「CO2で再エネを貯められるドーム」イタリア・サルデーニャ島で誕生
発電量が季節や天候に左右される、太陽光発電と風力発電。条件に恵まれれば電力需要以上に発電する場合があり、逆に供給力が不足すると、停電が発生するおそれがある。
再生可能エネルギーの比率を高める取り組みが進むなか、どのようにして電力の需給バランスを調整すればよいのだろうか。
イタリアのEnergy Domeという企業は2022年6月、サルデーニャ島に、CO2を使って再生可能エネルギーを貯蔵するシステム「CO2 Battery」を建設したと発表した。電力需要が少ないときに余剰電力を貯蔵し、電力が必要となったときに、電力を供給できる仕組みだ。このシステムは、CO2を気体から液体に変化させ、また気体に戻すというプロセスを経ることで、需要に合わせた供給を可能にしている。
まずは、気体のCO2を大きなドームに入れる。そして、余剰電力を使って気体に圧力をかけ、CO2を液体にして貯蔵。電力が必要となったとき、液体を沸騰させて気体にし、その気体がタービンを駆動させて発電する仕組みだ。
気体を液化する際に発生する熱は貯めておき、液体を気化するときに使う。また、最初にドームに入れたCO2を循環させるクローズドループな仕組みで、大気中に放出されることはないという。
CO2 Batteryのエネルギー貯蔵の原理は、空気を液化して貯蔵し必要に応じて気化させる、液化空気エネルギー貯蔵(LAES)と似ている。Energy Domeによると、空気ではなくCO2を使うことのメリットは、液化CO2を常温で貯蔵できることだという。液化空気は-190℃と極めて低温なので、貯蔵する際の仕組みが複雑になる。
また、CO2 Batteryは、リチウムイオン電池のようにレアメタルを使わない点もメリットといえる。本システムをつくる際に使う金属は、産出量の多い鉄(スチール)のみ。武装勢力の影響下で産出されやすいレアメタルと比べて、安定的な供給を確保しやすい。
サルデーニャ島には、太陽光資源や風力資源が豊富に存在しており、段階的に廃止される予定の石炭火力発電所の代わりとなる設備が求められている。CO2 Batteryがうまく稼働することで、自然エネルギーの島になるための大きな一歩を踏み出せたのではないだろうか。
Text by 木村つぐみ
【訂正:2022/10/11】記事公開当時、タイトルを「CO2で再エネを貯められる電池」とご紹介しておりましたが、正しくは「CO2で再エネを貯められるドーム」でした。訂正し、お詫び申し上げます。
この記事は、2022年6月29日に書かれたものです。