
甘いフィリングを乗せた伝統的なパン「コラーチェ」
- 今回の旅のパートナー
- 在堺チェコ共和国名誉領事館
スザンカ・ハニバロヴァーさん - 学生時代に旅行で訪れて以来、日本が大好きになったスザンカさん。2005年に留学で念願の再来日を果たし、卒業後はトリリンガルをいかしてイベントの司会、国際会議のコメンテーターなどで活躍。現在は在堺チェコ共和国名誉領事館に所属し、チェコと日本をつなぐ活動をしています。そんなスザンカさんと一緒に、チェコの朝食をドブロウ フチ(召し上がれ)♪

チェコの皆さんは、どんな朝ごはんを食べるのですか?
「コラーチェ」というチェコの伝統的なパンを食べます。ジャムやクリームなどの具材を乗せて焼いたパンで、香ばしくてとってもおいしいんですよ!
乗せる具材のことを「フィリング」と呼んでいるのですが、コラーチェはフィリングがとっても重要。パン生地の真ん中のくぼみにプルーンジャムやオレンジマーマレード、チーズなど、好きなフィリングをたっぷり乗せて、オーブンで20分ほど焼くと、とてもいい香りがしてきます。焼き上がったコラーチェは、ふっくら香ばしい生地にフィリングが溶け込んで、最高においしいんです。
私はおばあちゃんの手づくりコラーチェが大好きで、週末は早起きしてコラーチェづくりを手伝っていました。チェコでは「焼きたてのコラーチェは消化がよくない」といわれていますが、がまんできずに焼きたてをたくさん食べてしまって叱られたことも懐かしい思い出です。話していたらおばあちゃんのコラーチェが食べたくなってきました!

フィリングをたっぷり乗せて焼きます
スザンカさんのお気に入りは、どんなフィリングですか?
私は甘くて少しほろ苦い「ケシの実のフィリング」が一番好きですね!
日本ではなじみがないかもしれませんが、ケシの実はゴマより小さい粒で、あんパンの上に乗っていることが多いです。すりこぎでつぶしたケシの実に、牛乳と砂糖を混ぜた「ケシの実ペースト」は、甘さのなかに香ばしさや苦みが感じられて、私の大好きな味なんです。ケシの実はチェコ料理でよく使う一般的な食材で、コラーチェのほかに、ヨーグルトやおかゆに入れることもあります。私にとってチェコの味といえば、このケシの実のコラーチェです。
ケシの実やチーズのフィリングの上に、アクセントとしてチェコ産のラム酒で漬けたレーズンを乗せたり、小麦粉と砂糖とバターでつくったホロホロした口当たりの「シュトロイゼル」というトッピングをふりかけたりすることもあります。チーズが好きな人には、軽い食感で甘酸っぱい「トバロフチーズ」がおすすめですよ!

チェコでは、「ブルーポピーシード」という黒いケシの実をよく使います
どのフィリングもおいしそうです!いろいろな味を楽しめる朝ごはんですね!
はい。実はコラーチェは朝ごはんだけでなく、お祝いやお祭りのときにも欠かせない料理なんです。私が子どものころは、コラーチェを20~30個ほど盛り合わせて、結婚式の招待状がわりに招待客に届ける習慣がありました。ひとくちサイズのものや、かわいらしい花の形をした、ちょっと特別なコラーチェなんです。式の当日にも、テーブルの上にたくさん並んでいましたね。

ひとくちサイズのかわいいコラーチェ
コラーチェ以外にも、お祝いの日に食べる特別な料理はありますか?
チェコではクリスマスに「鯉のフライ」を食べます。日本ではなじみがないせいか、日本人の友人に話すと驚かれますね。
生きている鯉を買ってきて調理するのですが、重いし動くしで、とっても大変なんです。さらに泥抜きをするために、バスタブで2日間ほど泳がせないといけなくて。鯉にバスタブを占領されているせいで、クリスマス前はシャワーを浴びられないんですよ(笑)。
鯉のフライは、脂っこさがなくカラッとしておいしいのですが、骨が多いんです。毎年クリスマスには、のどに骨が刺さって病院に行く人があとを絶ちません。クリスマスソングのなかにも「おじさんののどに骨が刺さって~♪」という歌詞があるほどです。
ちなみに、チェコには「調理したときに取れる鯉のうろこを財布に入れておくと、1年間お金に困らない」というジンクスがあります。皆さんも機会があれば試してみてくださいね。

鯉のフライはクリスマスディナーの定番です!