マイ大阪ガスは、2021年3月にポイント制度などのリニューアルを行いました。この記事はリニューアル前のもののため、ポイント関連の記述を含め、記述内容が古い場合がございます。あらかじめご了承ください。
1月
自然の恵みに満ち溢れるハワイ諸島 paul bica(flickr)
太平洋の真ん中に位置し、オアフ島・ハワイ島などの島々からなる米国ハワイ州は、常夏の気候、美しい自然、そして暖かいもてなしの心「アロハ・スピリット」などをお目当てに、年間800万人を超える観光客が訪れるリゾート地です。
このハワイが、再生可能エネルギー100%を目指して動きはじめました。再生可能エネルギー比率を2030年までに70%(省エネ含む)、2045年までに100%まで高める法案(下院法案第623号)がハワイ州会議で承認されたのです。
ハワイ州では、年間40億ドルが自動車のガソリンや発電の石油燃料に使われており、大型ホテルが多いオアフ島でその7割が消費されています。電気料金は非常に高く、1kWhあたりの電気料金単価は約0.34ドルと、米国本土と比べて3倍以上となっています。*1
ハワイで使われている電力は、その7割以上が石油による火力発電により賄われています(2012年時点)。石油価格はこの30年で約7倍まで高騰しており、ハワイでの電気料金単価はその影響を受けて高値止まりし、経済を圧迫する一因ともなっています。そこでハワイ州では、太陽光・風力・海洋などに恵まれたその環境を活かし、再生可能エネルギーにシフトすることを決定しました。加えて、州政府には、観光や軍事に依存するハワイ経済の3本目の柱として、自然エネルギーを新たな産業の柱にしていこうという狙いもあるようです。
ハワイ州と米国本土の電気料金の比較(1kWhあたりの平均単価)。出典:ハワイ州エネルギー局
実は、再生可能エネルギーを100%に目指す法案が承認される以前にも、州政府が設定した「ハワイ・クリーン・エネルギー・イニシアチブ」という重要な布石がありました。これは、2030年までに省エネを推進して消費電力を30%減らし、さらに、必要な電力の40%を再生可能エネルギーで供給することを目標にしたプロジェクトです。
同プロジェクトでは、まずはエネルギーの使い方に関心を持ってもらうため、自分の家やオフィスが使うエネルギー量を理解した上で、自分の省エネ行動の積み重ねがどれだけ節約・省エネに有効か把握できるプログラムが開発されました。加えて、電力を多く使うエアコン・洗濯機などをエネルギー効率のいいものに買い替える場合、一部費用を国が補助する施策も導入。その結果、家庭・オフィス・交通それぞれの分野を合わせて、2013年時点で消費電力の15.7%を削減することができました。
一方、再生可能エネルギーの活用についても、積極的な取り組みがなされました。豊富な日照量を活用した太陽光発電の設置数は、補助金の後押しもあり、2008年から2013年までの5年間で20倍まで増加。また、太陽エネルギーを熱としても活用しようと、州政府は2010年以降、新築住宅への太陽熱温水器の設置を義務づけました。
また、島に吹く風も重要なエネルギー資源の一つです。マウイ島やハワイ島だけでなく、2011年には、オアフ島北部のノースショアに12基の風車が導入され、7,700世帯分の電力を生み出しています。さらに、火山のあるハワイ島では地熱発電所も稼働しています。この発電所により、ハワイ島ではエネルギーの50%近くを再生可能エネルギーでまかなうことができています。
住宅にソーラーパネルや太陽熱温水器をつける家庭が増えている
さまざまな資源を組み合わせて、再生可能エネルギー推進への道を歩むハワイ州ですが、注目したいのは、豊富な海洋資源を使った「海洋温度差発電」です。深海(水深約1,000m前後)から冷たい海水を汲み上げ、太陽によって温められた海洋表層の温水との温度差を利用して熱機関を動かします。表層の暖かい温水を使って、アンモニアなどの沸点が低く蒸発しやすい液体を気化し、気体によって発電タービンを回転させ電力を得るしくみです。その後、深層から汲み上げた冷たい海水によって、気化した液体を冷却して再び利用することができます。
太陽光発電や風力発電は天候により発電量が左右されるという難点がありますが、海洋温度差発電は深層水の温度が一定のため、設備の稼働率が90%を超える安定した発電方法です。ハワイ州は海洋温度差発電を 2015 年までに 35メガワット、2030 年までに 365メガワット 以上導入する目標を掲げています(オアフ島のピーク時の電力使用量は1,200メガワット程度)この発電方法は、35年ほど前から、ハワイ島コナにある「Natural Energy Laboratory of Hawaii(通称 NELHA)」で研究が行われています。
約130万平方メートルの敷地面積を持つ同研究所では、海洋温度差発電だけでなく、海洋深層水を多用途で活用するための研究も盛んです。たとえば深層水を使った冷房システムは、研究所のビルで実際に使われており、ワイキキのホテルなどでの活用も検討されています。さらに、魚介類の養殖や、農業への活用、飲料水や化粧品の製造にも利用するなど、その研究は多岐にわたります。
NELHA(ハワイ州立自然エネルギー研究所)にある海洋温度差発電のデモプラント
再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組むハワイ州で、さらに一歩進んで、スマートメーターなどの通信・制御機能を活用してエネルギー効率活用を進めるための「スマートグリッド」の実証実験も始まっています。たとえばマウイ島では、天候に左右されやすい風力発電の出力変動を、配電制御・電力需給制御システムで緩和し安定的に配電できるようにしたり、余剰電力を電気自動車の蓄電池に貯める仕組みなどが検証されています。
ハワイ州では、近い将来、スマートグリッドの技術を効果的に組み合わせ、ハワイの各島に存在する自然のエネルギーを組み合わせ、電力需要の多いオアフ島への送電を可能にしたいという、ビジョンも描かれています。
現在、ハワイでは多数のエネルギー関連プロジェクトが進行しています。観光だけでなく、クリーンエネルギーの島へ。ハワイが目指す未来が実現する日が来るのも遠くないかもしれません。
*1 DBEDT2013
マウイ島の風力発電を最大限活用できるようスマートグリッドの実証実験がはじまっている Dave Dugdale(flickr)
Word:Yayoi Minowa