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炎の探偵社

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名物は住職駅長!
僧に相談できちゃう
エキサイトなローカル鉄道

2018/07/17
依頼内容

兵庫県下にある鉄道でお坊さんがいる駅があると聞きましたが、本当でしょうか。

依頼を受けて調べたところ、「サンタ列車」や「かぶと虫列車」などの斬新な企画を打ち出しているユニークな鉄道が兵庫県にあるようです。それは兵庫県小野市の粟生(あお)駅から加西市の北条町駅間を結ぶ北条鉄道。旧国鉄から、昭和60年に市や兵庫県などが出資する第三セクターが引き継いだローカル鉄道です。同社は、駅でもユニークな活動をしているようです。どんなことをしているのか興味津々の探偵たちは、さっそく現場へと向かいました。

1両編成のかわいい車体が到着
1両編成のかわいい車体が到着

ワンマンのディーゼルカーに乗り込み、車窓からのどかな田園風景を眺めながら、「播磨下里(はりましもさと)駅」へと降り立ちます。木造駅舎や駅看板は歴史を感じるレトロな雰囲気たっぷり。郷愁を誘われる情景に思わずうっとり。

書き直しているような跡のある手書きの看板
書き直しているような跡のある手書きの看板

きょろきょろしている探偵たちに、「遠いところからはるばるよくおいでくださいました」と声をかけてくれたのが、畦田(うねだ)さんです。駅長さんでしょうか?

こっちこっち~
こっちこっち~

「どうぞこちらへ」と案内されたのは、待合室の横にある「下里庵(しもさとあん)」です。中に通された6畳ほどの部屋には、小さな仏さまがまつられています!

仏さまの前で畦田さんとマイマイ姉妹をパシャリ
仏さまの前で畦田さんとマイマイ姉妹をパシャリ

このスペースはまるでお寺のよう。「そうなんです。実は私は住職をつとめつつ、駅長でもあるんです」と畦田さん。「小さいときから鉄道が好きで、今でいう鉄オタなんです」。

お話を詳しく聞くと、畦田さんが僧として修行を積んでいたとき、駅舎でお寺をできたらいいなぁという夢を同じ鉄道好きの友人によく話していたそうです。あるとき、その友人から北条鉄道のステーションマスター制度(ボランティア駅長制度)の話を耳にします。「これだ!」とすぐに履歴書を書いて応募しました。面接には袈裟の格好で臨み、見事駅長として採用されることになりました。そのとき、畦田さんは駅に住み込んでお勤めして使いたいと申し出たそうですが、さすがにやめてほしいと断られたというエピソードを、笑いながら話してくれました。

応募時に持参した企画書。手書きでびっしりと書き込まれています
応募時に持参した企画書。手書きでびっしりと書き込まれています

現在畦田さんは、普段は住職として東大阪にある額田寺に勤めて、大阪の太融寺にもお手伝いに行ったりしながら、平日月に2日ほど、下里庵を訪れています。畦田さんが下里庵にいるときは住職兼駅長として、「午前中の勤行(読経)では、鉄道事業の繁栄や交通安全についてもお祈りしています」とのこと。朝のうちに勤行と掃除をすませた後、お昼からは地域の人々の交流や、お悩み相談の時間としています。

畦田さんとお話しするために多くの方が下里庵へ訪れます
畦田さんとお話しするために多くの方が下里庵へ訪れます

悩み相談といっても、最初から心の内をさらけ出すのは難しいでしょう。そこで、畦田さんは茶菓子などを用意して、相談に来た方が話しやすい場にする工夫をしています。つい最近も、終了時間を超えても相談が終わらない方がいて、「その方に車で家まで送るから話聞いて!と言われて、話を聞きながら東大阪まで送っていただいたこともありました(笑)」と畦田さんは話してくれました。また相談だけでなく、先日は「鉄道ファンの集い」というイベントを企画し、下里庵で開催。10名あまりの方が訪れ、鉄道の話で大いに盛り上がりを見せたそうです。

下里庵の看板は畦田さんの自作
下里庵の看板は畦田さんの自作

それにしてもなぜ、こんなユニークな駅が?その真相を確かめるべく、探偵たちは北条鉄道の総務企画部長・高井さんに話を聞いてみることにしました。

北条鉄道の高井さんとマイマイ姉妹
北条鉄道の高井さんとマイマイ姉妹

マイカーの利用などで周辺住民の乗客数が減少の一途をたどり、一時は廃止の危機にも直面した北条鉄道。利用客を少しでも増やしたい、地域活性化につなげたいと平成18年に始めた取り組みのひとつが、ステーションマスター制度でした。「小さいころから鉄道会社に入りたいという夢を持っていた方や、撮り鉄、乗り鉄など、鉄道好きの方が多く集まりました」と高井さんは語ります。加えて北条鉄道の魅力を高めたいと、募集規定に「趣味、特技を生かして活動を行える人」と掲げたのが功を奏し、個性豊かな駅が並ぶ鉄道となりました。2017年秋には兵庫県の名所紹介として、「サザエさん」のオープニングにも登場。市外からの利用客がぐんと増えました。

ボランティア駅長たちには、レトロな制服を支給
ボランティア駅長たちには、レトロな制服を支給

「播磨下里だけでなく、他の駅もおもしろい活動をしている駅長さんがいらっしゃいますよ」と高井さん。法華口駅にはパン工房、長駅にはエキナカ婚活相談所、播磨横田駅には図書館や駅舎ギャラリーが開設されるなど、各駅長の趣味や特技が色濃く反映された駅となっています。

法華口駅のパン工房「モン・ファボリ」
法華口駅のパン工房「モン・ファボリ」

各駅の個性を磨き、ローカル鉄道の魅力向上や地域活性に貢献している北条鉄道。探偵が下里庵を訪れた当日、その場に居合わせたお客さまにお話を聞いたところ、「休み時間などにちょっと立ち寄ったり、世間話をしたり。気持ちよく過ごせる場所です」との言葉が印象的でした。どうやら、今回訪れた播磨下里駅の下里庵しかり、播磨横田駅の図書館しかり、寺院や図書館としての役割のみならず、そこが地元の方々の交流スペースとして愛されているようです。

駅に五色幕が出ていたら、下里庵が開いている印
駅に五色幕が出ていたら、下里庵が開いている印

ユニークな駅というだけでなく、地元の人たちの安らぎの場所にもなっている北条鉄道。牧歌的な風景に誘われて、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

流れていく田園風景に癒されます
流れていく田園風景に癒されます
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