京都に落書きしてもいいお寺があると聞きました。探偵さん、ぜひ潜入捜査をお願いします。
日本はもちろん、世界の多くの遺跡や文化遺産に落書きをされたというニュースがたびたび取り上げられています。中にはスプレーをふきつけたり、名前を削ったりと貴重な史料が傷つくような悪質なものも……。24時間体制で職員を配置したり監視カメラを設置したりと、各施設で工夫をこらしているようですが、京都には落書きをしてもいいというお寺があるとのこと!
探偵が調べたところによると、それは京都府八幡市にある「単伝庵(たんでんあん)」。地元では通称“らくがき寺”と呼ばれて親しまれており、日本ではおそらく唯一、参拝者が落書きしても許されるお寺です。さっそくその場所を訪れてみた探偵たち。
山門をくぐると手入れの行き届いた庭があり、思わず心奪われます。美しいお寺の一体どこに、落書きがあるのでしょうか。山門の正面にある「大黒堂」に足を踏み入れてみると、中には白い壁一面にびっしりと書き込まれた落書きを発見!
どんなことが書かれているのかと読んでみると、「無病息災」「家内安全」「商売繁盛」にまつわる真面目な願いごとばかりです。中には、「空手でなかずにがんばれますように」といったものも。
※住職さんに撮影の許可をいただきました
落書きと言っても、イラストが描いてあるわけではありません。「神社の絵馬と同じような役割で、大願成就したいことを書いていただくようにしています」と語るのは、住職の堀尾さんです。
堀尾さんによると、単伝庵は江戸時代後期に京都妙心寺の単伝和尚が人々の不慮の災難救済のため創建。昭和20年に当時の住職が亡くなったのち、しばらく空き寺になっていました。昭和30年に堀尾さんの師匠にあたる方が再建に乗り出して、昭和32年に現在の大黒堂を建立。その際に、さまざまな援助をしてくれた方への感謝として、願いごとを書いてもらおうと考えました。絵馬にではなく、お堂の壁に書いてもらうことで、大黒さまによく見えるようにと始めたのだそうです。
意味のないいたずら書きがないのはそのため。「大黒さまが見ていると思ったら、自然と真面目な気持ちで壁に向かうようになるからかもしれませんね」と教えてくれました。
ちなみに、「らくがき寺」と呼ばれるようになったのは再建から間もないころ。昭和30年代半ばごろからテレビや雑誌などの多くの媒体で、「落書きができる寺」として取り上げられたことが徐々に浸透。今では単伝庵より“らくがき寺”という通称の方が広く知られており、北海道など遠方から書き込みにくる人も多いそうですよ。
白壁は、年末に向けてびっしりと文字で埋め尽くされていきます。大みそかになると一面が白く塗り替えられますが、毎年塗り替えることにも理由があるそうです。「人は自分の努力だけでは成就できないこともあり、他の人に後押しされて夢が叶うことも。これまでに書きこんだ人たちの思いが、次に書いた方の願いを後押ししてくれると考えています」と堀尾さんは語ります。
「自分も書いてみたい」と思ったら、祈願料として300円をおさめて白壁に水性ペンで書きましょう。筆を入れる際はできる限りたくさんの方が書けるように、一人で多くのスペースを占領しないようにしましょう。目安になる枠が置かれていますので、スペース配分に自信がない方はこれを利用するのがおすすめ。白壁以外に書くのはNG。柱や仏具もダメですので、ご注意ください。
願いごとを書いた後に、書き込み用紙に住所・氏名・生年月日を記入しましょう。そうすれば、願主の誕生日(たとえば3月3日生まれなら毎月3日)に合わせて祈祷してくれるので、ご利益満点!しかも、誕生日には住職からの誕生日カードが届けられるという、ユニークな試みも思わず心が温まります。
ここで探偵たちもペンを取り、この枠を利用しながら願いごとを書くことに。壁に書いたのは……。
探偵たちは、「炎の探偵社」をますます盛り上げていきたいという思いを込めてメッセージを残してきました。皆さまもルールを守って、願いを込めて落書きしてみてはいかがでしょうか。