受け継がれ進化する味!
「ミックスジュース」発祥のお店に潜入
2019/08/19
大阪にミックスジュース発祥の店があると聞きました。探偵さん調べてきてください。
いろいろな種類のフルーツと牛乳を混ぜてつくる「ミックスジュース」。関西では喫茶店・ジューススタンドやご家庭でも広く親しまれていますが、ちょっとレトロで懐かしい響きのある飲み物ですね。そんなミックスジュース発祥のお店とはどんなところなのか……と調べてみたところ、どうやら大阪・新世界にある老舗喫茶店「千成屋珈琲」のことのようです。探偵たちは、さっそく千成屋珈琲さんに向かいました。
新世界のジャンジャン横丁にある千成屋珈琲は、創業から70年を超える老舗です。レトロな雰囲気に見とれていると、4代目店主の白附(しらつき)さんが声をかけてくれました。白附さんはお店の近くで生まれ、子どものころから千成屋珈琲のミックスジュースをよく飲みに来ていたそうです。
お店に入ると、白附さんが「話をする前に自慢の味を飲んでみてください」と「ミックスジュース」をごちそうしてくれました。グラスの真ん中でストローが倒れずに立つくらい濃厚なのに、あっさりした味わいが口に広がります。
そもそもミックスジュースはどうやって誕生したのか、白附さんに教えてもらいました。1948年創業の千成屋珈琲は、もともとは果物屋さんでした。当時はお中元などの贈り物として人気のあった果物ですが、完熟して傷んでしまうと売れ残ることもしばしば。お店を始めて数年経ったころに、「完熟したフルーツが一番おいしいのだけど、売れなくてもったいない」と考えた初代店主が、熟れたフルーツと牛乳をミキサーにかけてジュースにすることを思いつきました。なにわの商人の「もったいない精神」が、このジュースを生み出したわけですね。店頭で売り出すと瞬く間に人気商品となったそうです。
ミックスジュース発祥の店として、伝統の味を代々受け継いできた千成屋珈琲ですが、実は一度休業しています。休業する前は、当時3代目店主である恒川さんがいつも笑顔でお店に立ち、地元の人にも親しまれていました。しかし、2016年に恒川さんが病気になってしまい、後継ぎを見つけることができず泣く泣くお店は休業に。それを残念に思った、新世界と千成屋珈琲のミックスジュースをこよなく愛する白附さんが「この味を残したい。ミックスジュースを大阪名物にして新世界を盛りあげたい。だから、この店を継がせてほしい!」と手を挙げました。はじめは断られましたが、思い出のミックスジュースを復活させたいという白附さんの熱意が通じて、お店を継がせてもらうことになったのです。そして、2017年5月に千成屋珈琲は再オープンしました。
4代目店主となった白附さんは、昔の味を受け継ぐだけでなく、舌の肥えた現代人に合わせて味を変える必要があると考えました。パティシエと約1ヶ月間試行錯誤した結果、濃厚な飲み心地はキープしたまま、果物本来の甘さを引き出した新しいレシピを開発。昔なじみのお客さんからも甘さがすっきりしておいしいと好評で、先代からも「私が店をしていたときよりも、もっとおいしくなっています」と太鼓判を押されました。懐かしいメニューに加え、インスタ映えするフルーツスムージーなどのメニューも新たに追加。休業前よりも店は活気づいています。
白附さんは本店の再オープンと同時に、お店の隣にある空き店舗を改装し、ミックスジュースがテイクアウトできる「千成屋珈琲スタンド」をオープンさせました。本店が満席のとき、並ぶ時間のない観光客にとっては、テイクアウトの方がすぐに購入できると大好評です。
また、千成屋珈琲のミックスジュースは、瓶詰を阪急オアシスで販売しています。この商品は、千成屋珈琲のミックスジュースの大ファンである阪急オアシスのバイヤーさんが、「この味を世に広めたい!」との熱い思いで白附さんを説得し、実現したものなのだとか。
なにわの商人の「もったいない精神」から生まれたミックスジュース。最近、台湾・中国などのメディアでも紹介されており、海外からのお客さんも、このジュースを目当てにお店に来てくれるそうです。最後に白附さんは、「すでに大阪の名物として認知され始めていて、多くの海外観光客の方々も訪れます。2025年の大阪・関西万博には、ミックスジュースがたこ焼き・お好み焼き・串カツと並ぶ大阪名物になることを目指しています!」と夢を語ってくれました。新世界に訪れた際は千成屋珈琲で、さらにおいしくなったミックスジュースをぜひ一度味わってみませんか。