大阪にたこ焼き味のラムネがあるようです。そのほかにも変わった味があるのでしょうか。気になるので探偵さん調べてきてください!
ラムネといえば、日本の夏の風物詩。独特の形をしたガラスの瓶と、カランコロンと心地よく鳴るビー玉の音、夏祭りの夜に駄菓子屋さんで親しんだラムネの味わいは、清涼感がたっぷり。ところが、ラムネのさわやかなイメージを覆す、たこ焼き味のラムネが大阪にあるとのこと!
そんな変わった味のラムネをつくっているのは、大阪市都島区にある清涼飲料水メーカー「ハタ鉱泉」。ラムネ生産量の国内シェア50%以上を占めています。本当にたこ焼きの味がするラムネなのか、探偵たちは調査を開始しました。
案内してくれたのは代表取締役社長の秦さん。案内された部屋に入ると、棚の上にも前にもズラーッと並ぶ、色とりどりのラムネにびっくり!イチゴやスイカ、メロンなどのフルーツから、たこ焼き味らしきラムネも発見。なぜそんな味のラムネをつくったのか、さっそくうかがってみました。
「10年ほど前やったかいな。大阪の新しい名物をつくりたくて、大阪の有名なもんって何かなぁって考えたところ、粉もんが思い浮びましてん。粉もんといえばたこ焼きやな。よっしゃ、たこ焼きのラムネを出してみよう!ってなりましてん」と秦さん。「っていうのは表向きのコメントで、ホンマのところは遊びやな」とお茶目に笑います。
「まぁまぁ、飲まんことにはわかりませんやろ」とコップに注がれたのが、「たこ焼風ラムネ」です。恐るおそる飲んでみる探偵たち。ところが、あれ?意外といける!というのが一口飲んだ正直な感想。たとえるなら、駄菓子屋さんで売っている水で溶いて飲むコーラ味の粉末ジュースのような味わいです。しかし、余韻として残るのがソースの風味。次第に普通のラムネとのギャップが大きくなっていきます。「ハハハ!まずいでっしゃろ。まぁ私はこんなけったいなもん飲んだことないけどね」と秦さん。ええー!ほんとに!?
社員の方々は、社長の命に驚いたのではないでしょうか。「ところが、当時は地サイダーが世間的にブームになっていたもんやから、みんな真面目に取り組みましたよ」。社内の調合担当者と香料メーカーが相談しながら試作品をつくり、社員で試飲を繰り返して完成。2008年に販売が開始されました。同時に、ネット上ではあまりのまずさにかなり話題になったそう。しかしながら、なぜか売れ続けて、2018年現在で販売本数は累計100万本を突破するというヒット商品になっています。
今回調査のきっかけになったたこ焼き風味のほかにも、約100種類のフレーバーがあるそうです。その中でも、目を引く変わりダネラムネを試飲させてもらいました。
見た目から気になっていたのが、「キムチ風ラムネ」。こちらは、大阪の名物スポットでもある鶴橋コリアンタウンをイメージして、開発を思いついたそうです。ラムネとはとても思えない、イチゴ味だったらいいのにとつい思ってしまう赤色です。プシュッとビー玉を落とした瞬間から、漂ってくるキムチの香り。ゴクリと飲むと、ピリリとした辛さとニンニク臭が!甘いラムネとの組み合わせは、表現できない味になっています。これは、ヒドイ!
続いて「クリームシチューラムネ」。もはや大阪名物でも何でもありません。こちらは、とあるアイスメーカーが出した、シチュー味のアイスキャンディに触発されてつくったもの。トレンドにも敏感な秦さんです。こってりとしたクリームシチューを連想させる香りが食欲を刺激しますが、飲んだ後に炭酸でシュワシュワしたラムネの風味が押し寄せます。クリーミーなシチューと炭酸との組み合わせに、不思議な気持ちにさせられます……。
これ以外にも、食べるラー油のブームを受けて開発した「ラー油風ラムネ」、大阪のおかんのカレーをイメージした「カレー風ラムネ」など、珍妙な味がたくさん。ところでこれまでに、社長の奇抜なアイデアから開発に進んだものの、売れなくて販売中止したものや商品化できなかったものはあるのでしょうか?そんな疑問に秦さんは「もちろんあるで!」とのこと。その筆頭が「道頓堀ラムネ」。道頓堀の水をイメージして、臭いも含めリアルにラムネで再現してみたのですが、「キョーレツすぎて全然売れへんかった。いちびりすぎたな」とは秦さん談。また、「たまねぎラムネ」もあったそうですが、実際にすりおろして使うため、「目に染み過ぎてつらいからやめてください!」と社内の調合担当から直談判されたため、中止となりました。
そんな変わりダネのラムネは、本社1階にある製造工場でつくられています。ここには製造ラインが4ラインあり、2ラインがノーマルなラムネ製造用。残り2ラインが変わりダネラムネ製造用となっています。主力商品のノーマルなラムネは、なんと1日16~18万本も製造しているとのこと!見ていき~とのことで、工場内を営業部の中田さんに案内してもらいました。
ベルトコンベアに乗って運ばれてくるビー玉入りのガラス瓶。洗浄した後、ラベルと熱で密着。中身を充てんさせると同時にビー玉で密栓し、その後箱詰めされ倉庫へと運ばれていきます。
製造工場はラムネが欲しくなる夏が忙しいのかと思いきや、一年中フル稼働だそうです。その理由は、国内のみならず、海外への輸出もしているからです。北米、中国、ユーロ圏、東南アジア、ブラジル、オーストラリアや中近東など、今では44の国と地域に及びます。
世界に広がるラムネとともに、秦さんのいちびりラムネDNAも3代目の息子さんに引き継がれました。息子さんが考案した「サクラクレパス」とのコラボラムネが、最近話題になっています。赤いラムネはイチゴ味かと思うとパイン味で、イチゴ味は緑色のラムネだったりと、ラムネの色から想像する味が違うものになっているところが、いちびりDNAの成せる技といったところでしょうか。
今回調査した「たこ焼き風ラムネ」は、大阪人ならではのいちびりから生まれたもの。そして、「ハタ鉱泉」は、自由で柔軟な発想で商品開発に取り組み、大阪から日本へ、世界へラムネを届けるグローバルな企業だということもわかりました。これからどんな新しい「いちびりラムネ」が世界に広がっていくのでしょうか。気になった方は、いちびりラムネの味をチェックしてみてくださいね。