南禅寺にあるレンガづくりの水路橋。
流れる水はどこへ向かう?
2025/04/07

先日、京都の南禅寺(なんぜんじ)を訪れた際、境内に歴史を感じる古いレンガづくりの水路橋(すいろきょう)を見つけました。「お寺の中に洋風の建造物があるなんておもしろい」と思い見学してみると、橋の上を水が流れていて、今も使われているようです。この水路橋の水はどこから来て、どこへ流れていくのでしょうか?探偵さん、ぜひ調査してください。
水路橋のある南禅寺へ
古い水路橋が今も現役で使われているなんて興味深いですね。レンガづくりということですが、どんな建造物なのでしょうか。ぜひ調査してみましょう!
調べてみると、南禅寺の水路橋は「水路閣(すいろかく)」という名前で、京都市上下水道局が管理をしているようです。詳しいお話を聞くために、上下水道局の方と現地で待ち合わせをしました。
京都市営地下鉄東西線の蹴上(けあげ)駅から徒歩10分。南禅寺の入口である中門に到着しました。ここから待ち合わせ場所である水路閣を目指し、境内を歩きます。

境内の奥にたたずむ洋風の水路橋
境内を東に向かって数分進んでいくと、木立のある庭園の奥に洋風の橋が!
橋の前までいくと、京都市上下水道局の久岡さんが待ってくれていました。


こんにちは!これが水路閣……。お話に聞いていたとおり、歴史を感じる建造物ですね。
「水路閣の建設がはじまったのは1887年です。1年かけて建設され、1888年8月に完成しました」。

1888年に完成ということは……135年以上前からあるんですね。今も実際に水が流れていると聞きました。
「はい、今でも使われていますよ。自由に見学できますので、実際に水が流れている様子を見に行きましょう!水路閣のわきにある石段を上がれば、上から見ることができますよ」。
久岡さんの案内で、石段を1分ほどのぼっていくと水路閣の上部に到着しました。

穏やかな小川のようですね。水の流れる音が心地よいです。今回は、水路閣の水がどこから来て、どこに流れているのかを調べに来ました。まずはどこから流れて来ているのか教えてください!
「この水は琵琶湖から来ています。水路閣は琵琶湖から京都へ水を運ぶ水路の一部なんですよ」。
なるほど。琵琶湖の水が流れて来ているんですね。では、水路閣の水はどこに流れていくのでしょうか?
「『哲学の道』の横の水路を流れていきますよ。哲学の道は、熊野若王子(くまのにゃくおうじ)神社から銀閣寺付近に続く人気の散歩道です」。


哲学の道を抜けたあと、水はどこへ向かうのでしょうか?
「最終的に高野川へ放流されていますよ。高野川は鴨川と合流しています」。
なるほど。水路閣は琵琶湖の水を京都に運ぶための水路の一部としてつくられており、その水は琵琶湖から高野川へと流れているんですね!
大雨が降っても水路閣から水はあふれない?
水路閣はけっこう深いですね。どれくらいの深さなのでしょうか?
「約1.5mありますよ」。
大雨が降った際に水があふれることもあるのでしょうか?
「記録上1度もあふれたことはありません。元々がとても深くつくられていますからね。また、上流には水路の水量を調整する施設があり、大雨の際も水量が増え過ぎないようにしているんですよ」。

水路閣ができた理由とは!?
境内の中に水路橋があるのをはじめて見たのですが、地下につくって目立ないようにする、というお話にはならなかったのでしょうか?
「そうですね。南禅寺やその周辺には、亀山天皇分骨所など天皇家の御陵があるんです。御陵の下を掘ることは不敬だと考えられたため、水路橋をつくることにしたんですよ」。
なるほど!それで地下の水路ではなく、水路橋にしたのですね。ところで、お寺の中に洋風な雰囲気のあるレンガで橋をつくったというのがとてもユニークだと感じました。どうしてレンガを使ったのでしょう?
「そうですね。実際のところはわかっていませんが、建造された明治期においてレンガが文明開花の象徴だったからではないかと思います。当時は『お寺にヨーロッパ風の建造物はふさわしくない』との反対意見も一部あったそうですが、完成後は多くの方に愛され、今では観光名所になっています」。

散歩コースとしても人気の水路閣
水路閣全体をあらためて眺めてみると、すごく迫力がありますね!どれくらいの大きさなんですか?
「全長は約93.2mで高さは約9mです。幅は約4mで、水路幅も約2.4mありますよ」。
そんなに大きい建造物が、お寺の中に自然となじんでいるんですね!異国情緒あふれる「洋」と「和」の調和が、とても素敵です。
「レンガづくりのアーチ型の橋脚が古代ローマの建造物みたいで、写真映えする、と撮影される方も多いです。水路に沿って歩くこともできるので、人気の散歩コースにもなっていますよ」。

水路を流れる水の音に耳を傾けながら歩くと気持ちがよさそうです。水路閣散歩におすすめの季節ってありますか?
「四季折々の魅力がありますが、私は秋の紅葉シーズンが好きですね。水路閣を流れる水の上を、紅葉がゆらゆらとただよう様子は情緒がありますよ!」。
水路閣に浮かぶ紅葉を見てみたいです。秋にまた訪れてみます!
琵琶湖から哲学の道の横を通り、高野川へと水を運ぶ水路の一部、水路閣。お近くを通られた際は、お寺の奥にたたずむレトロな橋に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

- ※この記事は2025年3月1日時点の情報をもとに掲載しています。
