知るほど、なるほど、好きになる 朝ごはん世界紀行

No.028ヨルダン

マナギーシュとホブスと豆料理

ヨルダン・ハシェミット王国
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  • ヨルダン・ハシェミット王国ヨルダン・ハシェミット王国
  • 中東に位置する北海道とほぼ同じ面積の国。世界遺産「ペトラ」は約2000年前に遊牧民のナバテア人がつくったとされる古代ヨルダンの大都市。切り立った崖の間にある小道「シーク」を30分ほど進むと、宝物殿「エル・カズネ」が見えてきます。エル・カズネは映画のロケ地として使われたこともあり、多くの観光客が訪れるスポットのひとつです。
豆のコロッケやゴマたっぷりのパンなど、ヨルダンの朝ごはんは皿数が多くボリュームたっぷり

豆のコロッケやゴマたっぷりのパンなど、ヨルダンの朝ごはんは皿数が多くボリュームたっぷり

  • 今回の旅のパートナー
  • アラブ料理専門店「七つの丘~Seven Hills」
    オーナーシェフ 
    アハマッド・フセイン・アリ・バニアタさん
  • ヨルダンで日本人女性と結婚し、2019年に日本へ。大阪市内のレストランでアルバイトをしたのち、2020年に「七つの丘~Seven Hills」を京都府に開店(2022年に大阪市内に移転)、オーナーシェフとして自慢の腕をふるっています。「食を通して自国の文化を紹介したい」と話すアハマッドさんと一緒に、ヨルダンの朝食をファッダル(召し上がれ)♪
    「七つの丘~Seven Hills」のホームページはこちら
アラブ料理専門店「七つの丘~Seven Hills」オーナーシェフ アハマッド・フセイン・アリ・バニアタさん

ヨルダンの皆さんは、朝にどんなものを食べるんですか?

ヨルダンでは毎朝、テーブルいっぱいに並んだ朝ごはんを家族みんなで食べるんです。今日も豆料理を中心に、パンと玉子焼き、サラダ、オリーブの実とたくさん用意しましたよ!今回は、ヨルダンでポピュラーな食材の、ひよこ豆やそら豆を使った料理を中心に紹介しますね。

ひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」は、豆をすりつぶしてハーブと一緒にクミンやコリアンダーなどのスパイスをふりかけ、衣をつけずに油でさっと揚げます。揚げたては意外と軽い食感なんですよ。コロッケはそのまま食べてもおいしいですが、そら豆をやわらかくなるまで煮こんだ「フール」や、ひよこ豆とゴマをすりつぶしてペースト状にした特製ペースト「ホンモス」と一緒に食べることもあります。そら豆の煮込みとひよこ豆のペーストにはそれぞれ異なる数種類のスパイスを使っているので、ほんのり甘いコロッケにつけるとコクが増して違う料理のような味に変化します。味の変化が楽しくて、ついついたくさん食べてしまうんですよ。

ひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」(左)、ニンニクの香りが食欲をそそるそら豆の煮込み「フール」(右上)。ひよこ豆とゴマでつくったペースト「ホンモス」(右下)は、ドーナツ型に盛りつけます

ひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」(左)、ニンニクの香りが食欲をそそるそら豆の煮込み「フール」(右上)。ひよこ豆とゴマでつくったペースト「ホンモス」(右下)は、ドーナツ型に盛りつけます

パンは、ヨルダンでよく食べられている「マナギーシュ」と「ホブス」を用意しました。どちらも、生地を薄く伸ばして焼いたパンで、ゴマを練り込んでいてとても香ばしいんです。マナギーシュは、ピザのようにホワイトチーズをトッピングしたり、タイムなどのハーブをトッピングしたりして食べます。一方ホブスは、ひよこ豆のコロッケをはさんだり、先ほど紹介したそら豆の煮込みやひよこ豆のペーストをたっぷりつけたりして食べるのがおすすめです。ほかにも自分の好きなおかずをはさんで、それぞれの「オリジナルサンド」をつくって食べていますね。

料理ができあがったら、テーブルに出す前にオリーブオイルをたっぷりかけるのをお忘れなく。ヨルダンでは、どの料理にもオリーブオイルをかけるんです。

ヨルダンで定番のホブス(左)とマナギーシュ(右)。ゴマの香ばしさが食欲をそそります

ヨルダンで定番のホブス(左)とマナギーシュ(右)。ゴマの香ばしさが食欲をそそります

オリーブオイルのいい香りにお腹が空いてきました!どの料理にもかけるのなら、たくさん使うんですね!

そうなんです。料理のたびにたくさん使うので、家に大量のストックがないと安心できませんね(笑)。ヨルダンでは、オリーブオイルの出荷時期である11月になると家で使う1年分のオリーブオイルを買いに行くんです。ほかにも、チーズなどが同じお店で売っているので、この時期にまとめ買いすることが多いですよ。4人家族だと、オリーブオイルは40リットル、チーズは20kgくらい買いますね。

40リットルを一度に買う、というと日本の方には驚かれることが多いのですが、ヨルダンではどの家庭でも1年分を一度に買うのが当たり前なんですよ。私たち家族の行きつけのお店には、苦味を感じるものやフルーティーなものなど、何十種類ものオリーブオイルが並んでいます。気になるオリーブオイルを家族で味見して、その年の購入品を決めています。年ごとに味が違うので、今年の収穫分はどんな味なのか考えるとワクワクしますし、オリーブオイルを買うのは年間を通して楽しみな行事のひとつなんです!買ったばかりの新鮮なオリーブオイルは、その日からすぐに煮込み料理や揚げ物に使いますね。

ヨルダンの家庭に欠かせないオリーブオイル

ヨルダンの家庭に欠かせないオリーブオイル

ヨルダンの皆さんにとって、オリーブオイルは欠かせないものなんですね。

そうなんです。どの家庭でも、自分たちの好みに合ったオリーブオイルを吟味して選んでいますね。オリーブオイルだけではなく、食材にはすごくこだわりますし、料理の下ごしらえも時間をかけるんです。

たとえば、ひよこ豆は24時間水につけておいて、4時間かけてじっくり煮込みます。それからコロッケにしたり、ペーストにしたりするので、下ごしらえをしてから食卓に上がるまで何時間も料理していることになりますね。そんなに時間をかけてつくった料理でも、すぐに平らげてしまいます。ヨルダンでは、食事中は食べることに集中して静かに食べるので食事時間が短いんです。そして、食後にソファーでミント入りの紅茶を飲みながら家族団らんを楽しむんですよ。

ヨルダンでは時間をかけて料理をするのが当たり前でしたから、日本に来た当初は「時短料理」という考え方を知ってとても驚きました。今ではそういった考え方にも慣れましたが、たまにはゆっくり時間をかけて料理をするのもいいと思います。日本の皆さんもぜひ、料理や食事の時間をゆっくり過ごしてみてください。

オリーブオイルをたっぷりとかけた料理を食べたあとには、ミントを入れた紅茶でさっぱり!

オリーブオイルをたっぷりとかけた料理を食べたあとには、ミントを入れた紅茶でさっぱり!

  • ヨルダンでは、大皿料理をテーブルについた全員で分けて食べます。誰かの取り皿が空になっていると、「足りなかったのかな?」と思っておかわりをすすめるのが食卓のマナーです。それではマアッサラーマ(さようなら)!
アラブ料理専門店「七つの丘~Seven Hills」オーナーシェフ アハマッド・フセイン・アリ・バニアタさん

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