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私たちの経済活動が出すCO2約430億トンのうち、約2%が飛行機によるものだ。IDEAS FOR GOODでは、以前にも税制による気候変動対策についてご紹介したが、航空業界の環境負荷は思いのほか大きい。

飛行に用いる代替燃料については、電気や水素などの研究開発も進められているものの、航続距離がまだ短い。長距離飛行は、液体燃料に頼らざるを得ないという現状がある。

そこでアメリカのユナイテッド航空は、新たに開発された持続可能な液体燃料を用いて、世界初の飛行をおこなった。この燃料は従来の化石燃料ではなく、脂肪、食用油、潤滑油などを原料にしてWorld Energy社がつくったもので、「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」と呼ばれる。SAFは、従来のジェット燃料と比較して、ライフサイクルを通した温室効果ガス排出量が約80%少ない。

2021年10月に乗客なしでおこなったテスト飛行でユナイテッド航空は、一つのエンジンに100%SAFを充填。そしてほかのエンジンには従来の燃料を充填した。その結果、SAFは従来の燃料と同様に機能すると実証されたのだ。

2021年12月1日のデモンストレーション飛行では、ボーイング737 MAX 8の1つのエンジン用に500ガロン(約1893リットル)のSAFを充填。100人以上の乗客とともにアメリカのシカゴ・オヘア国際空港を発ち、ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港に到着した。

国際機関ASTMによる基準では現在、このような持続可能な燃料の混合比率は50%以下に制限されている。今後ユナイテッド航空は、これを100%にするように要望を出し、正式に認可されるのを待つことになる。

同社の地球環境問題・サステナビリティ担当のローレン・ライリー氏はFast Companyの取材に対し「現在ユナイテッド航空では、事業全体の温室効果ガス排出量の98%が、飛行機のジェット燃料によるものです。代替燃料に移行すると飛行の二酸化炭素排出量を削減できるため、非常に重要です。」と述べる。

なおASTMに認可されても、まだクリアしなければならない課題がある。現在の生産能力ではSAFは市場の需要の0.1%以下しか供給できないのだ。環境負荷を低減させる実用的な手段にするためには、生産量を増やすことが必要不可欠である。

代替燃料を利用すると税制上、優遇される方向で調整が進んでいるため、このままでは航空会社各社によるSAF争奪レースになる可能性がある。しかし、アメリカには原料が十分にあり、長期的な見通しは明るい。

英国の有名バンドColdplayが「気候ポジティブ」なライブツアーを開催するなか、私たちが大きな環境負荷をかけることなく旅行できるようになる日も、そう遠くないかもしれない。

Text by Yakuta