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流行の服を着るマネキンにも、流行があるってホント?

2021/05/10
依頼内容

百貨店などに行くと、いろんな顔やポーズをしたマネキンが並んでいますが、マネキンにも流行があるんでしょうか?探偵さん調査をお願いします。

流行の洋服を着て、ショーウィンドーに立つマネキン。その華やかな姿は、街で目にすると思わず立ち止まってしまいますよね。ところで、皆さんのイメージするマネキンはどんな顔でしょうか?昔からアパレルショップや百貨店などでマネキンを見かけますが、顔や形は変わってきているのでしょうか。もしかすると、洋服と同じようにマネキンにも流行があるのかも……?と気になった探偵たちは、京都にあるマネキンメーカー・吉忠マネキン株式会社へ調査に向かうことにしました。同社は、国内にある百貨店の9割と取引がある老舗のマネキンメーカーです。

マネキンを作るためのアトリエにやってきました!
マネキンを作るためのアトリエにやってきました!

到着した探偵たちを出迎えてくれたのは、マネキン・モデリング部で原型師をしている堀井さん、デザイン部でヘアメイク担当の中原さんと清水さん、事業企画部広報の遊佐さんです。

左から広報の遊佐さん、デザインやヘアメイクを担当する中原さんと清水さん、原型師の堀井さん
左から広報の遊佐さん、デザインやヘアメイクを担当する中原さんと清水さん、原型師の堀井さん

まず、マネキンの原型を制作する原型師の堀井さんに、アトリエの中を案内してもらいました。最初に見せてもらったのは、「エスキース」という小さな模型。マネキン作りは、このエスキースの作成から始まるそうです。「細かい造形を確認しつつ、粘土で何度も何度も直しながらイメージを形にしていきます」と堀井さん。

エスキースと呼ばれるマネキンの1/5サイズの模型
エスキースと呼ばれるマネキンの1/5サイズの模型

エスキースが出来上がったら、次はこれに合わせて実寸大のマネキン原型を作り上げる作業に移ります。アルミ棒にシュロ縄を巻いて骨組みを作り、ここに粘土をつけていき、実寸大の粘土原型を仕上げます。続いて、腕や胴体など体の部位ごとに石膏で型を取り、そこに繊維強化プラスチック(FRP)を流し入れて、固まったらそれぞれのパーツを組み立ててできあがり。最後に、表面をなめらかに磨きあげて完成です。

石膏で作った胴体の型(左)に、FRPを流し入れて取り出します(右)
石膏で作った胴体の型(左)に、FRPを流し入れて取り出します(右)
堀井さんが原型を担当した人気シリーズ「フローラ」。首や手足が長く、なめらかなラインが特徴です
堀井さんが原型を担当した人気シリーズ「フローラ」。首や手足が長く、なめらかなラインが特徴です

原型ができたら、製品となるマネキンを工場で生産していきます。次は塗装とヘアメイク。ここからは、デザイン部の中原さんと清水さんにお話を聞きました。

メイクだけでなくヘアデザインも手掛ける中原さん
メイクだけでなくヘアデザインも手掛ける中原さん

デザイン部では、色むらをなくすための下地塗り、肌色のベース塗装、肌の立体感を出すための細かい陰影付けの順で作業を行います。そして、仕上げのヘアメイク。メイクはアクリル絵の具で描いていくので、ひとつ間違えば塗装からやり直しになるそうです。「一番難しいのは眉ですね。目と違って、くぼみなど何もないところに左右対称に描かないといけませんから。眉が描けるようになったら一人前だと言われています」と、中原さんはスイスイと眉を描きながら教えてくれます。人間のメイクでも、眉は顔の印象を決める一番大事な部分ですが、マネキンも同じなんですね!

写真左:アクリル絵の具を混ぜて必要な色を作ります、写真右:立体的に見せるのがプロの技!
写真左:アクリル絵の具を混ぜて必要な色を作ります、写真右:立体的に見せるのがプロの技!

みなさんのおかげで、マネキンの作り方について少し詳しくなった探偵たち。次は、いよいよマネキンの流行に迫ります。

遊佐さんによると、1980年頃までは、人間の顔や体型、ヘア・メイクを限りなくリアルに再現した「リアルマネキン」が主流だったそうです。「このマネキンは、リアルであるが故に、逆に着こなせる服が限定されてしまうデメリットがありました。また、ヘアやメイクを施すリアルマネキンはその分高額になります。そのため、ハイブランドの衣料品に対しては、その個性を表現できる優れたマネキンだったのですが、ファストファッションの出現で衣料とマネキンのコストが見合わなくなり、需要が少しずつ減っていきました。また、その結果リアルマネキンを使ったスタイリングスキルのある人が得意先からも減少しています」。

ヘア・メイクを施した限りなく人間に近い「リアルマネキン」
ヘア・メイクを施した限りなく人間に近い「リアルマネキン」

マネキンはその後、ファッションの傾向とともに、年齢や見た目の雰囲気を固定せず、いろんなターゲット層に対応できるシンプルなデザインのものが増加していきます。2000年頃からは、顔や髪型から年齢を感じさせないように首から上をなくした「ヘッドレスマネキン」がトレンドになりました。

首から上をなくした、ボディーだけの「ヘッドレスマネキン」
首から上をなくした、ボディーだけの「ヘッドレスマネキン」

しかし、頭部がないと今度はリアリティに欠け、印象に残りにくくなったそうで……。現在は、オブジェのようにつるんとした頭部や身体のラインで、年齢などのイメージが限定されない「抽象マネキン」が主流となっています。

目鼻立ちを全体的にぼやかした「抽象マネキン」
目鼻立ちを全体的にぼやかした「抽象マネキン」

では、これからのマネキンはどのように変わっていくのでしょうか。遊佐さんいわく、「最近では、ロボットの技術を導入した機械仕掛けのマネキンが開発されています。お客さまのいる方向に顔を動かしたり、会話ができるマネキンもあるんですよ」とのこと。マネキンと会話ができるなんて、びっくりです!さらに、遊佐さんはこう続けます。「マネキンは人の形をしていますが、人間をコピーしたものではないんです。人間そのもののような姿だと、やっぱり違和感を感じて不気味に思えてしまうんですよ。マネキンは、美しく親しみやすい造形を目指して作られてきました。このようなマネキン造形の技術は、銀行の受付案内などで使われるサービスロボットにも採用されています。長年培ってきたこの技術をいかせる場がどんどん増えていくと嬉しいですね!」

銀行で受付案内をしている最新マネキン(サービスロボット)
銀行で受付案内をしている最新マネキン(サービスロボット)

おしゃれな服を着て、ショーウインドーを華やかに彩ってきたマネキン。最新技術と組み合わせることで、活躍の場はどんどん広がり、近い将来教育や医療の現場でも導入される日が来るかもしれません。これからマネキンはどのように進化して、私たちのどんな生活シーンに登場するのでしょうか?もしかしたら、いつかショーウインドーでおしゃべりするマネキンが見られるかも!?と、今後が楽しみになった探偵たちでした♪

服だけじゃなくて、マネキンも見てね♪
服だけじゃなくて、マネキンも見てね♪
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