「貯金箱といえばブタ」というイメージがあるのは、どうしてなのでしょうか。尼崎に貯金箱の博物館があるそうなので、調査してきてもらえませんか?
いわれてみれば、探偵が子どものころに持っていた貯金箱はブタの形でした(いくら入っていたかはヒミツです)。友人の家にブタの置物があったら、「貯金箱だな」と想像する人も多いのでは?「貯金箱といえばブタ」というイメージは、どこから来るものなのでしょう?おまけに、「貯金箱の博物館」があるなんて初耳です。これはもう、尼崎に行ってみるしかありません!
尼崎にある「世界の貯金箱博物館」には古代から現代まで、世界62ヶ国、なんと13,000点を超える貯金箱が収蔵されています。質・量ともに世界最大級の貯金箱博物館が関西にあったなんて、知らなかった~っ。
館内の全部で13あるコーナーを一つひとつ回ってみると、やっぱりありました!すごい数のブタの貯金箱が!「きっとここなら、ブタの貯金箱の秘密がわかるはず!」と確信する探偵。
さっそく、今回の本題を館長の石山さんにぶつけてみました。「いくつか説はありますが、有力な理由は3つあります」といわれて、「3つも!?」と驚く探偵。
1つめは「繁栄を連想させるから」。ブタは1回の出産で10匹ほどの子ブタを産むことから、中国やヨーロッパでは縁起物として親しまれているそうです。
2つめは「無駄のない有用性」。肉や皮はもちろん、血まで使えるブタは「無駄づかい」の対極にある存在として昔から大事にされてきました。
3つめは「ある男の勘違い」。昔ヨーロッパには、ピッグ(Pygg)と呼ばれる良質な土でつくられた粘土がありました。あるイギリスの職人がピッグ(Pygg)の貯金箱をつくるよう依頼されたところ、間違えてピッグ(Pig)、つまりブタの貯金箱をつくってしまったのです。これが意外にも大評判で、すぐに人気が広まったといいます。
そんなわけで、「貯金箱=ブタ」というのは、どうやら“世界の常識”みたいですね。
館内を回るうちに、だんだん博物館そのものにも興味がわいてきました。せっかくなので、石山さんに館内を案内していただきました。
この博物館を運営しているのは、尼崎信用金庫さんです。貯金箱の収集をはじめたのは1965年のことで、はじめは美術商や骨董商から買いつけていたのが、次第に職員や、お得意先の方々から続々と貯金箱を提供してもらえるようになったそうです。その後さらに、スイスで貯金箱博物館を運営していたコレクターから約4,000点を購入し、一気に増えました。その後もどんどん集まり続け、今では展示している貯金箱よりも地下に保管している貯金箱の方が断然多いほど。
数あるコーナーの中でも人気があるのは、からくり貯金箱コーナーです。しかけで動く、音が出る、しゃべるなど19世紀から現代の楽しいからくり貯金箱に、触れて遊ぶことができます。
ちなみに日本と欧米の貯金箱の大きな違いは、鍵の有無。欧米では、貯金は教会に寄付するための献金という位置づけだったので、頻繁に鍵を開けて中身を教会に持って行けるようにと鍵がつけられていました。一方、日本では貯金は自分のためのものだったので、頻繁に中身を出せないように、出口も鍵もありません。
石山さんは6代目の館長。就任前は、バリバリの営業マンでした。就任当初はあまり貯金箱に興味がなかったそうですが、「テレビが発売されるとテレビの貯金箱が出る。新幹線が開通すると、新幹線の貯金箱が出る。貯金箱には、時代を反映しているおもしろさがあります」とおっしゃるほどに、貯金箱の奥深さの虜になっているそう。休日も骨董品店や雑貨店をめぐり、新しい貯金箱コレクションを探すのがライフワークになっているようです。
ご来館者は、社会見学の小学生から外国人観光客までさまざま。最初はなんとなく入ってくるのに、見終わるころには貯金箱の奥深さに感激して帰っていかれるとのこと。
貯金は苦しいものですが、苦しい貯金をいかに楽しむかに、世界中の人々が知恵を絞ってきました。ここにはその歴史が、ギュッと詰まっています。貯金が苦手な探偵も「かわいいブタの貯金箱(2代目)を調達しよう」と心に決めたのでした。