枚方市の「ひらかた大菊人形」を楽しみにしていたのですが、もうやっていないと聞きました。菊人形はもう本当に見られないのでしょうか?
菊人形とは、菊の着物をまとった華やかな人形のこと。大阪・枚方市で毎年開催されていたひらかたパークの「ひらかた大菊人形」は、秋の風物詩として多くの人々に親しまれてきました。しかし、菊人形づくりの後継者不足などが影響して、惜しまれつつも2005年を最後に定期開催を終えています。
今回の依頼を受けて探偵たちが調べたところ、どうやらまだ菊人形をつくり続けている人たちがいるようです。さっそく探偵たちは、菊人形づくりをしている枚方市民の活動拠点となる「サプリ村野」へと向かいました。
サプリ村野の作業場に着くと、和気あいあいとした楽しそうな雰囲気で作業をしている人たちがいます。「我々は『ひらかた市民菊人形の会』のメンバーで、ボランティアとしてここで菊人形をつくっています」と声をかけてくれたのが、同会代表の滝口さんと副代表の坂本さんです。
まずは滝口さんから、ひらかた市民菊人形の会について説明してもらいました。この会は、菊人形の制作技術を後世に継承するために活動している市民ボランティア団体。滝口さんも坂本さんも、「ひらかた大菊人形」が終了し菊人形が枚方市からこのままなくなってしまうのは惜しい、何かできることはないかと考えていたところ、市がこの会のメンバーを募集していると知り応募。2006年に10名で活動を開始しました。
菊人形づくりは菊の栽培からはじまり、人形の骨組みづくり、菊を骨組みに取りつける菊づけ、頭部・手足づくりなど、数多くの工程を経て完成します。菊を育てるところからはじまっているとはビックリです。滝口さんによるとメンバーは全員素人で、どの作業もすぐに習得できる簡単なものではなかったそうです。
菊人形づくりで難しい作業の一つが、竹ひごを使って胴体部分の骨組みを担う「胴殻(どうがら)」をつくる工程です。会のメンバーは、「ひらかた大菊人形」で活躍されていた職人さんの指導のもとで、少しずつ腕を磨いてきました。胴殻に菊を取りつけるとその分太くなるため、あらかじめ菊を着せる幅を想定して細めにつくることが大事なのですが、このさじ加減がかなり難しいのだとか。
その後、菊の花を胴殻につけて、菊人形の着物をつくる「菊づけ」の工程に進みます。ここで気をつけないといけないのが、菊の花の選び方です。満開の花では、展示されてお客さんの目に入る頃には、花が枯れてしまいます。菊の花は、摘み取った後も花が開くので、展示されるタイミングで満開になるよう5~6分咲きを選ぶのがコツだそうです。
並行して、人形の頭部づくりを行います。頭部の型に紙粘土をのせてから色づけし、髪の毛をつける作業では人形制作で使われるドールヘア(人工的につくられた、主に人形に使用する髪)を使用。髪の毛の向きを考えながら、手作業で縫いつけていきます。少しずつ縫いつけていくため、非常に時間がかかるのだとか……。
そして、1年がかりでコツコツ作業を続けてきた皆さんの成果を披露する場となるのが、「市民菊人形展」です。これは、枚方市の花である「菊」を広く発信するために、毎年秋に開催されている「ひらかた菊フェスティバル」の催しの一つ。菊の愛好家や市内の子どもたちが丹精込めて育てた菊花と並んで、会が制作した菊人形を展示。今年の「市民菊人形展」は、2019年10月24日から11月11日まで枚方市役所別館北側の菊花展会場や京阪枚方市駅構内などで開催予定です。
会の皆さんにとっていちばんの喜びは、お客さんからの「きれいやな~」という言葉を聞くこと。「菊人形づくりは手間のかかる作業ばかりで大変です。それでも、お客さんの喜びの声を聞くと、この伝統を途絶えさせてはいけないという想いが強くなり、もっと頑張ろうと思います。いつかは菊人形会館を建てて、さらに多くの方々に楽しんでいただけるようになればうれしいですね」と滝口さんは夢を語ります。
かつては遊園地での興行のひとつだった菊人形が、地域の文化として着実に受け継がれていることを実感した探偵たち。枚方の地にしっかりと根を張った菊人形の文化は、今後もその輪を広げていってくれそうです。皆さんも、この秋はぜひ枚方市に足を運んで、満開の菊で彩られた菊人形をお楽しみください。
[NEWS] ひらかたパークでも「菊人形展」を開催!
本記事の制作中に、ひらかたパークでも菊人形展が開催されるという情報を入手しました!100年の伝統を継承しつつ、音や光など新たな表現に挑戦する菊人形展をぜひお楽しみください。
ひらパー×ネイキッド「新・菊人形展-STORY-」
日程:2019年10月12日(土) ~ 12月1日(日) ※休館日:水曜日
会場:ひらかたパーク イベントホールII
詳細はひらかたパークのホームページ にてご確認ください。