京都の銭湯で発見!
人間洗濯器って何?
2017/04/03

人間洗濯器なるものが置いてある銭湯が、京都にあると聞きました。人間洗濯器ってなんですか?
銭湯と言えば、大きな浴槽があり、サウナ、水風呂などもある庶民のいこいの場です。今回は、人間洗濯器という不思議なものについての調査依頼ですが、何、それ?メチャクチャ気になります。洗濯機みたいに中に入った人が回転するの?洗剤が入っていて自動できれいになるとか?はたまた誰かが洗ってくれるものだったりして……。謎は深まります。
調べを進めていくと、京都の銭湯・宝湯さんにあるという情報をキャッチしたので、たずねてみました。
京阪・藤森駅から歩いて15分。赤い温泉マークのついたレトロな看板が目印です。看板には確かに「人間洗濯器」の文字が。

看板から目を移すと、そこには古代ローマを思わせる、白い柱とアーチ型の屋根に特徴のあるおしゃれな洋風の建物があります!うーん、看板とギャップがあるなー。

中に入ると、天井が高く、広くてレトロな脱衣所があります。番台には、女性の番頭さんがいらっしゃいました。この方、村田さんは宝湯の3代目番頭。宝湯の創業は昭和6年で、村田さんはこの家に嫁いだ19歳のときから、番台に立っているそうです。

宝湯は途中で拡張した浴場以外は、創業当時のままだとか。「あのころはお風呂のある家庭が少なくて、銭湯に行くのが当たり前。家族で来るので、ベビーベッドを10台以上置いても足りないほど、繁盛していました」と懐かしそうに振り返ってくれました。

村田さんにさっそく「人間洗濯器って何ですか?」と聞いてみました。すると、村田さんのご主人にあたる2代目が新しいもの好きで、昭和56年に釜の施工業者に紹介されるやいなや、すぐに導入したと教えてくれました。つまり、36年前のものなんですね。
で、その実態は、といろいろ聞くよりも目の前にあるのだから、入ってみたほうが早い!と、浴場に向かいました。浴場はカランが浴場の中央にも設置してある、最近はあまり見ないつくりの洗い場になっていて、浴槽は7つもある!

7つの浴槽のうちで丸い形をしたものがあり、大人2人が入るぐらいのサイズです。よく見ると、お湯がゆるやかに回転していて、ぷくぷくと気泡が出ています。もしかして、これが人間洗濯器?見た目には、洗剤が入っていたりブラシがついている様子はありません。危険じゃなさそうだけど、ちょっと怖い……と探偵が尻込みしていると、マイマイ姉妹が船に見立てた桶に乗り、人間洗濯器に勢いよく飛び込みました!果たしてマイマイ姉妹の運命や、いかに!?
おそるおそる湯船をのぞくと、二人はとっても楽しそう。桶がくるくると回転して、まるでメリーゴーランドに乗っているようです。

安心した探偵もお湯につかってみると、やさしい水流と細かい気泡が肌にあたって、とても気持ちいい!目を閉じると、流れる温水プールを思わせる心地よさです。
これがどうして人間洗濯器なんでしょう?村田さんに聞いてみると、ぐるぐる回る洗濯機を上からのぞいたところに似ているから、この名がつけられたのだとか。たしかに人間がぐるぐる回ってしまったら、気持ちよくなるどころか具合が悪くなりそう!実際にはお湯の中でダラーンと脱力していると、水流と気泡で体全体がマッサージされて、コリがほぐれると人気です。

人間洗濯器を導入したばかりのころは、関西に何軒も人間洗濯器を備えた銭湯があったようですが、最近廃業が続いていて、今や京都にはここ1軒しかないとのこと。
宝湯にはほかにも超音波、薬湯、熱気風呂、イオン風呂など、変わり風呂がいくつかあります。また、宝湯ではすべてのお風呂に、伏見の井戸水を使っているんです。つまり、酒造りに使われる仕込み水と同じ水をお風呂に使っています!中でも特に人気なのが、水風呂。年中冷たい温度に保たれた井戸水を使っている水風呂は、気温によって温度が変わる水道水を使った水風呂と比べても、特別に冷たく感じられて気持ちがいいと人気があるそうです(宝湯の浴場で使用されている水は、すべて塩素消毒されています)。

浴場内の装飾も、時代を感じさせるデザインが独特の魅力になっています。浴槽にはタイルに描かれたコイがキュートに泳いでいます。鏡や壁に貼られた昔のままの看板なども、味わい深いものがあります。

家庭用のお風呂が普及した現在では、昔ほどたくさんのお客さんはこなくなりました。しかし、今でも毎日通ってくれる常連さんや、人間洗濯器を求めてやって来る新たなお客さんのため、村田さんは毎日欠かさず番台に立っています。
人間洗濯器の謎が解決しただけでなく、宝湯さんは昭和の時代にタイムスリップした気分を味わえるところだとわかりました。また、脱衣所をはだしでウロウロする探偵を「足が冷えるからスリッパ使ってね」と気遣ってくれる、村田さんのやさしさにも心が温まりました。これからも、人間洗濯器と村田さんの人柄が、多くの人の心と体を温めてくれるのでしょう。

