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4月
公共の電気自動車ステーションで充電中の車 mariordo59(flickr)
個性豊かな文化が息づく南カリフォルニア ヴェニスビーチ Maju Rezende(flickr)
日ざしあふれる恵まれた天候と、米国最大の人口を抱える西海岸のカリフォルニア州。ハリウッドやシリコンバレーには米国を代表するような企業が集中し、文化的に見ても、ヒッピー文化やロック音楽など「カウンター・カルチャー」の波を1970年代から巻き起こしたリベラルな土地柄でも有名です。
このカリフォルニア州は、実は環境面でも世界初の排ガス規制法を施行するなど、一歩進んだ政策と研究により以前から注目されています。エネルギー政策面では、電力事業者に対し、年間電力販売の25%(2014~16年)、33%(2020年)を再生可能エネルギー由来とすることを義務化する法律「RPS(Renewable Portfolio Standard)」を実施。その結果、風力と地熱発電に加え、太陽光発電と太陽熱発電への投資が急拡大しています。
こういった政策により、同州の総発電量における再生可能エネルギーの割合は19.6%と欧州の環境先進国に並ぶほどの水準となりました。州政府の政策は企業や大学でのグリーンテクノロジーの研究を後押しし、それがさらなる投資マネーを呼び込み、経済活性化にも繋がっています。
(図1) 時間帯によって、従来型発電所への電力需要は大幅に増える
前述の通り、カリフォルニア州では、RPS制度で2020年までに再生可能エネルギー比率を33%にすることを電力会社に義務付けました。これに伴い、発電量が上下しやすい太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が加速し、電力網への影響が懸念されています。
太陽光発電では日照量の多い昼間の発電量が最も多いため、日中は従来型発電所への需要は少なくすみます。一方で、夕方以降の電力需要のピーク時には太陽光発電は使えません。そのため、短時間かつ急速に火力発電などの電力供給を増やす必要があります。
この「時間帯による従来型発電所への需要の差(図1)」が大きくなると、電力供給のコントロールが難しくなり安定供給に影響をもたらす可能性があります。この状況は太陽光発電の導入拡大により年々深刻化すると予測されており、それを示すグラフの形がアヒルに似ていることから「ダックカーブ」と呼ばれています(図2)。そして、独立系統運用機関の「California ISO」では、2013年時点では6,000MW程度だった差が、2020年には1万4,000MWにまで拡大すると試算しています。
(図2)年々拡大する、時間帯による従来型発電所への需要の差(2013~2020年)
スクールバスもハイブリッド型や電気自動車が導入されている
(photo: Erik Valencia Motiv Power Systems株式会社)
カリフォルニア州では、太陽光発電で発電した電気を貯めて必要な時に使うために、企業にむけて「太陽光発電×蓄電池」の活用を後押しする政策を展開しています。
「太陽光発電×蓄電池」の活用は、企業だけでなく学校にも広がりつつあります。ある地区では、小学校や大学の敷地内に太陽光発電と大型の蓄電池を設置し、日中に太陽光発電で蓄電をしておいて、その蓄電池からスクールバスや電気自動車に充電するというシステムを導入しました。太陽光発電による発電ができない場合も、電気料金の安い夜間に蓄電しておいた電力を利用して、電気代の削減につなげています。
同州では電気自動車の普及が加速しており、州内での電気自動車販売台数は、全米での総販売台数の約4割を占めるほどまで急拡大しています。電気自動車にはCO2排出量が少ないという利点がありますが、一方でたくさんの電力が必要となります。そのため、家庭用の電気自動車と「太陽光発電×蓄電池」のシステムを結びつける動きが拡大しています。家庭の太陽光発電から蓄電し、それを電気自動車で利用することで、太陽光発電で蓄電した電気をスムーズに無駄にすることなく利用できます。上記のシステムが無い場合、日中使われて、夕方に電気自動車の充電が集中すると、「時間帯による従来型発電所への需要の差」の拡大につながってしまいます。そこで、夜中の12時から電力を安くする時間帯別料金を設定したところ、電気自動車の充電を深夜におこなう利用者が増え、電力需要の平準化に寄与したという成功事例が報告されています。
ツインピークスからみたサンフランシスコ Nicolas Raymond(flickr)
このように、カリフォルニア州では再生可能エネルギーの導入が進む中で、電力の需要と供給のギャップという新たな問題が発生し、それを解決する方法として「太陽光発電×蓄電池」や時間帯別料金制度の活用が推進されています。「太陽光発電×蓄電池」のシステムへの初期投資は、電気代の削減効果により回収しようと目論むケースもあり、加えて、停電時などの非常時用電源として活用できるという利点も支持されています。また、電気自動車の充電に必要な電力を、時間帯別料金が設定された夜間に充電してもらうことで、電力需給の平準化を進めています。
需要と供給のギャップを埋めながら「太陽光発電×蓄電池」のシステムに電気自動車を組み合わせることで、エネルギーの自家消費が進み、そのメリットは最大限に高まることをカリフォルニア州では証明しつつあります。
すでに米国ハワイ州でも同様の取り組みが始まっています。今後は、再生可能エネルギーの普及を蓄電池・電気自動車といったスマートテクノロジーが支えるという構図が、全米に広がっていきそうです。
Word:Yayoi Minowa