炎の探偵社

ログインして調査を依頼

調査FILE

1

6

0

大阪「道頓堀」の狭い路地で聞こえた
陽気な声を調査!

2024/07/29
依頼内容

先日、大阪「道頓堀」の商店街で、赤提灯がたくさんある狭い路地を見つけました。何かあるのかなと足を踏み入れたら、「あんた、ええ人やなぁ~」と、どこからか陽気な声が聞こえてきたんです。びっくりして路地から出てしまったのですが、あれはなんだったのかとっても気になります。探偵さんぜひ調査してください。

赤提灯のある路地を探しに「道頓堀」へ 道頓堀といえば、ショッピングやグルメなど、たくさんのお店が並ぶ大阪の有名な観光地ですね。探偵も何度も足を運んだことがあるのですが、赤提灯のある狭い路地というのは記憶がなく……。

詳しいお話が聞けそうな、道頓堀商店街の組合に問い合わせたところ、「道頓堀にある狭い路地……それなら、吉里さんにおうかがいするとわかるかもしれません。ご紹介しましょう」と、待ち合わせの段取りをつけてくださいました。さっそく、道頓堀に向かいます!

お店が並び、活気あふれる道頓堀!
お店が並び、活気あふれる道頓堀!

吉里さんとの待ち合わせ場所は、Osaka Metro「なんば駅」から徒歩5分ほどのところにある、老舗のうどん屋「道頓堀 今井」の前。待ち合わせの時間より早く着いたので、少し散策でもしようかとまわりを見わたしていたら、うどん屋さんのすぐ東隣に赤い提灯が。近づいてみると、細い路地があります。

「赤提灯」と「狭い路地」、もしかしてここが依頼者さんのおっしゃっていた場所……!?
入口の看板には、「浮世小路(うきよこうじ)」と書かれています。

道頓堀筋から見える「浮世小路」
道頓堀筋から見える「浮世小路」

路地の中は、まるで昭和初期にタイムスリップしたかのようなレトロな雰囲気が漂っています。足を踏み入れようかと覗き込んでいると、肩をポンポンと叩かれました。

びっくりしてふり返ると、「こんにちは、探偵さんですか?」と華やかな法被を着た男性が声をかけてくれました。「浮世小路へようこそ。私が吉里です。道頓堀の赤提灯のある路地について知りたいそうですね。なんでも質問してください」とにっこり。

華やかな法被を着た吉里忠史さん。浮世小路ではいつもこの格好だそうです。
華やかな法被を着た吉里忠史さん。浮世小路ではいつもこの格好だそうです。

「道頓堀の赤提灯のある路地から、突然陽気な声が聞こえてきた」というお話を聞いて調べていたところ、吉里さんをご紹介いただきました。声の正体について、ぜひ詳しく教えてください。

「赤提灯のある路地から聞こえる陽気な声……。なるほど、お探しのものはきっとここ、『浮世小路』にあると思いますよ。案内しますので、一緒にいきましょう」。

突然流れる陽気な声。その正体は……!? 吉里さんのあとについて狭い路地に入っていくと、両サイドの壁には、大正ロマンを感じさせるポスターやチラシ、立体的な地図などがずらりと展示されています。思わず立ち止まって見ていると、路地のなかほどあたりまで先に進んでいた吉里さんが、「お探しのものはこちらですよ」と、手招きをしてくれました。
駆け寄ってみると……吉里さんの前に小さな祠が見えます。

路地の中にある小さな祠
路地の中にある小さな祠

「陽気な声が聞こえた、というのはおそらくこちらだと思いますよ」と、吉里さん。この小さな祠はいったい……!?と戸惑う探偵に、「これは、神社です」と教えてくれました。

え!?ここに神社があるんですか?と驚いていると、「ええ、おみくじも引けるんですよ」と、吉里さんは笑いながら説明を続けてくれました。「1回100円のおみくじです。よかったら今の運勢をみてみませんか?」。

神社の下には100円を支払ってから引くことができるおみくじがあります
神社の下には100円を支払ってから引くことができるおみくじがあります

今の運勢……それはとっても気になりますね。ぜひ引きたいです!と、正面右前にある投入口に100円をチャリン。コロコロっと硬貨がすべり落ちていくような音がしたと思ったら……「これが浪速名物、一寸法師のおみくじや!ご利益、開運~」という関西弁の陽気な声が流れはじめました!

こ、この声は!「ええ、お探しの陽気な声は、これだと思います」と、吉里さん。なるほど、依頼者さんがおっしゃっていた声の正体は、路地の中にあるおみくじの声だったんですね。「道頓堀で、赤提灯に路地、陽気な声といえば、このおみくじですね(笑)。毎回、声が聞けるわけではないので、探偵さんたちはラッキーでしたね」。

いつでも流れるのではないのですね、声が聞けてよかったです!ところで、聞いた話によると、「あんた、ええ人やなぁ~」という声だったそうですが、今のは違いますよね?「そうなんです、実はいろんなパターンがあるんです。ほかにどのような声が聞こえるかは、また次の機会のお楽しみに」と、吉里さんは楽しそうに答えてくれました。

「さ、肝心のおみくじはこちらですよ」と、吉里さんが器のようなところから、筒状に丸められた紙を取りだすように案内してくれました。ひとつ手に取り広げてみると、かわいいイラストと「ラッキーなもん」という文字が。ラッキーなもん……ラッキーアイテムの大阪弁ですね(笑)。

かわいいイラストとともに大阪弁で書かれたおみくじ
かわいいイラストとともに大阪弁で書かれたおみくじ

「そうなんです、おみくじはすべて大阪弁で書かれているんです。観光客にも喜ばれて、持ち帰る方も多いんですよ」と吉里さん。
裏面には、運勢や開運についてのアドバイスが書いてあって、思い当たることもちらほら……。
大阪弁の陽気な声に、おみくじ。なんだかパワーをいただいたような気がします。

路地をはさんだ神社の向かいには、おみくじがくくりつけられていました
路地をはさんだ神社の向かいには、おみくじがくくりつけられていました

ところで、どうしてここに神社をつくられたのですか?「一寸法師という有名なおとぎ話がありますよね。実は、一寸法師は大阪出身なんです。京都で鬼退治をし、お姫さまと結婚して出世、その後一族が栄えたとされています。この一寸法師にあやかった神社をつくって、商売繁盛や家内安全、縁結びを祈願できたら、皆さんに喜んでもらえるのではと思ったんです。浮世小路の中につくろうとすると、このサイズ感になりました」。
なるほど、大阪出身の一寸法師をもとに神社をつくられたのですね。この狭い路地にぴったり収まってます!

情緒豊かな歴史が宿る「浮世小路」 ところで、浮世小路には、レトロな雰囲気のお芝居やお笑いのポスターがたくさん展示されていて、趣がありますね。どうしてこのようにされたのですか?

「私はもともとイラストレーターをしていましてね、道頓堀にたくさんあった芝居小屋に挿絵画家として、いろんな絵を提供していたんです。そのつながりで道頓堀の商売人さんや芸人さんたちとも顔なじみになり、道頓堀に愛着を持つようになりました。

壁には、吉里さんが集めた資料(私物)がずらり
壁には、吉里さんが集めた資料(私物)がずらり

道頓堀のことをもっと知りたい、歴史を残していきたいと思い、30代半ばから、昔の資料を集め、道頓堀の調査をするようになったんです。今86歳だから、もう半世紀以上になりますね」。50年もの間、道頓堀について調べているなんてすごいですね!「資料がある程度集まったころに、これらを展示する場所がつくれないだろうかと、いろんなところに声をかけていきました。そして、縁あって、この浮世小路を活用できることになったんです」。

「浮世小路は、もともとこの路地の名称で、道頓堀筋からミナミの中心だった法善寺横丁へと続く小路として、昭和のなかごろまでは行き交う人も多かったんです。時代の流れとともに徐々にビルに囲まれ日の当たらない路地になるにつれて、市民の方が通りづらい雰囲気となり人通りが少なくなっていきました。昔のような明るさを取り戻したい、という街の人の想いもあって、私が発起人になり有志が集まり、懐かしい雰囲気を演出して、観光できる路地に生まれ変わらせる活動がはじまりました」。

明治末期の地図を元に吉里さんが描いた道頓堀界隈の地図も展示されています
明治末期の地図を元に吉里さんが描いた道頓堀界隈の地図も展示されています
細部までつくり込まれたペーパークラフト
細部までつくり込まれたペーパークラフト

なるほど。道頓堀の街の人と吉里さんの想いが一致したんですね。
「多くの人が浮世小路を盛り上げることに賛同してくれて、寄付も集まりました。おかげさまで、昔の道頓堀の街を表現した立体のペーパークラフトや、庶民の暮らしぶりを描いた絵などを飾り、皆さんに道頓堀の歴史を知ってもらえるように、ずいぶん贅沢につくらせてもらいました。道頓堀筋と法善寺横丁を結ぶ幅約1.2m、長さ約50mの『浮世小路』が今の形になったのは、2004年のことです」。

「まっすぐ道頓堀を歩いているだけだと、気づいてもらいにくい場所なのですが、ここを目的に立ち寄ってくださる方もいらっしゃるんですよ。最近では外国の方が来られることも増えて、道頓堀の歴史や古い時代の面影を見て感じていただけるのはうれしいですね」と吉里さん。

昭和初期の庶民の暮らしを描いた絵は、季節ごとに入れ替わる
昭和初期の庶民の暮らしを描いた絵は、季節ごとに入れ替わる

声の正体を調べて出合った浮世小路は、明治から昭和初期にかけての看板やイラストなどがあり、道頓堀の歴史を垣間見ることができる場所でした。
浮世小路を維持するための大がかりな修繕はプロに依頼されますが、ふだんは吉里さんおひとりで掃除をしたり展示物の絵柄を変えたりして、維持に努められているそうです。

近くを通られたときは、路地にも足を踏み入れて、おみくじを楽しんだり道頓堀の歴史を学んだりしながらレトロな雰囲気を体験してみてはいかがでしょう。

神社の一寸法師と一緒に記念撮影
神社の一寸法師と一緒に記念撮影
調査完了
  • 炎の探偵社では「関西にまつわる疑問や気になること」を募集しています。
    あなたのギモンをお聞かせください。
    投稿の中からセレクトして「炎の探偵社」が調査します!
  • ログインして調査を依頼

※当サイトのコンテンツの二次利用はご遠慮ください。