依頼内容

ご近所さんにいただいた赤いお米をいつもの白米に入れて炊いてみたら、プチプチしておいしかったんです。わが家でも買おうと詳細を聞くと「あれは古代米のひとつで、最近ハマっているのよ」とのこと。古代米とはなんでしょう?探偵さん、調査してください!

探偵たちもお米が大好き!だけど古代米は食べたことがありません。味は?食感は?白米と何が違うの?気になることがいっぱいです。
調べてみると、奈良県の明日香村に、古代米の栽培・販売に加え、古代米を使ったさまざまな商品を開発している団体があるようです。ここなら、古代米のことをいろいろ教えてもらえるかも!さっそく、明日香村へ向かいます。

一面に田んぼが広がる、自然豊かな明日香村
一面に田んぼが広がる、自然豊かな明日香村

近鉄飛鳥駅に到着しました。タクシーに乗って駅を離れるやいなや、黄金色に色づきはじめた田んぼが何枚も続く、美しい景色が視界いっぱいに広がります。

太陽に照らされ、風に揺れる稲穂を眺めながらタクシーに乗ることおよそ5分、明日香村の農業活性化や景観保全に関するさまざまな活動をおこなっている一般財団法人『明日香村地域振興公社(あすか夢耕社)』に着きました。古代米のこと、いろいろ聞いてみたいと思います!

「ようこそ明日香村へ!古代米のことを聞きに来られたとのことですが、さっそく味見をしてみませんか?古代米の入ったおにぎりを用意しました」。出迎えてくれたのは、あすか夢耕社で地域農業推進指導員を務める西野さん。わぁ、ありがとうございます!ぜひいただきます!

笑顔で迎えてくれた、あすか夢耕社の地域農業推進指導員・西野さん
笑顔で迎えてくれた、あすか夢耕社の地域農業推進指導員・西野さん

用意してくださったのは、ほんのりピンク色と、紫色の2種類のおにぎり。
では、ピンク色のおにぎりからいただきます!かむとプチッとした歯ごたえがあり、玄米のような香ばしさを感じます。続いて紫色のおにぎりを食べてみると、ふっくらモチモチ!どちらもおいしいですね!

「最初に召し上がったピンク色が赤米で、紫色が黒米です。赤米は皆さんがふだん食べている白米と同じうるち米の仲間、黒米はもち米の仲間なんですよ。最近は、モチモチ食感のお米が好まれる傾向にありますので、もっちり炊き上がる黒米が人気ですね」と西野さん。古代米も種類によって食感などが異なるのですね。

古代米の赤色や黒色は、表面(ぬか)の色。精米すると、ほかのお米と同じように白いそうです
古代米の赤色や黒色は、表面(ぬか)の色。精米すると、ほかのお米と同じように白いそうです

「おいしく食べていただけてうれしいです。それでは、古代米について詳しくお話をしましょう」。西野さんは、古代米の歴史について教えてくれました。「『古代米』は、古くからの稲の特色を受け継いでいる、といわれているお米です。お米が日本に入ってきたのは縄文時代後期といわれており、どこから伝わってきたかは、中国や東南アジアなど諸説あります。最初に伝わったのは赤米で、赤飯の起源になったともいわれているんですよ」。

稲穂を手に、古代米の歴史を教えてくれる西野さん
稲穂を手に、古代米の歴史を教えてくれる西野さん

「昔は、土地に合ったさまざまな種類のお米が育てられていました。しかし明治時代以降は、大量生産に向け品種改良が盛んにおこなわれるようになり、コシヒカリやヒノヒカリといった特定の品種に集約されていったといわれています。古代米は品種改良の対象にならなかったようで、今も古代の稲の特徴を残しています」。昔は、もっとたくさんの種類のお米があったんですね!

古代米をふだんの食事に取り入れていけたらと思うのですが、炊き方や食べ方にコツなどはありますか?「古代米はそれだけで食べるより、白米に混ぜるほうがおいしく食べられます。古代米をひと晩水に浸し、白米一合につき大さじ一杯を加えるのがおすすめの配合で、少し混ぜて炊くだけで彩りもよく風味も豊かになります。赤米と黒米をブレンドすると、2つの食感や香りが合わさってまた違ったおいしさが楽しめますよ!」
炊飯器は家庭用のものでOKとのこと。おうちでも気軽に食べられそうです。

自宅でも簡単に食べられる古代米。食卓に彩りを添えます
自宅でも簡単に食べられる古代米。食卓に彩りを添えます

赤米は粘りが少なく喉を通りやすいので、サラサラとかきこみたいお粥にぴったり。シンプルなおにぎりで味わうのもおすすめです。黒米は、和食だけでなくカレーなどにも合うのだそう。明日香村のレストランでは、古代米を満喫できる「古代米カレー」や「古代米御膳」がメニューにあり、これを目当てに訪れる観光客も多いそうです。

このおいしい古代米は、明日香村で昔から栽培されているのでしょうか?
「いえ、実は明日香村で古代米が栽培されはじめたのは最近なんです。20年ほど前に、山の上にある1軒の農家の方が古代米を育てはじめました。食べてみると大変おいしく、お米の栽培が盛んな明日香村から古代米を広めていこうと、町おこしの一環として本格的に栽培・販売に取り組むことにしたのです」。

1軒の農家の方からはじまった古代米の栽培は、現在4軒に広がっているのだそうです。「ご覧のとおり、明日香村には田んぼがたくさんあります。古代米を取り入れることで、放置されてしまう農地の有効活用にもつながっています」。古代米の栽培は、地域の課題解決にも貢献しているのですね。

「また、現代の品種改良されたお米とは違い、古代米は色合いや粒の大きさがまちまちです。ピンセットを使ってひと粒ずつ丁寧に選り分け、できる限り同じ粒の大きさに揃えて皆さんのもとにお届けしているんですよ」。あの小さいお米をひと粒ずつ人の手で!?と探偵たちが驚きの声をあげると「栽培から商品になるまで、かなりの手間ひまをかけています」と西野さん。

丁寧な作業を経て商品化している明日香村の赤米と黒米
丁寧な作業を経て商品化している明日香村の赤米と黒米

さらに最近では、古代米の米粉を使ったスイーツや麺の開発にも力を入れているのだそうです。「米粉にすれば粒の大きさや少々の色の違いは気になりませんし、きれいな色もアクセントになります。米粉を活用することで、古代米の可能性はもっと広がると考えたんです。とはいえ、古代米を米粉にするのは大変でした」。

「古代米は普通の臼や製粉機を使うと、粒が均一な大きさにならず、できあがりの食感も悪くなってしまいます。そこで、玄米を米粉にできる専用の製粉機を導入したことで、やっと納得がいく米粉ができました」。

苦労の末にできあがった黒米の米粉入りロールケーキは、真っ黒な生地がインパクト大!生地はモチモチの食感で、明日香村でとれたみかんのフリーズドライが練りこまれたクリームと相性抜群です。明日香村ならではのおいしさがぎゅっと詰まっています。
赤米の米粉入りクッキーは、サクサクの軽い食感と素朴な味わいが人気なのだそう。今は古代米の米粉を使ったパンケーキミックスを開発中。これからも新たな古代米スイーツ誕生に期待が高まります。

真っ黒な見た目にびっくり!黒米の米粉を使ったロールケーキと、サクサクとした口当たりが人気の赤米クッキー
真っ黒な見た目にびっくり!黒米の米粉を使ったロールケーキと、サクサクとした口当たりが人気の赤米クッキー

「おいしくてヘルシーな古代米を、ぜひたくさんの人に召し上がっていただきたいですね」と西野さん。古代米や古代米スイーツは、明日香村の直売所やオンラインショップで購入できます。

昔から大切にしてきた棚田の風景を守りつつ、地域ならではのおいしいものを届けたいという熱意が、明日香村の古代米を育んできたのですね。皆さんも、古代米をいつもの食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。

6月、田植え直後の棚田の風景。夕日が水面に反射して幻想的です
6月、田植え直後の棚田の風景。夕日が水面に反射して幻想的です
今から家で古代米を食べるよ!
今から家で古代米を食べるよ!
調査完了