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人形が海を渡る?
和歌山の淡嶋神社を調査

2023/02/06
依頼内容

「人形が和歌山の海を渡る」という祭事があると聞きました。ぜひ見てみたいので探偵さん、どこでおこなわれているのか、なんという祭事か調べてください。

今回、「人形が海を渡る」という、とても不思議な依頼が飛び込んできました。人形が海を……?調べてみたところ、謎を解くヒントは和歌山市加太(かだ)の「淡嶋神社」にあることがわかりました。早速現地に行ってみます!

和歌山市の西端、海に臨む淡嶋神社
和歌山市の西端、海に臨む淡嶋神社

南海加太駅から車で約10分。海に臨む堤防沿いに鳥居を発見しました。鳥居をくぐり、本殿の方へ進むと、人形、人形、人形!!!あちこちに並べられたたくさんの人形が、目に飛び込んできました!

ニャンともかわいい「招き猫」、鮭をくわえた「木彫りの熊」、ぽっこりお腹の「信楽焼タヌキ」など、人形たちがお仲間別に大集合。わっ!なんと金太郎は、背の順にお行儀よく並んでいるではないですか!

左上:福をたくさん呼んでくれそうな招き猫、右上:北海道土産の定番・木彫りの熊、左下:愛嬌たっぷりの信楽焼タヌキ、右下:お行儀よく背の順に並ぶ金太郎
左上:福をたくさん呼んでくれそうな招き猫、右上:北海道土産の定番・木彫りの熊、左下:愛嬌たっぷりの信楽焼タヌキ、右下:お行儀よく背の順に並ぶ金太郎

ところ狭しと並ぶ人形たちに圧倒されていると、「たくさんの人形に驚かれましたか?ここは人形供養をおこなう神社で、日本中から人形が奉納されているんですよ」と、宮司の前田さんが声をかけてくれました。だからこんなにたくさんの人形がいるんですね!

「一番多く奉納されるのはひな人形で、一年の間に約5万体も集まるんですよ」。ひえ~~っ、5万体も!でも、ひな人形たちは見あたりません……。いったいどこにいるのでしょう?「ひな人形たちは、本殿にいますよ。ご案内しましょう」と、特別に本殿の中を見せていただきました。

淡嶋神社・宮司の前田さん
淡嶋神社・宮司の前田さん
本殿の中にはひな人形がずらり!
本殿の中にはひな人形がずらり!

本殿に入ると、わあ!華やかな衣装をまとったひな人形たちが整然と並んでいます。大きくて立派なひな人形もあれば、ミニチュアサイズのかわいいものもあります。美しいお人形たちが集まって、壮観です。

ところで、淡嶋神社は、なぜひな人形が集まる神社になったのでしょうか?「その理由はさまざまな説がありますが、当社の神様が女性の幸せを守る神様だからといわれています」と前田さん。

「当社は、少彦名命(すくなひこなのみこと)、大己貴命(おほなむじのみこと)、神功皇后(じんぐうこうごう)を三柱神としてまつっています。三柱のうち少彦名命は、女性特有の病気平癒(へいゆ)や、良縁、安産、子授けなど女性の成長を見守り、福を授ける神様なんです」。

ひな人形が奉納されるようになったのは江戸時代で、紀州徳川家が姫の初節句にひな人形を奉納したことがはじまりだそうです。子どもの健康と多幸を祈願した人形奉納の風習は民間にも広がり、現在ではひな人形のみならず、さまざまな人形が寄せられるようになったそうです。

江戸時代中期に奉納されたと伝わる、貴重なひな人形
江戸時代中期に奉納されたと伝わる、貴重なひな人形

淡嶋神社とひな人形の関係はこれだけではないそうです。「男びなと女びなのはじまりは、少彦名命(男)と神功皇后(女)の一対の御神像といわれています。また、淡嶋神社の起源となる御神像を、対岸の友ヶ島から今の場所に移したのが、西暦317年の3月3日といわれています。その日を記念して『ひな祭り』がおこなわれるようになったという説もあります」。昔むかしからのひな人形の歴史が、現代にも伝わっているんですね。

そろそろ依頼者の疑問について聞いてみたいと思います。この神社では、人形が海を渡る祭事があると聞いたのですが……?「『雛流し』のことですね。雛流しというのは、毎年3月3日にひな人形を舟に乗せて海へ流す神事のことです」。

毎年3月3日におこなわれる「雛流し」にて、ひな人形を舟に乗せる様子
毎年3月3日におこなわれる「雛流し」にて、ひな人形を舟に乗せる様子

なぜ、ひな人形を「海へ流す」のでしょうか?「今まで神様の代わりに娘の成長を見守ってくれたひな人形たちを、神様のもとへお送りするためです」。

「ひな人形たちを海へ流す間に、これまでの感謝や皆さまのさらなる幸せを願いながら、祝詞(のりと)を捧げます」と前田さん。華やかな衣装をまとったひな人形が、キラキラと輝く春の海を進む姿は、まるで生きているようにも見えるのだとか。

神事の当日は、ひな人形を奉納した方や地元の方など、多くの参拝者が訪れます。人形への感謝を込めて手を合わせる人、思い出に涙ぐむ人、見送る人々の思いとともに人形たちは海を渡り、神様のもとへ帰っていくそうです。

舟に乗って海を渡るひな人形たち
舟に乗って海を渡るひな人形たち

「奉納された方々から、『病気が治りました』『無事出産しました』といったお喜びの声が寄せられることもあります」と前田さん。

持ち主の思いを大切に、前田さんは御祈祷を捧げます
持ち主の思いを大切に、前田さんは御祈祷を捧げます

幼いころから見守ってくれたひな人形とお別れするのは名残り惜しいですが、神様のもとでいつも見守ってくれているそうです。今年のひな祭りは、神秘的な「雛流し」の様子を見に、皆さんもぜひ淡嶋神社を訪れてみてはいかがでしょう。

お役目を終えたひな人形たちは、とても優しいお顔でした!
お役目を終えたひな人形たちは、とても優しいお顔でした!
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