、あなごなど10種から選べます。お好みで1個の中に複数の具材を入れられるのも、同店ならでは。
明石焼きを食べながら、漢字テストやお店のことを小谷さんにお聞きしました。まずは、探偵が最も気になる質問から。常連になると、テスト内容を知っているからいつも満点をとれてお得なのでは?「いいえ、3日に1回は問題をつくり直しているので、頻繁に足を運んでも同じ問題に当たらないよう工夫しています」とのこと。10問中5問は、朝刊から無作為に漢字をピックアップ。4問は壁のパネルからチョイスして、残り1問は小谷さんが「これは難しいだろうな」と思う漢字を選ぶそう。「全問正解が出るのは、月に10人ぐらいでしょうか」。
また、我こそは漢字博士と自信満々の方や、もっとお得に明石焼きを食べたい方は、ぜひ壁の漢字問題にチャレンジを!全問正解できたら、なんと1年間、明石焼きが無料で食べ放題に!これまで9名が全問正解しています。最初にクリアしたのは、当時63歳ぐらいの男性客。中には当時小学3年生だった男の子(現在は京大生)や、クイズの女王・女優の宮崎美子さん、お笑いコンビの千鳥さんなど有名人も。
続いて、このお店をはじめたきっかけを聞いてみました。小谷さんは子どものころから明石焼きが大好きでした。成人してからは写植メーカーで営業マンをしていましたが、いつかは明石焼きのお店を出したいという夢を持つように。いよいよ念願かなって、2002年12月には「ゴ」をオープンさせました。漢字テストをはじめた理由をお聞きしたところ、「私は元々イラチな性格やから、食事に行って料理を待つのが嫌でね。お客さんを待たせている間、何か楽しんでもらえることはないかと考えました。そのとき、昔から仕事で印刷機を扱っていて漢字によく触れ合っていたので、時間潰しには漢字だ!と思ったところがあります」とのことでした。
最後に、気になっていたもう一つの疑問も聞いてみました。店名が「ゴ」というのはなぜですか?もしかして、ゴリラが関係しているとか?「そうなんです。私はゴリラに似ているからあだ名もゴリラだったのでね、店名もゴリラにしようと思ったんです」。それが、どうして一文字の「ゴ」だけに?「実は、将来姉妹店を展開したいと思っていて、2軒目は『リ』、3軒目は『ラ』にしようと考えています」と教えてくれました。
漢字だらけの明石焼きの店「ゴ」は、賢くなるし、おいしいし、楽しい!一挙両得どころか、一挙三得のお店でした。皆さんも漢字テストに挑戦してみては?