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命をかけて村を救った!
四條畷に眠る「龍の伝説」

2024/01/09
依頼内容

四條畷市に住むおばあちゃんのところへお正月のあいさつをしに行ったら、「今年は『龍尾寺』で龍の神様に会えるから、行ってきたらいいよ」といわれました。「龍の神様に会える」とはどういうことでしょう?とっても気になるので、探偵さん、調査をお願いします。

空想上の生き物「龍」に会えるなんて話、はじめて聞きました。しかも「今年は会える」とは、いったいどういうことなのでしょうか!?おばあさまの言葉の謎を解き明かすために、探偵たちはさっそく「龍尾寺(りゅうびじ)」へと向かいました!

JR学研都市線の四条畷駅からバスで15分ほど。生駒山のふもとにある龍尾寺に到着しました。ここで龍の神様に会える……!?胸が高鳴るのを抑えつつ、龍尾寺に続く石段を上っていきます。

龍尾寺の入口
龍尾寺の入口
龍尾寺に続く石段
龍尾寺に続く石段
上った先に、本堂がありました
上った先に、本堂がありました

石段を上りきると本堂があり、雨戸には、天高く舞い上がったような龍の絵が描かれています。

本堂の雨戸に描かれた、天高く舞う龍の絵
本堂の雨戸に描かれた、天高く舞う龍の絵

稲妻が走るなか、龍が玉のようなものを持っています。ここに描かれているのが、龍の神様なのでしょうか?しばらく見入っていると、「山奥までようこそおいでくださいました」と男性が声をかけてくれました。なんと約1300年前から続く龍尾寺のご住職、楠本さんです。

龍尾寺のご住職・楠本さん
龍尾寺のご住職・楠本さん

「今日は、龍について調べに来てくださったんですね。まずは当寺と龍の関係からご説明しましょう」。そういいながら楠本さんは、本堂の中へと案内してくれました。

「龍尾寺は、名前に『龍』が入っていますが、ご本尊は聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)で、龍ではありません。しかし当寺ができたきっかけとなったのは、まさしく龍なんです。いわば『第二のご本尊』といってもいいかもしれませんね」。お寺の説明をしながら楠本さんが見せてくれたのは、代々龍尾寺に伝わる巻物「龍尾記」です。

江戸時代初期に書かれたといわれる巻物「龍尾記」
江戸時代初期に書かれたといわれる巻物「龍尾記」

この巻物には、龍尾寺建立時からの歴史などが書かれていて、代々大切に受け継がれてきたそうです。「それでは、この巻物に書かれている、『龍の伝説』についてお話をしましょう」。

――――むかし、河内の国の飯盛山のふもとで、ひどい干ばつの年がありました。村人が苦しんでいたところを通りがかったのが、「行基(ぎょうき)」というお坊さん。行基は、「私が雨ごいをしてあげましょう」と枯れ果てた滝つぼに座りながら、何日もお経を唱え続けたそうです。

そして1週間ほど経ったある日、急に空が真っ暗になり、ものすごい稲妻が走ったかと思うと、突然、行基の目の前に龍があらわれました。

雨ごいをする行基の前に舞い降りた龍。東口恵子著『さかれた龍』より
雨ごいをする行基の前に舞い降りた龍。東口恵子著『さかれた龍』より

驚く行基に、龍は悲しそうな顔でいいました。「雨を降らせてあげたいのですが、私はまだ修行の身。許しもなく雨を降らせば、龍神の怒りにふれ、身をさかれてしまいます。しかし、村人たちを救うことができるのなら、私はよろこんで身をささげましょう」。そういうと、天高く昇っていきました。

雨を降らすために天高く昇る龍
雨を降らすために天高く昇る龍

龍の姿が空のかなたに見えなくなると、まるで滝のような大雨が。待ち望んでいた雨が、いきおいよく降りはじめたのです。村人たちは大喜び、行基と龍に感謝しました。

雨があがったあと、行基と村人たちは龍が身をさかれたのではないかと心配になり、あちこちを必死にさがしました。そしてついに、山あいの竹やぶに龍の尾だけがひっかかっているのを発見したのです。さらに山奥へ進むと、頭とおなかも見つかりました。

行基と村人たちは、自分の命と引き換えに雨を降らせてくれた龍に泣きながら感謝をささげ、頭の落ちていたところに「龍光寺(りゅうこうじ)」、おなかが落ちていたところに「龍間寺(りゅうけんじ)」、そして尾が落ちていたところには「龍尾寺(りゅうびじ)」を建てて、龍の成仏を願ったそうです。――――

龍尾寺の本堂には、お経を唱え続け、龍を呼び寄せたとされる行基の像がまつられています
龍尾寺の本堂には、お経を唱え続け、龍を呼び寄せたとされる行基の像がまつられています

自身の命をかけて村人たちを救った心やさしい龍の伝説が、ここ四條畷に残されていたんですね。「はい。龍尾記によると、その龍の尾をまつってつくられたのが、この龍尾寺なんです。当時の天皇・聖武天皇も龍の伝説にいたく感動され、龍をまつる寺を早く建てるように、とのお触れを出されたそうですよ」。

なるほど、お寺の名前の由来がよくわかりました。龍は空想上の生き物だと思っていましたが、もしかしたら本当にいたのかもしれないですね。探偵の言葉に楠本さんは微笑みながら「どうぞこちらへ」と一枚の水墨画の前に案内してくれました。「これが当寺に代々伝わる、龍の尾の絵です」。

「龍の尾」を描いた水墨画。江戸時代後期に活躍した絵師・岸礼(がんれい)によるもの
「龍の尾」を描いた水墨画。江戸時代後期に活躍した絵師・岸礼(がんれい)によるもの

おぉ……!これが龍の尾ですか。目の前に現れたのは、岩に力強く巻きついた長い尾の掛け軸。竹やぶで見つかったときの状況でしょうか。「そうかもしれませんね。実はそのときに見つかった『龍の尾』とされるものが、ここ龍尾寺に眠っているんです」。

龍の尾がここに残っているんですか!?驚く探偵たちに楠本さんは、「はい、そうなんです。ふだんは見ていただくことができないのですが、辰の年には御開帳をしており、参拝にいらっしゃった皆さまにご覧いただいています」と教えてくれました。なるほど、今年は辰年!おばあさまがおっしゃっていた「今年は龍に会える」というのは、このことだったんですね。

「ただ……せっかく来てくださったのですが、今はご覧いただけないんです」。えっ、それはまた、なぜでしょう?「御開帳するのは、辰年の、三が日と4月から5月、10月から12月の間なんです。ぜひ、そのころにまたお越しいただき、ご覧になってくださいね」。12年に一度の貴重な機会。必ずまた来ますので、そのときはよろしくお願いします!

龍の尾を見られるのが楽しみ!
龍の尾を見られるのが楽しみ!

最後に、辰年はどんな年なのか教えてもらいました。「辰年は陽の気が動く年です。活力旺盛になって大きく成長するため、仕事運が上昇したり、新しいことに挑戦したりするのにぴったりな年ですよ」。

辰年である令和6年は、まだまだはじまったばかり。皆さんも今年は何かに挑戦してみてはいかがでしょうか。

  • ※御開帳時期の詳細は、本記事公開時点(2024年1月)にて未公表となっております。

調査完了
今回取材したところはこちら
龍尾寺
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