世界の省エネ

10月

アメリカで住みたい街No.1 人と環境にやさしい、省エネコンパクトシティ ポートランド

  • アメリカ

アメリカで住みたい街No.1 人と環境にやさしい、省エネコンパクトシティ ポートランド

高速道路を取り壊してできたウィラメット川沿いの公園は、住民の憩いの場に。

豊かな自然と都市が共存するポートランド(photo:Sam Beebe)

豊かな自然と都市が共存するポートランド(photo:Sam Beebe)

持続可能な成長を実現した全米でいちばん住みたい街

ポートランドは、北米大陸の西海岸に位置するオレゴン州最大の都市。「全米でいちばん住みたい街」「全米で最もサステナブル(持続可能)な都市」「全米で最も環境にやさしい街」「全米で最も省エネ努力をしている都市」など、さまざまなランキングでNo.1を獲得している、今注目の地方都市です。
街の中心を流れるウィラメット川のほとりでジョギングやサイクリングをしたり、トラム(市電)で20分揺られた先に広がる森の中でウォーキングを楽しむ。郊外の農場から届く新鮮なオーガニック野菜がたくさん並ぶファーマーズマーケットで作り手の顔を見ながら買い物をし、市内に50カ所以上あるブルーワリーでお気に入りのクラフトビールを味わう。ポートランドでは、そんな思い思いのスタイルで自然と共存した暮らしを楽しめます。 そんな魅力的な暮らしに惹かれて、ポートランドには年間4~8万人もの人々が移住してきます。米ニュース誌「アトランティック」によれば、ポートランドは起業を目指してやってくる有能な若者が多く、他都市に比べて若者の起業率が高いといいます。 そうした若者たちの貢献も手伝い、市のGDP(国内総生産)成長率は約23%と全米トップクラスの伸びを記録しています。その経済成長やライフスタイルを支えているのが、人や環境にやさしく、省エネな街づくり。ひとりあたりのCO2排出量を20年で約22%※1も削減するなど、環境都市としても世界をリードしています。

コンパクトシティで都市再生。CO2削減・省エネも実現

1960年代までは、車社会を前提としたよくある地方都市のひとつだったポートランド。郊外への住宅開発が進み、市街地は空洞化し、生活環境や治安も悪化していました。
この状況を脱するために都市再生に乗り出したオレゴン州は、1979年に土地利用制度「都市成長境界線」を定めます。これは、市街地の外へ外へと広がっていた開発を抑制するというもの。市内中心からほど近くにある農地や森林を保全すると同時に、都市機能を中心地に集約させ、主要な場所へ20分以内で歩いていける「コンパクトシティ」を目指すこととしました。 そして自動車に比べエネルギー効率のよい公共交通機関を普及させるべく、ライトトレイルやストリートカーといった次世代の市電やバス路線を整備。公共交通機関の利用者を80%(2005年:1990年比)※2も増加させることに成功しました。また、再開発の過程において、1ブロックを約200フィート(約61m)に制限。アメリカの一般的な街と比べて半分程度の大きさにすることで、徒歩での移動もスムーズになりました。 さらに、高速道路を取り壊して公園を開発したり、道路に自転車専用レーンを設けたり、公共交通機関への自転車の持ち込みを許可したり。車に頼らずとも、人々が移動・交流しやすい環境づくりにも力を注ぎました。 こうした施策が功を奏して、自動車の利用はみるみる減少。自動車から排出されるCO2も大幅に削減することができました。

バリアフリーのストリートカーは市内の重要な交通手段(photo:yayoi minowa)

バリアフリーのストリートカーは市内の重要な交通手段(photo:yayoi minowa)

廃材を可能な限り再利用した「エコトラストビル」(photo:Sam Beebe)

廃材を可能な限り再利用した「エコトラストビル」(photo:Sam Beebe)


エコトラストビルのLEEDゴールド認証エンブレム photo:yayoi minowa

エコトラストビルのLEEDゴールド認証エンブレム(photo:yayoi minowa)

環境性能にこだわった高層複合ビルの建設を推進

都市機能を中心部に集約するコンパクトシティ化をすすめるにあたって、ポートランドでは店舗・オフィス・住居が混在した高層複合ビルの建設を推進しました。その際に、市や住民たちは建物の環境性能にこだわり、市がかかわるすべての建物を、なるべく環境負荷を減らし生物多様性にも配慮した「グリーンビルディング」にすることを決定。さらに、環境に配慮し、省エネ性能が高いビルを認定する世界的な基準「LEED認証※3」を導入することとしました。LEED認証では、エネルギーを節約しているか、水資源を大切にしているか、コミュニティーの活性化に貢献しているかなどを厳しく評価。ポートランドでは、商業ビルのみならず住居など全ての建物に適用されています。
その取り組みがよく分かる代表的なエリアが、市内の北西部にある再開発エリア「パールディストリクト」です。1980年代までは荒れた倉庫街だった場所ですが、古い建物を複合型ビルにリニューアルし、約10年間でまったく新しい街に変貌を遂げました。今ではアートギャラリーやレストラン、ブティック、アートスクールなどが建ち並ぶ市内随一の人気エリアです。 同エリアの中でも、「エコトラストビル」はパールディストリクトのシンボルとしてよく知られています。このビルは、「LEED認証」の中でも、難易度の高い格付け「ゴールド」を獲得。建設時にかかる消費エネルギーを可能な限り減らすために、建設時の廃材のほぼすべてを再利用。そのほか、照明の代わりに天窓から入る自然光を効果的に利用したり、植栽によって水の浄化や断熱をするなど、あらゆる部分でエネルギー消費を抑える工夫が取り入れられています。エコトラストビルでのこういった取り組みや成果は広く公開されており、ポートランドの環境・省エネに関するモデル建築として、世界各国からたくさんの人々が視察に訪れています。

魅力的な街づくりを支える住民たちの高い自治意識

ポートランドの街づくりでは、「ネイバーフッド・アソシエーション(以下NA)」と呼ばれる住民組織が重要な役割を担っています。1990年代後半から本格化したパールディストリクトの再開発でも、「パールディストリクト・ネイバーフッド・アソシエーション(以下PDNA)」と呼ばれるNAが組織され、市民と行政の間をつなぐパイプ役として機能しています。
PDNAの会議は毎月開催され、空き家対策やバス停の設置場所、新しくできる複合施設の外壁の色についてなど、きめ細かく協議。その話し合いは一般にも公開されています。また、落書き除去イベントの開催や街で定期的に行われるアートイベントのゴミ処理サポートを行うなど、自分たちの手で街の魅力を高めています。このようなNAが、市内で合計95団体活動しており、「街は自分たちがつくる」という自治意識を広く根付かせています。 いま、世界中から、都市再生の成功事例として注目を浴びるポートランド。都市計画、建物や交通政策などのハード面だけでなく、暮らす人のクリエイティブな意識やローカルを重視する姿勢があってこそ、多くの人を魅了する街が出来上がっているのかもしれません。

*1 米国オレゴン州政府駐日代表部「環境に優しいオレゴン州」より
*2 「グリーンネイバーフッド」吹田良平より
*3 Leadership in Energy & Environmental Designの略。米国グリーンビルディング協会が開発・運営する、環境に配慮した建物に与えられる認証制度。 建築全体の企画・設計から建築施工、運営、メンテナンスにおける省エネルギーや環境負荷を評価することにより、建物の環境性能を客観的に示す。

エコトラストビル屋上で開かれているイベントには、若者からシニア世代まで幅広く参加。photo:Sam Beebe

エコトラストビル屋上で開かれているイベントには、若者からシニア世代まで幅広く参加。(photo:Sam Beebe)

photo:yayoi minowa