街中カバンだらけ!?
兵庫県のカバンストリートとは
2022/10/03

カバンでいっぱいの街があると聞きました。なんとそこでは24時間カバンを売っているとか。どこにあるのでしょうか?調査をお願いします!
24時間と聞いて思い浮かぶのは、コンビニやネットショッピングなどですが、いつでもカバンを売っている街とは……?調べてみると、兵庫県豊岡市に「豊岡カバンストリート」という気になる場所を見つけました!真相を探るべく、さっそく調査へ向かいます。
JR豊岡駅から徒歩約15分。「カバンストリート」と書かれた電柱を発見!さっそく探索してみましょう。

カバンストリートに足を踏み入れると、あっちを見ても、こっちを見てもカバンだらけ!目に映るものが、カバンをモチーフにしたもので溢れています。
カバンを抱えたフォトスポット「顔出さないパネル」、背もたれが持ち手のデザインになっているベンチ、さらにカバン柄の路線バスにも出合えました!あらゆるものがカバンをモチーフにしていて、とってもかわいい。

カバンだらけの街並みにワクワクが止まらない探偵たち。ほかにもないかな?とキョロキョロしていると、「カバンストリートは、はじめてですか?うちの店にも寄ってくださいね」と声をかけてくれたのは、長年、呉服屋さんを営む店主であり、宵田商店街理事長の吉井さんです。
中に入ると「うちは呉服屋ですが、カバンも置いているんですよ」と吉井さん。見てみると、カラフルなカバンがずらり。「おもしろいでしょう?持ち手やカバンの生地、ステッチの色の組み合わせで、365通りの配色パターンがある『バースデーバッグ』を用意しているんです」。


呉服屋さんでもカバンを売っているんですね!この街はなぜこんなにカバンだらけなのですか?「この通りは江戸時代から続く商店街でした。しかし、20年ほど前からシャッター通りになってしまっていたんです」と吉井さん。「商店街の活気を取り戻そうと、豊岡の地場産業であるカバンをいかして何かできないかと考えました。そこで2005年に立ち上げたのが『豊岡カバンストリート』です」。
「カバンを取り扱うお店が増えて少しずつ活気が戻ってきました。さらに、もっと多くの人に訪れてもらいたいと願い、カバンモチーフのオブジェやユニークなスポットを増やしたんです。特に人気なのが、いつでもカバンが買えるスポットですね」と吉井さん。いつでも、ということは24時間ということですか?それを探してたんです!連れて行ってください!
「ぜひ!カバンストリートでも1、2を争う人気スポットなんですよ」。あとをついていくと、自動販売機の前で足を止める吉井さん。ん?のどが渇いたのかな?「はは、よく見てください」。左にあるグリーンの自動販売機をよ~く見てみると、お茶やコーヒーではなく、カバンの絵が描かれた缶が並んでいるではありませんか!

「そう、これはカバン缶です。いつでも好きなときにカバンが買えるんですよ」と吉井さんはにっこり。なるほど!私たちが探していた24時間いつでもカバンが買える場所というのは、「カバンの自動販売機」のことだったんですね!

カバン缶には、長財布と携帯、ハンカチが入るくらいのミニバッグが入っています。16種類ある絵柄は、すべてカバンストリートに携わるクリエイターの方々によるデザインだそう。かわいいものばかりで、どれにするか迷ってしまいます。
24時間いつでもカバンを売っている街の謎は解けましたが、豊岡がカバンの街だとは知らなかった探偵たち。なぜ豊岡市にカバンづくりが根づいたのか、さらなる調査に乗り出します。お話を聞くため向かったのは、豊岡市役所。商工振興係の宇野さんと由利さんが、「豊岡市は、古くから続く日本最大級のカバンの産地なんですよ」と歴史を教えてくれました。

「起源は、奈良時代までさかのぼるという説もあります。かつて豊岡市では、円山川のほとりに自生していた植物『コリヤナギ』を編み上げて、箱や小物入れをつくっていました。江戸時代になると、強靭でしなやかな特性を持つコリヤナギでつくった『柳行李』という衣装ケースが、通気性がよくて丈夫だとたちまち人気に。全国的に知られる特産品になったんですよ」と宇野さん。

カバンの街としての歴史がはじまったのは明治中期。柳行李を3本の革バンドで締め、持ち運べるようにしたものがつくられたそう。「今でいうトランクの原型ですね。それから豊岡の産業は、時代の流れとともに柳行李からカバンづくりへと移行していったんです」。カバンの街は、柳行李という伝統産業から生まれたんですね!

こんなに歴史があるのに、豊岡がカバンの名産地であることを今まで知らなかった探偵たち。関西については詳しいはずなのに……としょんぼりしていると、「そうなんですよ。残念なことに、あまり知られてなくて。その理由は、豊岡でつくられたカバンは、他社のブランドで販売されることが多かったからなんです」と由利さんが教えてくれました。

柳行李は少数精鋭の職人の手によって、今でも豊岡でつくられ続けています。一方で、戦後に塩化ビニルなどの新素材ができたことで、カバン産業にも変化がありました。職人さんたちの技術を新素材にいかし新しいカバンを製造したことで、豊岡のカバン産業は飛躍的に発展したのです。
「職人たちの技術もどんどん向上し、『豊岡でつくられたカバンは使いやすくて丈夫』と高い評価を得るようになっていきました。次第に職人たちから『受注したものをつくるのではなく、私たちがデザインから考案して、直接お客さまにお届けしたい』という声がどんどん高まっていきました。そして、2006年には技術とこだわりを込めた『豊岡鞄』が、地域ブランドとして販売されるようになったんです」。職人さんの高い技術力と熱い思いがブランドの誕生につながったんですね!

豊岡でつくられたカバンが、すべて「豊岡鞄」と名乗れるわけではありません。厳しい審査をクリアした選ばれたものだけが、ロゴマークをつけて販売することができるそうです。お買い上げいただいたカバンを長く使っていただけるよう、万が一破れたり壊れたりしたときは、職人たちが何度でも有償で修理してくれる保証制度つきです。
お客さまからも、「とっても丈夫だった」「長く使えるからコストパフォーマンスがいい」などの声が多いそう。気に入ったカバンをずっと愛用できるのはうれしいですね!

「豊岡鞄」には地域の歴史と伝統、そして職人さんの技と思いが詰まっていました。ずっと愛用できるカバンを探しに、皆さんもぜひ豊岡市へ足を運んでみてください。

